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1羽

 20XX年1月22日、東京都内で、交通事故が発生し、通学していた小学生2名が重症。運転していた男性は軽傷だったが、病院先で行方不明となった。

警察は男性の失踪を探るも、男性は見つからず、事故として幕は閉ざされた。



 あれから10年後……




  ピピッピピッとアラームが鳴り、手探りでアラームを消し、寝返りを打つ。私を呼ぶ母の声が聞こえ、起きてると返事をした。本当は学校に行きたくない気持ちがありながらも、身体を起こしてカーテンをあける。

朝陽の光が部屋を明るくし、今日もいい天気と思いながら、部屋を出てリビングに入った。


 父は新聞を読みながら、朝ご飯を食べており、三つ上の姉は携帯をいじりながら朝ご飯を食べている。母はせっせと三人分のお弁当を作っていた。


 私も席に座ってパンをかじりながら、朝のニュース番組をみる。靴の特集をしていて、可愛らしい靴やスニーカーを紹介していた。ただ私には履けそうにない靴ばかりで、もぐもぐと朝食を食べていたら、思わず箸を止めてしまう。

 なぜなら10年前、失踪したらしい人が遺体で発見されたらしい。それを観た父はリモコンをとり、別の番組に切り替えた。


 過去のことは両親も、姉も、思い出したくない思い出。私はその当初のことは、はっきり覚えてない。ただ唯一覚えているのは、一緒に登校していた子が、私の名前を叫んでいたこと。

 けれどその子は別の病院に搬送され、それきり会えていない。名前を忘れてしまっても、またどこかで会えると信じながら、朝食を頬張った。


 ご馳走様と食器を台所に置き、身支度をして、リュックを背負い、靴を履く。今日も一日、つまらない学校生活が始まると履き終えていると、父に呼ばれ、振り向く。

 父の職は警察官で特殊捜査課に勤務しており、日々事件を追っている。もしかして父はさっきの件をすでに知っていたんだろうか。


陽羽ひう、学校楽しいか?」


 父の言葉に思わずきょとんとしてしまい、てっきり事件に関することを教えてくれるのかと思った。それでも本音は言えず、楽しいよと相槌を打って、立ち上がる。

 そうかと父は私の発言で察してしまったのだろう。私が学校で孤立していることを。


「もし、困ったことがあったら言いなさい」

「うん。行ってきます」


 行ってらっしゃいと父に言われながら、学校へと向かう。電車に乗って二十分ぐらいにある学校、守城学園という学校で、幼稚園から大学までの一貫校だ。

 私は小学校から守城学園に通っており、姉はなぜか大学は守城大学ではなく、違う大学に通っている。


 改札口にカードをかざし、ホームを歩いていると視線を感じる。変な歩き方をして、たまにわざとぶつかってくる人もいるから、気をつけなきゃならない。

 そう思っている時に、前から走ってくる人がいて、避けなきゃと思っていたら、何もないところでつまづき、転びそうになった。


 やばいと麻痺側をカバーしようとした時、私を支えてくれる人がいる。顔を上げるとちょっと年上っぽい青年で黒髪に両耳にはお洒落なピアスをつけて、大丈夫というような表情で、私を見ていた。

 立たせてくれてお礼を言う前に、その人は改札のほうへと向かってしまう。


 お礼は言えなかったけれど、この世界には私みたいな人を助けてくれる人がいる。大抵な人は関わりたくない、というような目つきだから、どれだけ嬉しかったか。

 もしまた会えたら、ちゃんとお礼を言おう、そう決めて電車に乗り、守城学園へと向かった。


 電車を降りて、やっぱり今回も満員電車で、掴まるところもなかったから、余計に体力を消耗してしまう。帰りはそれほど混んでいないからいいも、朝が一番きつい。

 父に相談するべきかは、もう少し考えてからにしようと守城学園方面へと歩く。


 春になればここは桜並木となり、美しい道路であり、そして私が交通事故に遭った現場らしい。頭を強く打ってしまい、左麻痺の後遺症を持つことに。

 もしも事故なんて起きなければ、どんな人生を送っていたのだろうと、ふと思う時がある。もしなかったら、私を呼んでいたあの子の名前を忘れることはなかった。


 思い出したくてアルバムを見ても、あの子と一緒に写っている写真は一枚もなかったし、両親に聞いても私の知り合いの子じゃないと言うばかり。

 なぜ私に隠す必要があるのか、気になって、こっそり父が使用している部屋で探すも、交通事故の記録はどこにもなかった。


 私に見られたくない内容でもあったのかはわからない。その事故記録以外のことはちゃんとファイルに整頓されている。

 

