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101羽

 姉ががくに保護されていたという言葉で、夕哉さんたちは軽蔑するような表情で姉の話を聞いていた。がくの行動は私たちの前ではそういう場面を一切見せなかったから、信じられるのに時間がかかりそう。

 それに姉はがくにやられたことの傷があるせいで、一時期男の人と話せなかった。今はもうだいぶよくはなっているみたい。


がくは制御できなくなって、がくを恐れてた。そのせいでみんなに誤解をさせちゃってごめん」


 深々と頭を下げる姉であり、玲さんたちはわかってあげたい気持ちがあるものの、まだ受け入れられないような感じだ。頭を上げる姉は持ってきた手紙を出す。


「これはあたし宛の手紙。今はがくのこと、受け入れなくていい。とにかくこの内容を聞いて、今後について話し合いたい。呼んでもいい?」

「一つ、いいか?」


 夕哉さんが何か疑問に思っていたことを、お姉ちゃんに聞き出す。


「俺と姉貴の兄である、夕佑のことは何も知らないよな?」

「教えてはくれなかった」

「そっか。なにかわかるんじゃないかって思ってただけ。陽空、手紙頼む」


 うんと姉は封筒から手紙を取り出し、読み上げていく。


 最愛なる陽空へ

 今まで私のわがままを聞いてくれて感謝するよ。

 私の制御が効かず、そして陽空にやった行為は償わなければならないと服役していた時のことだった。

 黎明と紫蛇組が話しているのを聞いてな。

 これはいかんと思い、私も脱獄できるよう手配を頼んだのだよ。

 制御はできていると確信を持てたと思っていたが、陽空に会ってしまったら駄目だったようだ。

 それでも陽空の力になれる喜びを持ち、そして陽空の幸せを望むようになった。

 あれだけ欲望に呑まれたのになぜかと度々考えてしまうことがある。

 その答えはまだ見つけることはできなくとも、春の太陽を見て決心がついたのだ。

 あの人からなんと言われようとも、見放されようとも、春の太陽は私を見捨てなかった。

 春の太陽がこの先、暗闇へと堕ちようとも、冬の月と夕暮れが指す光が春の太陽を救うと信じている。

 私ができる最後というのは、世間に晒すことはもちろんのこと。

 これから先の未来に、陽空の子どもや、春の太陽の子ども。

 そして未来の子どもたちに、このようなことをさせないために、この世界は変えていく必要がある。

 裏社会は完全に滅ぼすことはできないだろうが、私の願いはただ一つ。

 子どもたちの人生を、夢を、奪わせないために、Noveを滅ぼさなければならない。

 そのために私は注目を浴び、宣言をする。

 その言葉に、どれだけの人間が動いてくれるかは不明だが、私の願いはきっと届くと信じてやってみせよう。

 陽空、以前伝えたこと、レッドクレインは今後どうするかは陽空自身が決め、従業員に伝えてくれ。

 従業員は陽空の言葉を信じ、解散だとしても恨む人間などいない人たちだ。

 どうせなら、私の子に一度会いたかったものだよ。

 それはもう叶わないことだが、陽空、どんな人と結ばれようとも、私は祝福する。

 幸せにな、陽空。 がくより


 お姉ちゃんが手紙を読み終えると夕哉さんたちがぞわぞわっと震えて、感動な場面ではなかったみたい。


「想像するだけで吐き気が」

「自分も同感。よく言えたもんだな。自分たちはがくの行為は絶対に許せるわけがない」

「夕哉さん、玲さん。がくがしてきた行為は私も許せません。ですががくと一度話したことがあって」


 そう告げたら夕哉さんたちが数秒固まり、そして一斉に叫び出す。藤ちゃんもどういうことなのと怒っていて、変なことされてないよと付け足しながら説明した。


「守城大学に通い始めてすぐのことだよ。講義が終わって、家に帰ろうとしたら、がくとばったり会ったの」

がくがなんで守城学園を彷徨いてんだよ」

「私に会うためだって」


 夕哉さんたちを余計に苛立たせてしまい、ばたばたしてたからちゃんとがくのこと説明できていなかったのは事実だ。なんとか話をしようとした時。スマホが鳴り出して私のスマホだと気づき確認してみると翠からだ。


