108羽
疾太に一体何が起きたのか探るために、家へと到着してインターホンを鳴らすも、召使いが出なかった。電話をするも音信不通となり、不法侵入したら流石にまずいよな。家の周辺をみるも何か証拠が落ちてるわけでもなさそうだった。
となれば別の場所で連れ去られた可能性が高いかも知れないと門の前に戻って、玲とどうすると話していたら門が開いたのだ。玲とアイコンタクトをとって家の中へと入ってみる。しかし誰一人おらず、警戒を抱きながら一つ一つ部屋を開けていくと、玲に呼ばれ玲がいる部屋へと入ってみた。
厨房の床にはなんと地下に繋がる階段が存在し、こんなところに地下室があるのかとスマホの明かりをつけ中へと入ってみる。足音を立てないように階段を降りてみると、どうなってんだと思わず足を止めちまった。それはいろんな点滴をつけ眠っている女性がいる。
なにがどうなっているんだと混乱していたら、いつの間にかいた疾太の母親がいた。
「疾太の母さん。なぜここに来させるよう仕向けたんですか?」
「見ての通りよ。長女を救うために、夫は今まで動いていたの。ただね、長女はもう助からない。そのために、夕哉くん、夫を止めてほしいの」
「まさか、春陽と全く一緒の血液ってことですか?」
その通りよと疾太の母親に言われてしまい、黒幕はやっぱり疾太の父親。だとするとレインアイスの目的は、春陽の血が必要なために今まで生かしていたってことになる。
玲が気になっていたことがあったそうで、疾太の母親に聞いた。
「なぜ幼いころから奪わなかったんですか?」
「子供だと多く採取はできない。そのために春陽ちゃんが大人になるまで生かしていた。それを先ほど、息子が気づいてしまって、息子も島へと連れて行かれたわ」
ただ何かがおかしい。疾太の姉がここにいるのならば、春陽はなぜ島へと連れて行かれたのか。深く考えているとまずいわと疾太の母親が上を見ていて足音が聞こえる。
「夕哉くん、玲くん。とにかく出て来ちゃだめよ。そうね、ベッドの下にでも隠れてなさい」
二人で隠れ切れるかと思ったら、自分は平気だからと玲に合図をもらい遠慮なくベッドの下へと隠れた。玲はおそらく気配を消し、いつも通りに乗り越えられるだろう。
降りて来る足音が聞こえ、一緒に来てくださいと疾太の母親に言っている声が聞こえる。わかりましたと疾太の母親は一緒に出ていき、足音が遠ざかっていく。
足音が完全に聞こえなくなったことで、玲がもう平気だよと教えてくれたからベッドから出た。
「Noveの連中だった?」
「いや、警察官で連行されたよ。おそらく娘さんもここではなくちゃんとした病院に搬送される。とにかく疾太も島へと連れて行かれたのなら、戻るしかなさそうだな」
本当にこれでいいのかは不明だが、俺と玲は一度地下室を後にする。
厨房に戻ると刑事が何人かいるも、そこにはお袋がいて話はつけてくれているようだったから、お袋と一緒に疾太の家を出た。
「お袋は以前から知ってたの?」
「えぇ。母親同士で相談をよく持ちかけられていたわ。娘さんがなぜあのようになっているかをね。疾太くんは姉の存在を知らずに育てられたようなもの」
確かに疾太と話す時は姉のことは一度も聞いたことがなかったな。知らずに育った疾太は姉の存在を知ってしまったことで、俺に助けを求めに来たってことになる。
とにかく夜一の家へと戻って報告するしかなさそうだなと止めていた車に乗ろうとした時だ。そこに千夏が現れ、服も乱れていた。
「どうかしたか?」
「疾太がっ疾太がっ」
そこで千夏が泣き崩れてしまいお袋が大丈夫よと優しく包む。おそらく疾太が連れ去られたのを目撃したとかなんだろう。ただ、千夏には鯨波流史郎の殺害容疑で逮捕となる。
今まで千夏の居場所は千花は吐かなかったと透から聞いていた。おそらくだがどこかに再び監禁され逃げて来たのだろうと感じる。
「母さん、千夏が落ち着いたら署へ連れてってやれ」
もちろん、若とお袋に言われ、なんか恥ずいと思いつつも俺は後部座席に座り、玲が運転をして、夜一の家へと向かった。
◇
伊宮の寝顔を見ながら娘と交わした言葉を思い出しておった。娘は獅子屋に助けてもらい、無事に帰って来たかと思えば、抱いている赤子に驚いたのう。
その赤子が輝じゃ。妻と同じまれな血を持つことで、一時期はNoveの連中に捕まってしまったが、潜入させていた獅子屋が無事にわしの娘を保護してくれた。じゃが何日かして娘は輝を抱きながら、輝に言っておったな。