 私は真実を知りたい。名前を忘れたあの子にもう一度だけでもいいから会えたら。それとも私より重症だったことで、もうこの世にはいないから、教えたとしても余計に辛くなるだけだと判断されちゃったのかもしれない。

 

 守城学園に到着し、朝から元気ありすぎの体育教師が生徒に向かって、大きくおはようと言い出す。私を見つけると陽羽、今日もファイトと体育教師に言われるものだから、余計に恥ずかしい。

 体育教師、伊宮透いみやとおるは元警察官でもあり、父の部下でもあったため、よく家に遊びに来てくれた人だ。学校内でも、名字ではなく下の名前で呼ぶから、女子には羨ましそうな目を向けられる。


 なんせ透は二十七歳の若手教師なのだから。透は三年前に起きた事件に巻き込まれたことで、警察官を退職し、教師の免許を持っていたことで、この学園の体育教師として勤務している。


 今日は体育の授業もあるから、何度も私のことを呼びそうで、保健室に篭りたい気分だよと、下駄箱に到着し、上履きに履き替え教室へ入る。

 

 教室は相変わらずの賑やかで、男子には透がいつも言うセリフを真似して揶揄う。それを聞き流しながら、席に座り、今日という一日が始まった。


 昼休み、中庭にあるベンチに座って、母が作ってくれたお弁当を頬張っていると、透が私の隣に座り、購買で買ったらしいパンを頬張る。私は透に聞いてみた。


「伊宮先生、お父さんに愚痴ったの?」

「なんでだ?」

「今日、お父さんが探り入れてきたから。私が教室で孤立してること、知ってるのって、伊宮先生ぐらいだし」

「何も伝えちゃいないよ。ただ陽羽が一人で抱え込んでることぐらい、凛太郎りんたろうさんは気づいてるんじゃないか?」


 そこまで見抜かれているとはなんとなく感じてはいるけれど、追求してこないのは、私がちゃんと話してくれるまで、待ってくれているってこと。

 伝えたとしても、転校してまた孤独になるなら、ここにいたほうがいいし、透がいるから、なかなか言い出せないのもある。箸を止めて考えていたら、透がこんなことを言い出した。


「もし、転校したいなら、直接、凛太郎さんに話しといてやるよ?それとも自分から言えそうか?」

「まだ言わないで。せっかくお父さんがずっと学費を支払ってくれたこの学校で、もう少し学びたいから」

「わかった。俺からは何も言わないけど、いじめとか受けていたら、隠さず俺に言えよな」


 私の頭を撫でて職員室に戻っていく透で、私は最後の卵焼きを頬張り、教室へと戻ることに。


 授業を終えて、下校をしている時だった。雨が降っていて、朝は天気よかったのにとリュックから折り畳み傘を取り出して、駅に向かっている途中のこと。

 ヒソヒソと話している声が聞こえ、また注目浴びちゃってると思ったら、違った。


 注目を浴びていたのは雨の中座って、しかも傷だらけの人がいたからだ。その人が今朝、私を救ってくれた人で、思わず私はその人の前に立ち、傘を差し出す。


「あの、大丈夫ですか?」


 呼びかけるとその人は、驚いた表情で見るも、平気と立ちあがろうとする。しかしバランスを崩してしまった。とにかく救急車とスマホを取ろうとしたら、その人の手が乗っかる。


「救急車はいい。風邪引くから、さっさと帰れ」

「あなたのほうが風邪ひきます。せめて屋根があるところで」


 そう言ってもこの人はきっと言うことを聞かない人だと思った。だから近くにあったコンビニに入り、ビニール傘を購入して、傘を広げて濡れないようにしてあげる。それから袋に入っている絆創膏も濡れないようにして渡した。

 いらないと言うも押し付けて、私は駅まで走る。


 なぜ助けたいという思いが込み上がったのか、不思議だと駅に到着して、息を整えた。風邪引かないといいなと思いながら、傘を畳み、リュックの外ポケットに傘を入れて、カードをかざし電車に乗る。

 

