ムラサキ龍と魔法使い
星の草原の東に、天まで届く山があったそうな。
その山に、紫の龍が住んでいたんだと。
ある日のこと、ムラサキ龍は昼寝をしていたんじゃが、
パチパチという音がしたので、ふと目を覚ました。
すると、赤いローブを纏った魔法使いが、
「やっと目を覚ましたか」と言いながら、龍の背中に乗ったそうな。
「なんだ、お前は」
ムラサキ龍は、魔法使いが誰なのか知らなかったため、振り落そうとした。
「なんだとは、なんだ。わしは、おまえの主人だぞ」
「お前など知らん」
ムラサキ龍は、なおも魔法使いを振り落とそうと体を動かしたが、
魔法使いは、びくともせんかった。
「主人の言うことが聞けんのか」
魔法使いは、そういうと、何やら呪文を唱えた。
ムラサキ龍は、その呪文を聞くと、顔を真っ青にした。
「お前は、もしかして、わしの主人か?」
「そうだと言うたろうが。いいか、お前は今日から、わたしのシモベじゃ」
「おお、今日から、お前が主人か」
「そうじゃ」
魔法使いは、不敵な笑みを浮かべていたそうな。
「これからは、わたしの言うことはずっと聞くのじゃ」
ムラサキ龍は、魔法使いの言葉に向けて、こう応えたそうな。
「今日はお前のシモベだが、明日はお前の言うことは聞かんぞ」
どうやら、魔法使いは、呪文を間違えてしまったようだ。
魔法を使う時は、時間指定も忘れてはならぬのじゃ。
魔法使いは「今日」しか、明言しなかったからのぅ。
うっかり、うっかり。