「輝、ごめんね。でも大丈夫よ。輝はなんとしてでも守ってあげる。たくさん笑って、たくさん泣いて、あなたのやりたいことをやりなさいね」
その言葉を何度も聴くたびに、娘は再びNoveのもとへいくと確信を持ち、輝がいないところで何度も話よった。されど娘はあることを打ち明けられる。
「警察は信じられない。お父さんは正義として働いているけれど、警察内部に連中がいる。いくら探そうとも無理なの。全て証拠がいつも消されてしまう」
「わしがなんとか探りを入れる。せめてもう少しだけ輝のそばに」
「これ以上、ここにいたらお父さんと輝を殺すと脅されているの。お願い、お父さんと輝のところにちゃんと帰ってくるから。だから輝のことをお願い」
わしは娘を止めることはできなかった。朝目を覚ますと置き手紙があり、ごめんなさいという一言が置かれ、わしは一人で輝を育てながら警視総監に昇りつめ、内密に捜査をしていたのじゃ。
そして娘を助けたという獅子屋を隣につかせ不審な動きがないかと見張っておった。しかし獅子屋は不審な動きは見せず、二人の子どもを持ったが、陽、皆からは黎明と呼んでいる子は鈴鳩児童保護施設へと送った時から疑惑が浮かんだのじゃ。
なぜ大切な息子を児童保護施設に預けたのか。そこではっきりわかったことじゃが、黎明も同じくまれな血であったこと。それを悟られぬよう、データは全て削除をし、里親に引き取られ幸せに暮らしてほしいという願いじゃった。じゃが悲劇が起こり息子はヤクザの一員となって動いていた姿に腹が立ったのじゃろう。
しかも朝峰の長女、陽空ちゃんを誤って撃ってしまったとしても、その報告がこちらに入った時の瞳は今でも忘れはせん。殺意の目をしておって、獅子屋が犯罪に手を染めぬよう努力はしておった。
しかしこの通り、獅子屋は犯罪に手を染め動いていたことが悔やみ切れない。次から次へと命を落とそうとしている姿に、わしはもう見ていられん。
早く獅子屋とそしてNoveを止めなければ、春陽ちゃんを救うことはできん。妻のようになると思い、早急にキャットアイランドがあった島へと行くよう、輝に伝えることにした。
◇
春陽はおとなしく部屋にいると思っていたのが大きな間違いだった。春陽は小窓から飛び降りようとしていたところ部下たちが発見をし、春陽を捉え、今目の前で倒れている。
お前たちは下がってろと指示をし、しゃがんで春陽のあごを掴んだ。春陽は僕を睨んでいて、せっかく用意した服が汚れている。
「また虎次にしつけてもらったほうがいい?失望させないでもらえるかな?」
「こんなの間違ってる!なんでまだ未成年の子までここで働いているの!」
「これが裏社会の世界なんだよ。家出をする子たちの居場所を作ってあげてんの」
「普通なら警察に伝えるのが」
春陽を叩き本当は叩きたくもなかった。立ち上がって春陽が啜り泣いていたとしても、慰めない。僕は警察が大嫌いだ。だから僕は復讐のために、Noveに入ってここまで昇りつめたようなもの。
僕はこれまで両親がして来たことを誇りに思っていた。けど両親はある組織に入って、そこで死亡した。僕はそのころ、まだ小学校に入ってすぐの時にだ。途方に暮れた僕は当初、クラスメイトの女の子に救われ、もちろん春陽のことはきっぱり諦めその子に恋をした。
ただその子がある病にかかってしまい、その病はまれな血がなければ助かる方法はないと診断を受けたらしい。そこで僕は閃いた。好きな子を助けたいという一心で両親を殺した組織に捕まり、その子を助けるために僕はNoveに加入。
組織に入りながら、その子が入院している病院に通っていた。けれどその子は中学になる寸前にこの世を去った。
そこで絶望に落ち、絶対に助けるからという約束は果たせず、組織も抜けられないこともあったことで、僕は頂点を目指そうとここまで昇りつめたころ。
普通に学校生活を送りながら、組織のために貢献をしていた時期に、聞きたくもないことを聞いてしまった。
「レインアイスは娘のために、同じ病の子を殺害したんだろ」
「かわいそうにな。翠が必死に貢献してくれてるのに、殺したんだなんて、翠が聞いたらどうなるか」
その当初、レインアイスのことがわからなかったけれど、両親が残してくれた資料と両親が仲良かったFBI捜査官に情報を提供しつつ、情報をもらっていた。
そして辿り着いたのが疾太の父親だと証明が取れ、近づくためにもまずは春陽と接触し、疾太と仲良くなる必要があったから文化祭へと訪れた。ただ疾太が今まで春陽にいじめをして春陽の人生を奪ったんだから、そろそろ限界だ。僕の初恋を取り返せたから、次は疾太を罰する。
