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102羽

 梅雨があけ蝉の鳴き声が響き、猛暑の日々が続いていた。想は相変わらず黙秘をし続けているようで、誰を庇っているのか透たちはお手上げ状態らしい。純連は藤ちゃんに連絡ではなく、私にメッセージをくれて、藤太郎元気そうかとくる。

 直接聞けばいいのにと思いながらも、元気だよと私とツーショットを送ってあげていた。賢介は催花ちゃんとラブラブ生活を送っていて、時々催花ちゃんからも幸せメッセージをもらっている。


 そして真昼くんは順調に回復をし、もうすぐ退院となるわけではあるけれど、病院に行けていない理由が存在していた。なぜかというと、ここ最近体調が優れず家で体を休ませている。今年は異常なぐらいの暑さがあり、夏バテを起こしていた。


「陽っちゃん、冬月とお出かけしてきても大丈夫?」

「平気。何かあったらお姉ちゃん呼ぶから、お出かけ行ってきていいよ」

「わかった。欲しいもの何かあったら連絡してね。行ってきます」


 行ってらっしゃいと伝え寝返りを打ち、少し眠ろうかなと目を瞑った時だった。ガタンという音が響き、なんだろうとゆっくり身体を起こして様子を見に行く。

 藤ちゃんが倒れたとかじゃないよねと少し不安を抱きつつ、音がした方へ行ってみた。けれど音がした方には何も落ちてたりとはしていなく、ここじゃないのかな。別のところを探そうと後ろを振り向いたら、虎次さんがいた。不法侵入と通報したくとも、激しい頭痛に襲われ、虎次さんの前で倒れてしまう。


 


 虎次さんいたのについ寝ちゃったと目を覚ました場所は私の部屋で、横を見ると隣で虎次さんがうたた寝をしていた。テーブルにはビニール袋から冷えピタやスポーツドリンクが多く置いてある。

 それに氷枕が引かれてあって、虎次さんが看病してくれたんだと気づいた。これお兄ちゃんと藤ちゃんが見たらやばそうと虎次さん起きてと揺さぶる。

 しかしなかなか起きてはくれずどうしたら起きてくれるのだろうと考えていたら、爆音が聴こえた。それによって目をしょぼしょぼしながら虎次さんが起き、スマホを止める。大きく欠伸をしながら私のおでこに虎次さんのおでこがくっついた。離れてと胸を押し離れるも、再びおでこをくっつける。


 余計に体温が上がっちゃうじゃないともう一度押そうとしたら扉が開いた。てっきり藤ちゃんたちが帰って来たのかと思えば、豹馬さんがニヤニヤしながら見ている。


「陽っちゃんが寝込んでるのに、お出かけとはねえ。虎、目的は果たしたし、さっさとずらからないと冬の月が戻ってくる。どうする?このまま陽っちゃんを連れて帰っても怒らないだろうし」

「連れて帰りたくてうずうずしてるが、弱っているところを襲いたくない。だからちゃんと熱を下げてから、捕獲しにくるよ。それまでは」


 虎次さんの顔が近づいてきて、不意打ちのキスをもらってしまった。パシャッと豹馬さんに撮られてしまい、やめてと虎次さんを押す。虎次さんはいたずらの笑みを浮かべ、睨んでると虎次さんにほっぺを掴まれた。


「陽っちゃんのその目が堪らない。藤太郎のものをぐちゃぐちゃにしたいぐらいだよ。だから陽っちゃん、小生のおもちゃとなって動いてもらおうか。豹馬、あれ持って来てる?」

「ここでやる気か!」

「いいじゃん。どの道、陽っちゃんは翠に従えるよう指示もらってるからさ」


 私に何する気なのと思いながらも、豹馬さんは一度私の部屋から出て行く。虎次さんは私を起こし、座っているのは辛くて虎次さんの胸に寄りかかってしまった。

 少しして豹馬さんが戻って来て、机にあるものはビニール袋に一旦しまう。そして豹馬さんが机に置いたのはラジカセだった。豹馬さんは再生ボタンを押すと、自然の音が聴こえる。こんなの流しても私は虎次さんたちの言いなりになんかならない。


 それでも自然の音と虎次さんが優しく頭をポンポンと触れ、うとうとしてしまう。このまま眠ってしまったら、何かされるのは確実で、強く虎次さんの服を掴んだ。

 大丈夫、何もしないと耳元で囁かれ、恐怖心が出てしまうも、睡魔が襲いかかってきた。朦朧としてきて寝ちゃだめと思っても、おやすみ、小生の雌虎ちゃんという言葉で深い眠りへとついてしまう。