「また虎次なら無視しちゃっていいよ」

「ううん。翠から。なんだろう。ちょっと出てみるね」


 席を外し電話に出ようとしたら、姉に待ってと言われる。


「出ない方が身のためだよ」

「どうして?」


 姉は一瞬迷っている様子だとしても、私たちに説明をしてくれる。


「翠はあたしたちの敵でNoveのリーダーをしてるの。もしかすると罠かもしれない」

「翠が?」

「うん。この目で見た。淡を虐めてる姿を嘲笑って見てた。陽羽の両親に言ったら大事なものなくすとまで」


 嘘であってほしかった。いつから翠はそんな組織に入ってしまったの。幼馴染なのにどうして何も言ってはくれなかったのという言葉がよぎる。

 みんなが止めようと思っていたとしても、私は鳴っているスマホを耳に当てる。


「翠、どうしたの?」

『なんで僕だってわかったの?』

「電話番号、覚えてたから」

『今すぐハス喫茶に来てくれる?ちょっと大変なことが起きてるから』


 電話越しの声が紗良で真昼くんに何かが起きたのだと知った。わかったすぐ行くねと伝え通話を終了する。藤ちゃんが私の顔色を見て、何かあったと聞かれる。


「どうかしたの?」

「ハス喫茶に来てほしいみたいなの。真昼くんに何か起きたかもしれない。行かなきゃ」

「なら俺も一緒に行く。玲、昼秋さんに一応連絡しておいて」


 気をつけろと言われ、私と夕哉さん、それから藤ちゃんと一緒にハス喫茶に向かうことになった。



 数時間前ーーーーー


 ドアベルが鳴りいらっしゃいませと行ってみると、そこには久しぶりの翠がやって来た。翠はなぜかあたしに抱きついて、連絡できなくてごめんと言い出す。

 あたしたちには内緒の密偵調査でもしてたんでしょとふざけながら言い、それでも翠はうんともすんとも言わなかった。


 密偵調査で見たくないものがあったのかなと翠が離れて、着替えてくるねとスタッフルームへと入っていく。バイト終わったら話でも聞いてあげよう。普通にバイトをしていた時に、たちの悪そうな連中が来店した。店員に成りすましているシルバーウルフの構成員がオーダーを取りにいってくれる。

 大丈夫かなと様子を見ながらレジうちをしていたら、グラスが割れる音が店内に響き渡った。みるとお互いが歪み合っていてこれはさすがにまずいかもと翠を呼びに行こうとした時。真昼くんが文常大学から帰って来て状況を把握してくれる。

 大丈夫、僕に任せてと言われ感じの悪いお客のところへと行った。


「申し訳ございません。当店では扱っていないものでして、お引き取り願えますか?」

「使えねえ店だな。それに犬臭え。ちゃんと洗ってんのかよ」

「ここにいたら、匂いが移るわ」


 営業妨害と思ったあたしはいてもたってもいられず、その場に入ろう。そう思った瞬間に、ハスキーたちが唸り出して、しかもたちの悪いお客に噛みついてしまう。

 いってえとハスキーを振り払い、それを映像に撮られてしまった。来てくれたお客さんは、この状況から見て小声であたしに会計をと言われ、会計を済ませてあげる。


 残ったのはたちの悪いお客とシルバーウルフのみで、真昼くん落ち着いてと言いかけた時のことだ。構成員たちとたちの悪いお客が争い始め、もうっとハスキーを飼育部屋へと入れさせていく。

 今まではこんなことなかったのに、急にどうしたんだろうと成犬はなんとか飼育部屋へと連れていけた。後はハスキーたちの赤ちゃんがまだいるとせっせと運ぼう。

 そう思ったらたちの悪い一人がハスキーの赤ちゃんを殺そうとしていて、やばいと庇おうとした時。庇ったのは真昼くんでしかも腹部にナイフが刺さってしまっている。


 真昼坊ちゃんと構成員が叫び出し、たちの悪い連中を確保。真昼くんを支えながら、座らせるも血が止まらない。スタッフルームから出て来た翠で、早く救急車呼んでと叫んだ。

 しっかりしてと思っていても、真昼くんは汗を掻きながら大丈夫と言って、目を閉じちゃった。


 なんとか止血させたいけど、あたし医者じゃないしどうすればと綺麗なタオルで包丁の周りを当てる。翠は救急車を呼んだ後誰と喋っているのか分からずとも、真昼くんのお父さんや雪が知ったら、きっと激怒以上になるのは確実だった。

