聖女ラーメン
「え~、何でラーメン屋を始めたかですって?それは・・・」
☆ルルアン王国
『サリーよ。聖女の地位にあることをいいことに、王太子と側近たちを籠絡し堕落させた罪、婚約破棄までさせた罪、重いぞ。ダンジョンの奥で発見された異界への門に投げ込め!世界追放だ!』
『ちょっと、掴まないでよ!』
あと、もうちょっとで、王国を牛耳れるところまで行ったけど、悪役令嬢にゾッコンになった大公殿下に捕まって、逆に断罪されたのよ。
そして、追放されて、日本で途方に暮れているところを、声を掛けられたのよ!
『困ったある。円安で、金稼げないある!本国に帰りたいけど、店の後始末出来ないあるよ!』
『そこの外人、同じ外人のよしみで、店をやってみないかあるよ?』
『ラーメンって何?』
「それで、お店を受け継いで、始めたってわけ。え、屋号の『聖女ラーメン』の由来?
それは、私が聖女だからねっ!脱聖女して、ラーメン屋を始めたんだからねっ」
「ふ、ふざけているなり!」
ワレは山中なり。有名なラーメンブロガーなり。ワレが判定すれば行列が出来るなり。
最近は、サラリーマンが、安易に脱サラしてやるラーメン屋が増えているなり。
しかし、脱聖女してのラーメン屋は、初めてなり!
ピンク髪の外人は初めてなり!
メニューは?壁に貼り付けてあるなり。
「何?「お兄ちゃん500円」とは、何だ!」
「え~、接客中は、お兄ちゃんと呼んであげる~」
ムムムム、ふざけているなり。
ワレが、天誅を食らわしてやる。
プログや、ヤーチューバで、ケチョンケチョンに正義の鉄槌を下してやるなり!
「店主、看板メニューを頼むなり!」
「は~い。チキン味ラーメンね!」
「な、何?まさかの市販の袋ラーメン!」
ふざけているなり!
減点99点なり。
「何故、チキン味ラーメンであるか!」
「ちょっと、清のラストエンペラーが最期に食べたいと言ったラーメンよ。トッピングはどーするのよ!」
「トッピング?チキン味ラーメンと言えば、卵なり!」
「はい!卵、1000円ね!有り難うなんだからね!」
1000円?もしかして、何か高級なものか?
「コンビニで買った温泉卵なんだからねっ!私が一生懸命に選んだのだからね!」
・・・ふざけているなり。
しかし、我は目を疑った。
「たまたま卵~たまたま卵、美味しく、美味しくな~~~れ!」
ピカッ!
卵が青い光に包まれたなり。
「エイッ」
ペチャ。
何だと。我の額で卵を割った!
「フフフフ、よしよしだからねっ」
額をなでてくれたなり!
そして、ラーメンに入れた。
我は泣いた。涙が頬を伝う。
「何というものを喰わしてくれたなり!」
加点99点なり!
「フフフフ、お食事中、サリーとお話しながら、食べるトッピングあるけど、どーすんのよ!」
「2000円なりか?我は払うなり!」
「有り難うだからねっ」
・・・・
「我は小学生の頃に、チャーシューを作ったなり!」
「キャー、すごい!」
「ガス代掛かって、ママンに叱られたなり!」
「かわいそー!」
「・・・隣に座って欲しいなり!」
「ごめんねっ、カウンターを通さないと、風営法に引っかかるのだからねっ!」
「分かったなり。サリーちゃんの事も聞きたいなり!」
「フフフ、あたしの夢は、ジコウってのを過ぎてから、テレビでガンガンに推されてCMに出ることなんだからね!」
「応援するなり!」
我は勘違いしていた。ラーメンは愛なり!
誰かと楽しくおしゃべりしながら食べるラーメンは美味しいなり!
我はプログや、ヤーチューブで彼女のことを宣伝した。
しかし、
>それは、メイド喫茶だろ!
>何歳か?どう見ても、未成年だろ!
>就労ビザは?
とかアンチコメがきたなり。
かまうものか。
ラーメンは講釈ではないなり!
楽しむためにあるなり!
「お兄ちゃん!今日も来てくれて、サリー嬉しい!」
「いつものチキン味ラーメンに、全トッピングなり!」
「キャー!お兄ちゃんありがと!5500円だからねっ!」
フォロワーは減った。
収益は減ったなり。
しかし、我は我の道を行く!
我の宣伝により、店は徐々に混み始めた。
「ごめんねっ二時間待ちなの~~~」
推しが羽ばたくのは嬉しいなり。
しかし、彼女の特別な存在になりたいなり!
我は決断したなり。
結婚を申し込むなり!
指輪と花束を持って、店に行ったなり。
ピーポー!ピーポー!
「ヒィ、ピーポ君が来ているなり!」
「取り逃がしました!自称ルルアン王国出身のサリー、逃亡中です!入管法違反の疑い濃厚です」
「また、変な外国人が・・・」
そ、そんな。
我は、花束と、指輪の箱を落としたなり。
☆山奥の峠道
「あれ、潰れたそば屋、また、開いているぞ!」
「いってみよう。聖女ソバ屋?!」
「いらっしゃいませなんだからね!」
「ヒィ、まさかのカップソバ、しかし、トッピング、「お兄ちゃん呼び」って何だ!」
潰れた居抜きの店舗が、突然、再開していたら、それは、もしかして、異世界人が入り込んでいるのかもしれない。
最後までお読み頂き有り難うございました。