 冬月から連絡をもらい、春陽のお見舞いに冬月の家へと向かっていた。こんな暑さじゃ熱中症とかだろうと家に到着。車を止め、合鍵で家の中へと入る。

 リビングに入ってみるも春陽はいなく、部屋かと春陽の部屋へと行ってみた。そっと扉を開け春陽がぐっすり寝ているのを確認する。お粥でも作ってやるかと扉を閉め、キッチンを借りてお粥を作ることに。


 お粥を作っていたら、春陽の叫び声が聞こえ、火を止めて、すぐ春陽の部屋へと入った。春陽は縮こまっていてどうしたと春陽の手を握る。そしたら春陽は俺に抱きつくからベッドに座って背中を摩ってあげた。嫌な夢でも見たんだろうと春陽が落ち着くまで待ってあげる。

 少しして夕哉さんと俺を呼ぶから、春陽の顔を見た。その表情は恐怖に満ちた顔立ちで、何があったと春陽の頭を触れる。


「春陽、どうした?怖い夢でも見たか?」

「私は檻の中にいて、外にいる藤ちゃんがライオンに食べられちゃって、夕哉さんは狼に食べられちゃう夢…」


 ぐろすぎる夢を見たようで、おそらくライオンというのは虎次。狼と言うのは雪あたりということかは不明だ。冬月と藤太郎が戻って来るまではそばにいたほうが良さそうだな。

 

「夕哉さん、私…」

「春陽、今回は俺、止めんぞ。藤太郎の場合は病もあったからこそ、そばにいさせただけだ。今回はそうじゃない。大丈夫。今度はみんなで考えて乗り越えよう。な?」

「夢のようなことは起きない…よね?」


 春陽は心配と恐怖が混じり合った顔立ちで、大丈夫だよと春陽の頬を触れた。


「夢のようなことは起きねえよ。それに俺たちには春陽の両親がついてる。何があっても、春陽が悲しまないように動くから、春陽は心配しなくていい」

「うん」

「よし。やっべ。お粥作り途中だった。ちょっと待っててな」


 ありがとうと春陽からお礼をもらい、一度出てキッチンへと戻る。あんな夢を見るほど魘されていたようには見えなかった。何がどうなっているんだと、火をもう一度つけお粥を作っていく。

 何か裏がありそうだなと感じながら、お粥を作り春陽の部屋へと持って行った。


 春陽は俺特製のお粥をしっかり食べ、冷えピタを張り替え、ぐっすり寝てもらう。寝ている間にお皿等を洗っていると、インターホンが鳴った。一体誰だと確認してみると疾太で、扉を開ける。

 疾太は何か焦っているような顔立ちで、疾太と声をかける前に、助けてくれと俺の両肩を掴んだ。


「疾太、どうした?」

「千夏がっ」


 そこで立ち崩してしまいとにかく中入れよと冬月の家の中へと入らせる。リビングに入ってもらい、冷蔵庫にあったお茶を淹れて疾太に出した。


「千夏って確か疾太の幼馴染だったよな?何があった?」

「翠からこんな写真送りつけられて、助けたかったら春陽を連れて来いって言われて。意味わかんねえよ…」


 怒りしかなく千夏の写真は口にできないほどの写真ばかりが写っている。真昼の次が俺ってことになるとはな。疾太にそんなことはさせたくはねえ。


「翠とは連絡とってたのか?」

「以前は普通だった。けど講義を受けなくなった時期があって、そこから連絡はあんま。まさかこんな形になるだなんて思ってねえよ」

「なんで翠が首謀者になってんのかは本人に聞かなくちゃならねえ。とにかく組で動いてみるから、疾太は心配すんな。俺たちが必ず救う」

「悪い。何もできなくて」


 いいってと疾太を慰めこれは一大事になりそうだなと感じた。


 疾太が帰り組グループでさっきもらった疾太の情報を送り、見かけた組員は俺に報告するよう指示を与える。どちらにせよ、千夏はどこかの建物に閉じ込められているのは確実で、どうやって探すかだ。

