107羽
透が搬送された警察病院で、まだ意識は戻っていなかった。冬月と黎明はそんなに重症を負うことはなかったようで、二人はピンピンしている。そして純連もここの病院に搬送されたそうだ。
獅子屋警部の拳銃で撃たれたことにより、獅子屋警部は指名手配書が出された。キャットアイランドの跡地にいるはずだとしても、警察が動かないのは警視総監が止めていると星河さんが言っていたな。なぜだか知らないが、早くしないと春陽に危険が生じるから早めに助けに行きたいところだ。
夕哉と呼ばれ、呼ばれた方角に身体を向けたら、夜一がスーツケースを持って来た。見た感じ旅行していたというような雰囲気だな。
「夜瀬組を放ったらかして何してんだよ」
「休暇とってただけ。まさか日本に帰ったら凄いことになってるから驚いた。あのさ、全員をかき集められない?できれば春陽先輩の恋人としもべ達も呼んでくれると助かる」
言い方と訂正させようともしもべと言うから、どうかしたのかと聞いた。
「真昼先輩のお父さんについて。真昼先輩には言っとくから、俺様ん家にかき集めといてね。んじゃ」
そう言って夜一はスーツケースを引きながら行ってしまい、透の寝顔を一度見てグループチャットで、全員夜一の家に集合と送っといた。
本当は透が起きるまでそばにいたかったが、仕方ないと立ち上がると扉の音がする。なんだと引き戸を引いたら三頭身のおっさんがいた。この人が警視総監かとぺこッとお辞儀をする。
「すまんのう」
「いえ。あの警視総監」
「扉を閉めてくれぬか?」
あっはいと扉を閉めパイプ椅子に座るのに一苦労している警視総監で、思わず手伝ってあげてしまった。以前は獅子屋警部が手伝ってくれていたのだろうと思うと、誰か付き添ったほうがよくないかと思ってしまうほどだ。
「夕哉が聞きたがってることは、十分承知しておる。わしがこの職をまだ辞めないわけは、この件に絡んでいると言うことじゃ」
「絡んでいると言うのは?」
「わしがまだ捜査一課にいた話になる。その捜査一課は裏社会を終わらせるための捜査課でな。多くの違法行為を目の当たりにしたのじゃ。それは数え切れないほどの違法行為が見受けられた。いくら逮捕したとして、新たな犯罪に手を染める者が存在していてな」
警視総監は透の寝顔を見ながら、その続きを教えてくれる。
「なぜ新たな犯罪が存在してしまうのか、裏社会で探っていくうちに、あることに辿り着いた。裏社会を動かしている大きな組織が存在している限り、裏社会は滅びぬと」
「裏社会の組織というのは、シルバーウルフやレッドクレイン辺りでしょうか?」
「然様じゃ。シルバーウルフ、レッドクレイン、鯨波が動かしていた組織、そして清掃屋。その四家が存在している限り、裏社会は終わらぬと思っていたのじゃ。そして悲劇が起きたのじゃよ」
悲劇という言葉で警視総監は、後悔しているような顔立ちだった。
「ある大きな事件が起きたのじゃ。それが今でいう春陽ちゃんのような事件じゃよ。最初はシルバーウルフやレッドクレインを疑った。しかしそれは大きな間違いだということが証明され、情報提供によってシルバーウルフたちを見逃したのじゃよ」
「その情報というのは?」
「まれな血液を買収している組織じゃ。しかし組織名はシルバーウルフたちも情報が掴めていないようで、誰が首謀者なのかもわからぬ。わしはずっとその組織について調べていた結果、Noveだということが判明したのじゃよ」
まれな血液を春陽は持っているということなのかと、衝撃すぎて、それでと警視総監は話を進める。
「わしが絡んでいるというのは、わしの妻がその事件の被害者だということなのじゃ。娘もまれな血液が遺伝していたことが発覚した時には遅かった。娘は孫をわしに預けた後、どうなったかは知らぬ。いくら探しよっても、娘は見つけられなかったのじゃ」
警視総監の娘さんが行方不明になっていただなんて信じられないことだった。つまり星河さんのお母さんってことになるよな。それに父親が一体誰なのか気になっていると、警視総監が教えてくれた。
「輝の父親はNoveの誰かじゃよ。輝は母親を取り返すために、刑事となり、そしてシルバーウルフの構成員として動いていたのじゃ。本来ならば教授としてやっていきたかったんじゃろうが、母親に会いたいという一心でこの職を選んだのじゃよ」
そのために星河さんはシルバーウルフに入り、そして刑事となって動いていたってことなんだ。とにかく夜一の家に向かうしかないなと警視総監に、透を頼みますと告げ、夜一の家に向かうことにした。
◇
なぜあたしは今まで翠の異変に気づかなかったんだろうと、大きな後悔が出ていた。一体、翠に何が起きたのだろうとお母さんと手分けして探りを入れても、情報は掴めないまま。