 帰り際に喧嘩でもしたのかなと考えてしまいながら、電車から見える景色を眺めた。また会えるわけじゃないけど、これでいいと、眺めていく。


 自宅へ入りリビングから甘い匂いがして、母のお手製の焼き菓子だとすぐわかった。母も元警察官で今は専業主婦をしつつ、たまに料理教室を開いている。

 まあ自宅は知られたくはないため、料理教室は別に存在していた。手洗いうがいをして、リビングに入ってみると、テーブルには多種多様の焼き菓子が出来上がっている。


「ただいま」

「おかえり、陽羽。これちょっと味見してくれる?」


 母が差し出す焼き菓子を頬張り、美味しいと母に伝える。


「美味しい、これ今度の料理教室で作るの?」

「そうよ。体験で子供たちが来るから、子供たちが作りやすいクッキーを作ってみたの。陽羽が美味しいって言うなら、このレシピを書いておかなくちゃ」


 そう言いながら母は材料を確認していて、私は自室へと入って私服に着替えた。リュックから教材を取り出し、宿題をしようとしたら、スマホがピコンとなる。

 誰だろうと確認したら、透からで雨降っていたが、無事家に帰れたと質問が来た。平気だよ、透。心配してくれてありがとうと返事をし、宿題をしていく。


 問題を解いていたら、インターホンが聞こえ、母が出るのだろうと思えば、陽羽、お願いと声が聞こえ、私が出ることに。誰だろうと、確認してみると、えっと思わず出してしまった。

 それは幼馴染の文倉紗良ふみくらさらで、守城学園を一緒に受けたものの、紗良は落ちてしまい、別の学園へと通っている。その学園が遠くにあるから引っ越した。


 急にどうしたんだろうと、玄関の扉を開けると、私に抱きついたのだ。困惑してしまい、紗良は泣いてしまって、とにかく中に入ってもらう。

 紗良が泣いていることを知った母は、部屋に連れて行きなさいと言われ、私の部屋に連れていく。


 母が紅茶とさっき作った焼き菓子を持ってきてくれて、ごゆっくりと紗良に言い、箱ティッシュを紗良に渡してあげた。ズビーっと鼻をかむ紗良で、泣いた理由を教えてもらう。


「まだニュースにはなってないんだけど、お父さんが撲殺されたの…」

「撲殺?」

「…うん。原因はまだ調査中らしいんだけど、少し違和感を感じるの」

「どうして?」


 紗良は鞄から一冊のファイルを取り出して、こう言われる。


「今日さ、ニュースで見たかな?10年前、失踪していたらしい人が、遺体で発見されたやつ。それを見て、もしかしてって、おとんの棚から持ってきたの。陽羽には絶対に見せるなって言われてたけど、おとんが殺された理由も、これに繋がってる気がして」


 紗良の父は探偵事務所を経営しており、紗良の母も探偵として動いている。これを読んだら、知りたかった子も知れるかもしれない。紅茶を一口飲んで、見せてもらうことに。

 曖昧な記憶も取り戻せるかもしれない。そう思って開いてみると、紗良となにこれとはもった。


「あれ?ファイル名は確かに陽羽に起きちゃった事故の記録なのに、中身が別になってる…。行く前はちゃんと事故に関する資料だった」

「お母さんが変えたとか?」

「ううん。おかんは、事務所に寝泊まりしてることが多いし、今日はおかんに一度も会ってない。誰がすり替えたんだろ…。あっ、バスでうたた寝してる時に…。だけど鞄の中をすり替えられるわけじゃないだろうし、んー」


 紗良が目を離している隙に、変えられるタイミングって一体と考えていたら、はっと思い出す。


「お兄ちゃんは?」

「えぇ、にいに帰って来てたのかな。海外にずっといるし、帰ってくる時はいつも連絡はくれるよ」


 紗良の兄じゃないとしたら、その時、紗良の自宅に侵入していた人がすり替えたってことだよね。侵入したわけはその事故を知られたくない理由が存在したとなればどうだろうか。


「紗良、ちょっと聞いてもいい?」

「ん?」

「私ともう一人事故に巻き込まれた子いたよね。名前が思い出せなくて」

「いたらしいけど、おとんの資料には陽羽の名前しかなかったよ。詳しくはわからないけど、陽羽と五歳上の子って昔、おとんが呟いてたな」


 あの交通事故の時、私はまだ七歳だった。五歳年上ってことは、今だと二十二歳の人って捉えればいいのかな。紗良に話した記憶はないというか、小学生になる直前に紗良は引っ越しちゃったし、多分話せていないのだろう。