その前に春陽のお仕置きをしとかなければならない。どんなお仕置きがいいか考えていると部下が部屋に入って来て奴が逃げましたと報告を受ける。破島が大人しくしていると思っていたものの違ったようだ。
「獅子屋さんたちには?」
「報告済みです」
「なら獅子屋さんたちに任せる。僕は春の太陽を見ておく必要があるから。それとレインアイスは?」
「息子を連れてこちらに来るようです」
なぜこのタイミングで疾太をこちらに来させるのかはわからずとも、きっと姉の存在に気づいたのだろう。まあいい。ここで二人を排除できる。
下がれと伝え再びしゃがみ春陽の髪の毛に触れ、僕の復讐のために利用させてもらうよ。
「春陽、泣いても誰も助けには来ない。いい加減に諦めて僕のものになってもらう」
「嫌だ。私は信じてるよ。絶対に夕哉さんたちが助けに来るし、翠がやろうとしてることも防ぐ。これ以上罪を犯さないためにも」
「それは無理だ。この組織は春陽の血を奪って、その血を売買する目的でいる。そう簡単に春陽を逃さないために、ある人を用意したんだよ」
この手は使いたくなかったがやるしかないと入れと伝え、現れたのは射殺されたはずの鶴が登場する。鶴は春陽のご両親と手を組んでいたことで死んだことにされていたが、獅子屋さんが見抜きここへ連れて来た。
春陽は動揺をしており、鶴は獅子屋さんがしつけをしたことで、何もかも忘れ、以前の鶴へと戻っている。
「呼んだかい、翠」
「僕の子がいう子と聞かないから、僕の代わりにしつけてくれる?その代わり鶴が求めているものを渡す」
「それは陽空のことか!」
尻尾を振ってキラキラしているような表情を出す鶴で、以前撮っておいた写真を見せる。すると興奮するかのようにやる気を出して、春陽の表情が怖ばりいやと引き下がりたくとも、縄で縛っていることで思うように引き下がれていない。
頼むと鶴に任せ、僕は一度退室すると夕佑が突っ立っていた。
「何?」
「あんなことしなくてもよかったんじゃない?」
「春陽は商品だ。大人しくしておけばよかったものの、逃げやすいようにしたのは夕佑、君なんじゃないの?獅子屋さんたちが知ったら、どうなるか」
「僕は手助けをしてるわけじゃない。召集がかかってる」
少し不審に抱くもわかってると言いながら夕佑と一緒に幹部会議へと向かうことに。
◇
はあはあと体を起こし、とても嫌な夢をみて、それが正夢になってほしくないと感じてしまった。とにかく水を飲もうとベッドから降りて、テーブルに置いていた水を少し飲む。
レッドクレインの敷地に住んでいるあたしは、春陽のご両親がしている組織と協力していた。
春陽を救うために、昨日夜瀬組の組長、漆月夜一くんや夕哉たちの話を聞きながら、どう動くか考えていたな。ここに淡がいてくれたら、心強かったのにと思いつつ、さっきの夢を思い返す。
幽霊になった鶴が春陽を襲い、襲い終えた鶴があたしのところに襲いかかって起き上がった夢。もし、もし鶴が生きているのなら、最悪な事態が起きてもおかしくはないかもしれない。
寝巻きからワインレッドの服装に着替え、朝食を食べてから、一応夕莉に相談しようと部屋を出て歩いていたら陽空さんと部下が慌ててやって来た。
「そんなに慌ててどうかした?」
「たった今、報告が上がりまして、元あったキャットアイエアンドの島に行けなくなっているらしいんです」
「原因は?」
「海上保安庁からよりますと島を守るかのように鮫がいるとの情報が。近づくと鮫が暴走し襲いかかり負傷者が出ている模様です」
鮫を手懐けるほどの組織と言うことなの。これじゃあ行ったとしても、鮫に襲われるケースが高い。まずは鮫を追い払わなければ、その島に辿り着くのも不可能。
だとすれば鶫の飛行線に乗って侵入するしかないのかもしれない。
「夕哉たちはこのこと知ってるんだよね?」
「おそらく耳には入っているかと。我々はどう動くべきでしょうか?」
飛行線に乗れる人数は限られている。ここは春陽のご両親とあたしの両親に決めて動くしかなさそうかも。それに見落としている部分があるような気がする。
さっきの夢のように春陽に降り注ぐものとしたら一体と、深く考えているとヤッホーと現れる黎明。
「なになに?どうかしたの?」
「ねえ黎明、鮫を操れるほどの人間って聞いたことある?」