翠のご両親に連絡をしてみるも、音信不通になってしまったし、あたしとお母さんの結論は、翠に消されたか、もしくは翠のご両親が元々Noveの人間だということ。
書類を再チェックしていたら着信が入り、誰だろうと確認したら夕哉からで、夜一の家に集合とあった。烏丸さんから聞いた限りでは、夜瀬組から離れていると聞いてたけどな。了解スタンプを押して、身支度をし家を出た。
そこには夜一が大きなスーツケースを持って立っている。声をかけようとしたらスーツケースを置いてあたしに抱きつく夜一。
「紗良先輩、ただいま」
「おっおかえり。どこ行ってたの?夜一がいない間、大変なことが起きて」
「知ってる。夕哉に召集かけるよう伝えたから、その時話すよ。その前に紗良先輩に会いたくて、来ちゃった」
夜一にそう言われて普段なら突き飛ばすのに、できなくて夜一の服をギュッと掴む。そしたら夜一が頭を撫で一粒、また一粒涙が溢れる落ちる。大好きな翠が犯罪に手を染め、それに気づけなかった悔いが涙へと変わった。
「紗良先輩はどうしたい?」
「あたしは……」
「夕哉の家にいてもいいし、俺様たちと一緒に行って翠を説得する方法もある。紗良先輩が決めていい。もし行くなら紗良先輩は俺様や烏丸、夜瀬組員が全力で守るから安心して」
今からでもいいのなら幼馴染として翠を止めに行きたい。だから夜一に伝えた。
「翠がやろうとしていること、止めに行きたい」
「わかった。それじゃ行こっか」
あたしにできることとしたら、説得しに行くしかない。それがどれだけ危険になろうとも、あたしには夜一たちがいる。夜一が離れ手を差し伸べられ、その手をとり夜一の家へと一緒に向かうことになった。
◇
夜一の家に到着し車を止めて降りていると、リムジンが到着し藤太郎たちも到着したようだ。ただ藤太郎の顔が多少腫れており、純連の件で落ち込んでいたんだろう。
きっと大丈夫だよと背中を優しく叩き、門の前に立つと門が開いてその中へと入った。夜一はすでに帰っているんだよなとベルを鳴らし、数秒後に烏丸が派手なエプロンをつけて出てくる。似合わなすぎて思わず吹き出してしまう俺たちであった。
なぜそんなのをつけているのかは不明だが、夜一がすでに帰っているということで案内してもらう。客室に案内してもらうと夜一と紗良、それから鶫たちも到着していた。
空いている席に座る前、夜一は藤太郎のところに立ち、ごめんと頭を下げたのだ。藤太郎や想、賢介がなんのことだと困惑していると、頭を上げて真実を聞かされる。
「藤太郎の薬、すり替えられていたの覚えてる?」
「うん」
「あれ、俺様がすり替えた…。俺様の人生を狂わせたからやっちまって」
夜一は反省をしており、藤太郎たちはきょとんとしてぷっと笑い出す。それによって夜一がなんでというような顔をしていて、藤太郎が夜一に言った。
「そんなことできるの、夜一ぐらいだろうなって思ってたよ。こっちこそ、夜一を縛りつけていてごめん。陽っちゃんを取り返すまでは夜一の力借りててもいいかな?」
藤太郎がそんな言葉を出すとは思わなくて、もちろんと涙ぐみながら夜一は言い、それぞれ座って玲と光太も到着したことで夜一から話を聞くことに。
「俺様が夜瀬組から離れて、ある国へと向かっていた。南アフリカのケープタウン」
「そこに何があったんだ?」
俺が質問すると鶫が教えてくれた。
「昼秋がそこにいる。会いに行ったのだな?」
「父さんが?なんで南アフリカに?」
「真昼先輩の親父さんから聞いた話では、まるのような付き人がいたらしい。その人は真昼の親父さんのように雪を溺愛していた。そして真昼先輩の親父さんの全てを奪い、日本に現れたということ」
「昼秋はんに某同様の人がおったんか?初めて聞いたで」
まるは初めて知ったようで、結構驚いていたし、冬月も驚いている。
「そいつは暗殺者らしくて、もっと詳しく調べた結果、鈴鳩一家殺人事件に繋がっていることがはっきりした。多分、春陽先輩は赤子の頃そいつと接触してる」
春陽がとそれぞれ言葉が出ていて、冬月は過去のことを思い出しているようだ。どんな奴なんだろうと考えていたら、陽空があることを口にした。
「鶴が以前、教えてくれた人かも知れない。本名は知らないけど、あだ名でこう呼ばれてる。レインアイス」
陽空がみんなに告げると、何かを思い出したらしい冬月が嘘だと顔に手を当てる。俺たちは知らないがまるも衝撃すぎたような表情だ。
玲がどうしたと聞くと冬月がレインについて教えてくれる。
「今まで気づかなかったけどレインアイスを日本語に訳すと雨と氷。つまり氷雨家だ」