 当初仲の良かった子たちに聞いたことがあるけれど、あまり覚えてない、ごめんねと言われちゃったしな。


「なんか、ごめんね。せっかく記憶戻せるかなって思ったのに」

「いいよ。記憶がなくても、今の時間を大切にしようって決めてるし、こうやって紗良が会いに来てくれて嬉しいよ」

「もし見つけたら、知らせる。守城学園どう?あたしの学園、まじでうるさい奴ばかりだけど、結構楽しいよ」

「…実はさ」


 私はなぜか口にしてしまった。それでも全て伝え終えるまで、紗良はなにも言わず、頷いてくれた。それがすごい救われて、次第に辛かった思いが涙へと変わる。

 手の甲で涙を拭き取っていたら、紗良がハグしてきて、辛かったねと言ってくれて、きっと母は廊下で聞いているのだろう。


「ならさ、あたしが通っている学園に来ない?」

「だけど、紗良が通ってる学園って遠いんじゃないの?ここから通うってなったら、体力的にも疲れちゃいそうで」

「そこはご両親に聞いてみなくちゃだけど、守城学園より、あたしが通っている学園は、めっちゃいいの。もし転校を考えているなら、あたしは歓迎するよ」


 ハグするのをやめた紗良は満面の笑みを浮かべ、少し考えてから知らせるねと伝えた。そこからは他愛ない話をして、紗良は帰る。

 帰ったことで母に言われてしまった。


「辛いのなら、引っ越して紗良ちゃんが通う学園に転校してもいいのよ」

「うん。でもね、まだもう少し、考えたい。いいかな?」

「陽羽の人生だもの。好きなほうを選びなさいね」


 そう言って母は夕飯の支度をしていき、私は夕飯ができるまで、自室で宿題を終わらせていった。



 陽羽の家を再度みて、あたしは近くに止めてもらっている車に乗った。そして隣に座っている人に渡されたファイルを返す。


「こんなことして、もし陽羽のお父さんにばれたらどうする気なの?」

「いずれ彼女は気づき始めるだろう。なぜ事故に巻き込まれたのか。彼女の人生を奪ってしまった罪滅ぼしのようなものだ」

「…ねえ、おとんが殺された訳って、陽羽の事故を事件性として、探りを入れたことによって、殺されたってことでいいんだよね?」

「だろうな。車を回せ」

 

 運転手に言う人は陽羽が探し続けている子の父親であり、そしてあたしにとっては叔父。叔父は煙草を吸いながら、ある仮説を立てた。


「十年前に失踪した者が遺体で発見されたとニュースで見たが、おそらく指示を出した奴が殺したか、敵組の誰かがやったのだろう。今は息子も組員の一員として動いてもらっているが、再び災いが起きる」

「陽羽が再び狙われるってこと?」

「そう私は読んでいる。接触は控えろと言っても、あいつは言うことを聞かない。自分が狙われていたのに、彼女と登校し続けたのだからな。車で送迎をしていたら、彼女の人生は変わっていた。自分のことだけを忘れてしまった彼女であっても、赤の他人として見守り続けている」


 組の息子として育てられてきたことで、敵組の標的にされていたのは、あたしも知ってる。それに陽羽のお父さんと話し合って、陽羽の前から姿を消した。

 それなのに、会っていただなんて馬鹿なの。接触禁止と言われてるのに、このこと知ったら、どうなるか。後で連絡してみようと、家に着くまで景色を眺めていった。



 あれからあの人の姿はなく、あれきり会ってはいなかった。たまたまあそこにいただけなのかなと、校門を出たら白いワゴン車が一台止まっており、車に寄りかかりながら煙草を吸っている人がいる。

 女子たちがイケメンと言いながら下校していき、私はすぐ誰なのかわかってしまった。


 私が立ち止まっていることに気づき、煙草を携帯灰皿に入れて、私の前に立つ。そしてしゃがみ込み、何と一歩下がった。少しして、立ち上がり来いと言われるものの、車に乗せられそうになって、ストップと言い出す。