 救急車が到着し、構成員は後で行きますと行ってくれて、あたしも救急車に乗り付き添う。


 真昼くん死なないでと真昼くんの手を握り、営業妨害されてその挙げ句に真昼くんが重傷を負うだなんて。



 夕哉さんの車で駅前のにある駐車場に止め、真っ先にハス喫茶へと向かった。ハス喫茶付近では警察がいて、そこに透と星河教授がいる。

 夕哉さんが透に声をかけると二人がこちらを向いて、こっちに来てくれる。星河教授は藤ちゃんを見て、まだいたんだというような顔立ちだった。藤ちゃんもいつまで刑事やってんのというような表情をしている。


「翠は?」

「事情聴取で署に行ってもらった。それより夕哉、雪が入院している病院に春陽を連れてってやってくれ。真昼が刺されたと翠から報告を受けたから」

「真昼くんが…?」

「翠はその時、まだスタッフルームにいたらしいが、店内で騒いでいる声が聞こえたらしい。紗良が付き添ってるらしいから、話聞いてやって」


 透に言われ、透は星河教授とまだ現場に残るらしく、翠に直接聞きたくも、まずは真昼くんが搬送されたという病院へと向かうことになった。

 真昼くんはお兄ちゃんに指導してもらってたから、大きな怪我はしないはずなのになんでだろう。不安が大きく膨れ上がり、真昼くんと麻痺側の手を握る。

 すると隣に座ってる藤ちゃんの手が乗っかり、大丈夫だよと声をかけてくれた。運転している夕哉さんも、大丈夫だよと言ってくれて、このこと知ったら雪や昼秋さんが勝手に動いてしまうんじゃないかと感じる。




 病院に到着して受付で搬送された真昼くんの情報を聞き、手術室へと向かった。手術室前にある椅子に紗良が祈りポーズをとって座っている。

 紗良と声をかけたら紗良が涙目で私に抱きつき、紗良が落ち着くまで待ってあげた。


 落ち着いたところで、ハンカチを渡しながら、何が起きたのか教えてもらう。


「たちの悪い客が来て、やだなって思ってたの。そしたら案の定揉めちゃって、その前にいたお客さんは怖がって会計を済ませて。それでたちの悪い客だけが残った瞬間、争いが始まったの」

「どうして真昼くんがやられるようなことを?」

「あたしがハスキーを飼育部屋に誘導して、赤ちゃんのハスキーがまだ店内にいて。それで守るためにナイフが…」


 もしかしたらその客はNoveの人間なのかもしれないと思ってしまった。それに翠が手配した人たちだったらと考えてしまう。

 それに今後、私の身内が再び危険になることになってしまうんじゃないか。すでに真昼くんが襲われた以上、夕哉さんや藤ちゃんにも危険が迫ってくる可能性だって出てくる。そうならないために、翠とちゃんと話さなければと考えていたら、真昼くんのお父さんとまるさんがやって来た。


「真昼は?」

「まだ手術を行なってます」

「そうか…。春陽ちゃん、ずっと会えなくてすまなかったね。それから藤太郎くん、お父さんのこと、お悔やみ申し上げます」


 深々と真昼くんのお父さんとまるさんが頭を下げ、藤ちゃんは頭を上げてくださいと言う。意外な言葉に二人はびっくりしていて、藤ちゃんが言った。


「お父さんは望んで昼秋さんたちを敵視していただけなんで。それに昼秋さん、お父さんがしてきたこと、今まで本当にごめんなさい」


 今度は藤ちゃんが頭を下げ頭を上げてくれと言ってくれているも、藤ちゃんは頭をあげることはしない。それはきっと雪の奥さんや雪恋ちゃんのことも含めてのことなんだろう。

 すると小雪さんと天美さんもやって来て、頭を上げて藤太郎と小雪さんが藤ちゃんの肩に触れる。そしたら藤ちゃんは頭を上げ、泣きそうな顔をしていた。ごめんなさいと藤ちゃんが言うと小雪さんは優しく藤ちゃんを包み、冷たく接してしまってごめんなさいねと小雪さんは言う。