 心当たりありそうな場所を探したくとも、俺は春陽のことが心配で、冬月と藤太郎が戻って来たら、探すしかねえか。


 春陽の部屋へと入り、ぐっすり眠っている春陽の寝顔を見て、春陽が再び変なこと考えているのか気になってしまう。これ以上、春陽が何かに巻き込まれるのはごめんだ。

 そう思っているとなんだこれとあるものを手にした。それはただのゴミらしきものだが、春陽が使用したとかは限らない。念の為、冬月にこんなゴミみっけたけど、冬月が使用したものかと送ってみた。

 少しして返信が来て、それ僕が使ってないし、藤太郎も使ってないと言われる。


 冬月たちがいない間と俺が来る前に誰かがここにいたのは間違いはなかった。おそらくそれで春陽は妙な夢を見たのは間違いはない。もしかすると翠が来ていた可能性だってあるはずだ。

 春陽が起きたら直接聞くしかないと思い、それまでは本棚にある小説を読みながら待つことにした。



 冬月の自宅に侵入してもらった二人から、春陽が寝込んでたという報告を受けた。なぜ二人は付き添っていなかったのか意味分からずとも、虎次が面倒を見てくれたからほっとしている。

 疾太は今頃、夕哉に打ち明けていそうだなと思いながら、千夏がいる部屋へと入った。そこには麗音もいて椅子に縛られている千夏は多少血が流れている。


「手当してやって」

「父さんに何か言われるんじゃ」

「いいから。そういや、もう一人のほうは?」

「夕佑さんがどこかへ連れて行った。すでに消されてると思う。そんで春陽はどうする?虎次が暴走する前に保護しないと、後々やばそうな気もするけど?」


 麗音に言われ、虎次のやり癖は時に止まらないこともしばしばあるけれど、春陽を無傷で連れて来るにはまだ多少時間がかかる。


「様子見て豹馬に指示を出すからいいよ」

「翠…」


 千夏が顔を上げ意識戻ったんだと思いながらも、千夏は僕を睨んでいる。


「こんなことしても、春陽はもうっ」


 聞きたくないと頬を叩き、やっぱり鯨波流史郎に与えていた毒を飲ませたほうが楽かな。そう思っているとそこまでにしておけと獅子屋警部が現れる。


「獅子屋警部、仕事のほうはよろしかったんですか?」

「隙を見て来た。すぐに戻らねばならない。鈴鳩千夏は釈放してやれ。氷雨さんが私に疑いを持ち始めそうだ」

「疾太、父親にちくったか…。承知しました。ですが千夏が万が一話してしまったら?」

「その時は千夏の想い人を消すまで。それから麗音。捜索したがあきらは星霜家と関わっていた。だから次会う時は

敵と認識しろ」


 陽つまり黎明は全て打ち明けたことにより、こちらには戻らないということ。せっかく刑務所から出してくれたのに、最低な息子だなと思ってしまった。

 獅子屋警部はそれを伝え、仕事に戻って行き、縛っている縄を解く。最低と言いながら千夏は倒れてしまい、麗音に任せた。


「真昼が搬送された病院は止めといたほうがいい。違う病院に」

「オッケー。翠、ご両親は…その災難だったな」


 麗音にまさか両親という言葉が出るとはねと、心配してくれてありがとうと伝え、僕は真昼がいる病院へと向かうことに。



 冬月と買い物をしている時に冬月のスマホが鳴って、一度は確認するも冬月はスマホをポケットにしまう。出なくていいのと聞いたところ、平気と答えた。本当にいいのかなと思いながら、冬月に相談を持ちかける。


「冬月、一つ頼みたいことがある」

「遺言なら聞きたくない。それに藤太郎にはまだまだ生きててもらわなきゃ」

「だけど迂生には時間がないんだよ!」


 つい冬月の袖を掴み、冬月はそれでも聞きたくはないような顔立ちだった。このことを知ってるのは夕哉と冬月、それから陽っちゃんだけ。

 迂生に後どれくらいの時間があるか分からないんだよと、冬月の言葉を待っていたら何やってんだと純連の声が聞こえる。


「藤太郎を泣かせんな」

「泣かせてはないよ。藤太郎、行こう。後でちゃんと聞いてあげるから」

「ちょいちょい、陽っちゃんはどうした?」

「寝込んでるから、早く帰るつもりだよ。純連、着いてこないでね。今はまだ…」


 言いたくてもまだ言える状態じゃないし、想もいないから言えない。どうしようと悩んでいたら、千花ちゃんの声が聞こえた。そっちに向けるとそこに千花ちゃんがいて、無事で良かったと千花ちゃんに抱きつく。