「いきなり何!?」

「いいから、乗れ」

「嫌だっ」


 いいからと私を車に乗せようとしていたところ、何してると透が助けに入った。


「おい、陽羽に何してる?」


 私は透の後ろに隠れ、透は一応元警官だから、こういう対処には慣れている。そしたら、へえとその人は透を見下す。


「お前、元警官らしいけどさ。普段、生徒の名前を下で呼ぶ奴はいない。なあ、なんでだよ」

「君には関係のないことだろ。陽羽、一旦、校内へ入ってろ。終わったら家まで送るから。いいな?」


 この現状をどうしたらいいのかわからずとも、透の言う通りに学校へ戻ろうとしたら、待てと言われてしまう。透の手を離し、ポケットから出して名刺をくれた。

 HAN・RA・SHOES、オーダーメイド靴職人、暮地夕哉くれちゆうや店長。ワゴン車にも同じロゴマークがあった。


「この前のお礼がしたくて、ここに来た」

「どうして、この制服でわかったの?」

「昔、いとこに見せられたことがあったから。もし興味があったら店に来い。それじゃあ」


 暮地さんはそれを言うと車に乗り、エンジンをかけ行こうとしたから、待ってと言う。暮地さんはこっちを振り向いて、伝えた。


「この前、助けてくれたから、お礼は大丈夫です」


 そう伝えるも暮地さんは手を振って行ってしまわれ、だからさっきしゃがんで靴を見てたんだと知る。透にその名刺を奪われてしまい、返してよとぴょんぴょん飛ぶ。

 目を細めながら、怪しいと言いながらも、返してくれた。


「行くなら、俺も同行する。勝手に行くんじゃねえぞ」

「なんでよ、一人でも行けるもん」

「あのな、見ぬ知らぬの人に連れて行かれそうになったんだ。俺が止めていなければ、どうなっていたかわかってるだろ?一応、お前は凛太郎さんの娘だ。誘拐犯が現れてもおかしくはねえよ。今日は家まで送る。だから少し待ってろ。いいな」


 私の頭を撫でた後、職員室に一度戻る透で、もうっと私は透の車の近くで待つことに。


待っている間に暮地さんのお店を検索すると、これってとまじまじ見てしまった。

 なんとこの前、靴の特集をしている時に見た靴ばかりで、ここの店の靴なんだと知れる。そうは言っても私が履けるような靴を作ってくれるとしても、相当なお金が必要だよねと唾を飲み込む。


 もし私が履きたいものを作ってくれるなら嬉しいかもと、少し興味が湧いてきた。お待たせと透がやって来て、透の車で帰ることに。



 邪魔が入っていなければなと車を止め、店内に戻り、お帰りなさい店長と言われながら、あの子はとにやにや聞いてくる。


「うるせえ。仕事しろ」

「邪魔者が入らなければというような表情。どんまい、夕哉。それより、接触してること、陽羽ちゃんのご両親にばれたらやばいんじゃない?」

「今度は俺が必ず守り抜くって決めてんだ。だから昔のことは余計なこと言うんじゃねえぞ、姉貴」

「はいはい。お姉ちゃんは何も言いません。そうそう、紗良がね、最近おとんと接触してるらしいよ。紗良のおとんが殺害された理由を探ってるらしい。あんたも手伝ってあげなさいよ。こんな靴職人やってないでさ」


 うるせえと再び言いながら、エプロンをつけ、依頼の靴を作っていった。


 親父の仕事をやりつつ、靴が好きだから靴屋を経営している。仕事がない時は基本的にこの店で靴を作っているが、最近は靴を作れていなかった。

 なぜなら遠くで見守っていた陽羽と接触してしまったから。本当は遠くで見守っていたとしても、陽羽の姿を見て俺はずっと近くにいたこと。そして怪我しそうになって、思わず助けてしまった。

 

 助けた時、どうしてというような目で見られ、最初は俺のこと覚えてるのかと思ったら、案の定違くてほっとしている。傘をくれた日、俺のことは覚えていても、過去の俺の存在は消えていたこと。

 なら得意とする靴をプレゼントして、最後の思い出にしようと決めた。これ以上、陽羽を組の争いで巻き込みたくはねえから。


 靴を作っているとスマホが鳴り、誰かと思えば紗良で、陽羽と会ってるのとメッセージが来る。親父、余計なこと言ってそうだなと、YESという変なスタンプを送っといた。

 そしたら怒りスタンプが返って来て、あっかんべえのスタンプを送る。すると紗良がこんなことを吹っかけてきた。


 夕哉に言うべきじゃないかもしれない。けど陽羽が学校で孤立してるって言ってたよ。


 その言葉に、言い返せなくて、スマホをポケットにしまう。俺が全て陽羽の人生を奪ってしまったようなもので、当初は何度も親父に縋って謝りに行きたいと伝えても、事故として処理が行われたんだからな。

 俺が送迎を断り陽羽と一緒に通学したことで、敵組はそれを利用し、事故に見せかけられたと言われたからな。

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