「鮫?んー僕ちんが知ってる中ではそんな人はいないけど、藤太郎なら知ってるんじゃない?だってさ藤太郎は実際、鯨でしょ?なんか知ってると思う」
藤太郎は鯨波家。つまり海にまつわる生物と関係している。純連の本名は紫蛇だけど、想の本名は聞いたことがない。疑いたくはないけれど、確かめるしかないとスマホを手にする。
「何かわかった?」
「想の苗字って聞いたことある?」
「そのまま薫衣想じゃないの?」
「そうだと信じて確かめるしかない」
本人に聞くのではなく、藤太郎に連絡してみると、すぐに繋がった。
『おはよう、陽っちゃんのお姉ちゃん』
「おはよう、藤。一つ確認したいことがあって。ちなみに想底にいる?」
『いないよ。冬月ならいるけど』
スピーカーにしてほしいと伝え、ある質問をする。
「想の苗字って何かわかる?」
『想?えっと』
藤太郎は少し考えていると冬月が代わりに教えてくれた。
『想は本名でやってるよ。たまに病院とかでフルネーム呼ばれると、ファンが来るから別にすればよかったって愚痴ってたから』
「そう…。それならいいの。それとさっき報告もらった?」
もらってるよと冬月に言われ、だとすれば冬月は何かを知っているのかもしれない。
「鮫を操れるほどの人間っていたりする?」
『いや、聞いたことがない。おそらく飼ってるわけではなく餌をただ巻いているんだろうとは思うよ。じゃなきゃ島と東京を行き来できないからね』
Noveの組織内にはTamer、猛獣の調教師と呼ばれている人間がいる。だからきっと鮫を扱える人が必ずいたとしたらと思考を膨らませていたらはっと閃いた。
「疾太のお父さんはレインアイスじゃない!疾太のお父さんが鮫を操れる人間。じゃなきゃ今日、鮫がキャットアイランドを守っているように仕向けられないはずだよ」
『じゃあ誰がレインアイスなんだ…』
あたしたちはまんまと罠にかかったような感覚だ。漢字だけで簡単にレインアイスと認識してたけど氷雨、ひをとれば鮫になる。つまり疾太のお父さんは鮫を操れるTamerであって、実際のレインアイスは別の人。
鶴にもっと教わっておけばよかったと思うも、鶴はここにいない。
「とにかく、このことご両親に伝えて。調べられるかわからないけれど、探ってみる」
『わかった。僕の方でも探ってみるから、何かわかったら共有の方頼むね。それじゃあ』
冬月と通話を終え、黎明も部下も聴いていたことだから、手分けしてレインアイスのことを調べることにした。
◇
目を覚ました先にはぐったりと倒れている春陽がいて、声をかけたくても口が塞がれていた。春陽に何したんだよと椅子にもたれかかっている翠を睨み、それでも翠はスマホをいじっている。
春陽、起きろと芋虫のように体を動かし近くにより、両手両足が縛られていなかったら、春陽を抱っこしてなんとか脱出できたかもしれない。
それに父さんは壁に寄りかかって腕を組み目を閉じている。なんとかして縄を解くしかなさそうだなとやっていたら扉が開いた。誰が来たのかは知らないが、春陽を助けなきゃとやっていたら、後ろから声がかかる。
「疾太、簡単には外せねえぞ」
その声に俺は恐怖心と疑いたくなくても、俺はつい声の主の顔を見ちまった。そこには画面を持つ奴がいて、画面の先には入院していたはずの伊宮であり、俺たちに見せてくれていた笑顔ではなく、殺意の目をしている。
伊宮が到着したことで父さんは目を開け、口についているものを外してくれ、翠は春陽を抱っこし退散していった。
「伊宮、なんで」
『俺は警察官でありながら裏社会ではレインアイスと呼ばれている人間。まあ今頃、病院では騒ぎになっている頃だろ』
「このこと知ったら、春陽がどれだけ悲しむと思ってんだよ!それに矛盾が起きてる。昼秋さんの付き人がレインアイスだって」
「それは私だ。その名を引き換えに春陽ちゃんと接触してもらい、微量の血をもらっていた」
伊宮が教師となって学校にいたのも、春陽の血をもらうためってかよ。そもそも伊宮はどのタイミングで裏社会の人間になっちまったんだ。
考えても答えが見つからず、画面の向こうにいる伊宮は、父さんに報告する。
『しなは無事に病院へと搬送された。奥さんは警察に全てを打ち明けてる頃だ。氷雨さん、後戻りはできなくなります。いいですか?』
「この日のために私は動いていたようなものだ。やるに決まっているだろう」
『わかりました。では後ほど』
その会話が何を示しているのかわからずとも、俺は父さんに無視されNoveの連中に閉じ込められる羽目となった。