 まるさんに雪恋ちゃんと昼奈ちゃんはと聞いてみたところ、雪の病室にいるらしい。


 藤ちゃんは小雪さんと楽しそうに喋っていて、打ち明けたいという気持ちがあった。藤ちゃんは小雪さんにも伝えないつもりでいるのかな。その光景を見ていたら手術中のランプが消え、先生が出てくる。それによって昼秋さんが息子はと聞いた。


「かなり危険な状況でしたが、無事に手術は成功しましたよ」


 その言葉で良かったと紗良と喜び合い、手術を終えた真昼くんが出てくる。本当は付き添いたくても、藤ちゃんが拗ねそうな気がして、病室に行くのはやめといた。

 小雪さんも病室へと向かったことで、藤ちゃんは私の手を握る。


「陽っちゃん、行かなくてよかった?」

「うん。藤ちゃん、小雪さんとちゃんと話せた?」

「うん。ちゃんと話せたよ。迂生のもう一つの病気も。お父さんがこの世からいなくなっても、小雪さんは迂生のもう一人のお母さんだから、困ったら連絡してって言ってくれた」


 ちゃんと伝えられたのならよかったと握り返して、夕哉さんがどうすると聞いてきた。そこで藤ちゃんが夕哉さんに頼み込む。


「夕哉、ある場所に連れてってほしいところがある」

「おう。んでどこだ?」



 Noveの本拠地内では、鯨波流史郎が殺されたことで、準備が着々と進んでいるようだった。本来なら鯨波流史郎に罪を着させるつもりだったらしい。なぜ鯨波流史郎を殺害したのか、まだ我には情報が入っていなかった。

 陽空は無事に夕哉のところで保護されたと夕佑から報告を受けている。


 我はこの檻から出ることは禁じられ、爆薬を製造していた。失敗をすれば鞭で叩かれ、特に目をつけられているのは我である。我はNoveにいた時期があるからこそ、監視が厳しくなっていた。

 作業を行っていたら、夕佑に呼ばれ。監視役が行けと合図をもらい手を止めて夕佑のところへと行く。夕佑は我の腕を掴み来いと作業場から離れた。


 監視カメラがないところで夕佑はスマホを取り出し、ある写真について聞かれる。


「この女性について覚えていることはある?」


 それは随分前の写真のようで拡大された女性を見て、思いあたる人物が一人存在した。そうだとしても我とその女性は深い関係性ではない。

 そうだとしても我が朝峰家と関わっていたのは、夕佑は知っているのだろうと理解した。


「その女性は灯里だ。顔を見ればわかるはずだが?」

「灯里はここで何を犯した?ここにいた時、灯里と親しかったのは淡。お前だろ?」


 夕佑は実際にどっちの味方なのか、まだ不明ではある。仮に翠たちの味方で聞いているのなら、確実に殺されるのは確実だ。それに我の名前をくれたのも灯里。

 灯里の子供、陽空を気にかけてそばにいたのも、灯里に救ってもらった恩を返していただけだ。灯里が自分の子を我に託すつもりはなかったんだろうが、灯里に言われている。陽空を守ってあげてほしいと。全力で守るつもりだったものの、我は再びここに来てしまった。すまない、灯里と思いながら打ち明ける。


「灯里は脱獄するために、獅子屋家の人間を殺めた。それは公にされず闇に葬られたことによって、警察は誰一人知らない。ただ一人除いては」

「その一人と言うのは?」

「我と灯里を保護してくれた人だ。名は知らん。そいつを殺害するつもりなのか?」

「いや。個人的に知りたかっただけだ。翠たちに伝えるつもりもない。淡、時が来たとき、淡の力が必要になる。それまで大人しくしておけ」


 夕佑は何を企んでいるのか分からずとも、翠や麗音の行動を見ておく必要があり、しばらくこの檻にいるつもりだ。

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