「千花ちゃん、無事だったんだね。良かったっ」


 傷もついていないからちゃんと逃げ切れたんだと迂生たちは思ってた。けれど千花ちゃんは迂生をどかして、申し訳ございませんと深々と頭を下げる。千花ちゃんと困惑しながら頭上げてと肩に手をやるも千花ちゃんは下げることをしなかった。

 純連は迂生の腕を引っ張り、あいつとグルだったんだろと純連が言い出す。何言ってんのと純連の表情を見ると後悔というような瞳だった。千花ちゃんは頭を上げ、はいと小さく答える。あいつって誰と混乱していると千花ちゃんはタブレットを見せてくれて、その映像をみた。それは千っちゃんが椅子に縛られている映像でしかも深傷を負っているような感覚だ。


「私と千夏は翠に言われ、藤のお父様、鯨波流史郎を殺す計画を立てた。流史郎様の食事は全て微量の毒を忍ばせ弱らせていました。なかなか死なないことによって、千夏に殺すよう命じられ、寝室へと入ったんです」

「こんなことしなくてもお父さんは」

「覚悟を持って千夏は流史郎様と接触。流史郎様はわかった上で、かかって来なさいと仰ってくださいました。そして千夏は憎しみ、怒りを流史郎様にぶつけ、流史郎様の最後の言葉。苦しませてしまってすまなかった。だが私はお前たちの両親を殺してはいない。藤太郎に伝えてくれ。希望を捨てるなと」


 その言葉に迂生はつうっと涙が流れてしまい、お父さんとまだ話したいこといっぱいあったのにと純連と冬月が慰めてくれる。千花ちゃんはごめんなさいというような表情で、迂生たちに言った。


「流史郎様が息を引き取られたすぐに、想が到着したんです。状況を理解した上で、千夏が持っていた包丁を握り、逃げてと言われて、私と千夏はNoveの本拠地へと戻りました。藤、本当にごめんなさい」


 迂生は千花ちゃんを信じてた。まさか従姉妹にお父さんを殺されるだなんて信じたくなかったよ。冬月はすぐに警察を呼び、千花ちゃんはお父さんを殺した容疑で連行されていく。

 帰ろうと冬月が言い、純連がまたなと行こうとするから待ってと純連の服を軽く掴む。


「どうした?」

「想が釈放されたら、話したいことがある」

「わかった。それまでは俺は好きなことして、待ってるからな。もし会いたいって思ったらいつでも言ってくれ。んじゃ冬月、藤太郎のこと、頼んだ」


 純連は迂生の涙を拭って行ってしまい、少し休むと聞かれ、ううんと答えた。


「大丈夫。陽っちゃんが待ってるから帰ろう」


 冬月と一緒に買い物を終わらせて、陽っちゃんが待っている冬月の家へと帰ることに。



 よりによって藤太郎のおっちゃんが、藤太郎の従姉妹によって殺害されるとはな。千花と千夏はすでに姉妹として動いていたということでいいのかは定かではない。

 これを陽っちゃんのご両親に伝えれば、なんと返ってくるか。とにかく一度、陽っちゃんのご両親と連絡しとかないとな。


 受話器があるビルへと入り、ここもいつNoveが侵入するか分からないから、できるだけ早めに撤去しといたほうが良さそう。受話器をとり、鳴らし続けると別の人の声が聞こえる。


『合言葉を』

「冬の月と春の太陽、霜に星する。月人さんか陽子さんいらっしゃいますか?」

『ただいま、太陽の空のご両親と外出をしておりまして、不在です。伝言をお預かり致しましょうか?』

「すでに動いているってことですか?」


 はいと陽っちゃんのご両親の仲間が言っていて、となれば紫蛇組も動かしたほうが良さそうだな。迷っていると代わってもらってもと男性の声が聞こえ、代わりますねと一言かけ、その人へと切り替わる。


『純連くん』

「清寺さん…すみません」

『純連くんが背負うことはない。佐田からも聞いている。あれは事故のようなものだ。気にすることはない。獅子屋には気をつけなさい。何をしでかすか分からない人だ』

「承知しています。例の件、情報は突き止められました?」


 聞いてみると全くと即答されてしまい、そう簡単に情報は得られないってことか。


『わかり次第、連絡いただければこちらでも動けますんで』


 伝えとくと言ってくれて、それではと通話を終わらせた。催花が陽っちゃんのご両親のところで動いていたのは知ってたけど、まさか清寺さんが戻ってきていたとは。なら大丈夫そうかなとビルを出て、夜一の家へ帰ることに。

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