俺たちは言葉を失うぐらい驚愕してしまい、親父たちはそれを知っていた上で疾太のご両親と仲を深めていたってことか。それに疾太と麗音が従兄弟となる。疾太もそういう教育を受けているのなら、尚更危険が伴うはずだ。
賢介は氷雨家に引き取られていたから、相当なショックを受けているようだった。紗良は整理するため冬月に質問をする。
「てことは疾太のお父さんが今までずっと昼秋さんになって行動していたってことだとしても、疾太のお父さんには傷なんてついてない。どうやって?」
「レインアイスは変装を得意とする人だ。もしかすると僕の両親はすでに気づいて動いているとしたら、まず疾太の家に尋ねると思う」
疾太の家へすでに訪れていたら、何かが起きていてもおかしくはない。それにここには疾太がいないから尚更疑いを感じちまう。すると誰かのスマホが鳴り全員取り出して、俺も確認してみた。
俺ではないようで迂生のスマホだったと藤太郎が確認していると、何これと俺たちに見せてくれる。
それは虎次が送って来たらしい動画で、その映像を見せてもらうと春陽が映っていて抵抗している動画だった。文面も送られ早くしないと春陽は翠のペットになっちゃうよとある。
俺のスマホだったら思いっきりスマホを投げつけていたところだったと思った。同様に真昼も同じことをしそうな勢いの怒りを出している。すると藤太郎が一度スマホを置き、俺らに今の気持ちを告ぐ。
「陽っちゃんを早く助けに行きたい。けど迂生は何もできない。けど迂生は待つんじゃなくて、純連や想、岩ちゃんに夕哉たちと一緒に陽っちゃんを助けに行きたい。そのために少しでも力になりたいんだ」
もし春陽を救いに行くとしたら、藤太郎は持病を持ってるし、姉貴たちと一緒に待っててもらう形となるだろうな。それでも藤太郎は待つんじゃなくて一緒に助けに行きたいか。
ここは純連がいない今、藤太郎のことを考え決めるのは想や賢介。二人はどちらかというと待っててほしいと言いたげな顔だとしても、想が藤太郎に言った。
「わくは藤太郎が長生きしてほしいから、残って待っててほしい。けど藤は今、鯨波さんがやって来たことを、受け継いだ者としてわくはサポートするつもりだよ。もちろん、純連も言うはずだから」
そしたら賢介も似たようなことを藤太郎に伝えていく。
「想の言う通りだ。俺たちやヴァイオレットは藤太郎がやりたいことがあるなら、全力でサポートするって決めてんだ。まあどちらかというと安静にはしてほしいが、それでも陽っちゃんを助けに行きたいなら一緒に行こう」
「ありがとう想、岩ちゃん。迂生、弱いけど大丈夫かな。今から練習したほうが」
「いや、藤はそのままでいい。俺たちが全力で守るから」
いいのと言う藤太郎でまあなんとか大丈夫だろうとは思うな。その光景を見ていたら着信が入り確認してみると疾太からだ。みんなに疾太からだと告げ、スピーカーにし応答する。
「疾太、どうした?」
『夕…哉っ助け』
「何があった!」
ツーツーと切れてしまい、何があったんだと思考を膨らませるも、考えられるのはただ一つ。Noveに捕まったか、それか父親の正体を知ったかのどちらかになる。つまり疾太は父親がどう言う人物なのか知らないということだ。
とにかく俺と玲で疾太の家に尋ねることにし、どうするかは星河さんたちに決めてもらうことになった。
◇
かなり状況が残酷で、一刻も早く助けを呼びに行かなければ、春陽が持つかどうかだ。長く見ていたら誰かに気づかれそうで、掃除をしている振りをしながらその場から一度離れる。
一応、夕佑がいたから大丈夫と思いたいが、脱出し夕哉に告げなければならない。掃除を終えどうするかと考えていたら、ちょうど141が歩いている。そういうことかと声をかけ監視カメラがない部屋で話をした。
「お前、豹馬の妹だろ?ご主人様はコスプレ好き。つまり虎次の言いなりになってんのか?」
「それがなんですか?ららは虎次さんがいなかったら、今頃お仕置きされて殺されてた」
どういう理屈で豹馬の妹がそういう運命を辿っているのかは知らないが、おそらく豹馬の妹は一度逃げたんだろう。だとすると逃げ道は知っているはずだ。
「豹馬の妹、自分が必ずここから出してやるから、頼む。逃げ道を教えてくれ」
「でもそのせいでレッドクレインの長姉ちゃんが…」
「大丈夫。陽空は無事に脱出することができた。我も脱出して、すぐに仲間を連れて来る。そのために一つ、頼んでもいいか?」
なあにと首を傾げている豹馬の妹で、耳元で囁き、んーと考えるもやってみると言ってくれて、頼んだと豹馬の妹を撫でた。こっちと小さく声に出しながら防犯カメラに気をつけつつ、我は島を脱出することに成功した。




