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サギソウ  作者: 5月生まれ
1/1

人形と少女、LoveとLike

初めまして、5月生まれです。

今回はテーマを少し捻ってみました。

いかがでしょうか?

夢でしか会えない男女の物語というテーマ。

そんな世界を味わっていただけたらなと思います。

深夜、残業終りの帰り道。

弱弱しく照らす街灯に群がる虫の奏でる雑音が煩わしく足

早に駆ける一人の男。

その手の中には一体の人形があった。

三十路の男にそんなメルヘンな趣味はない。

捨てられていたものを拾っただけだ。


#1

翌朝、眠い目を擦り冷静に遅刻を悟る。

会社に体調不良で休む旨を連絡をした。

質素な朝食をとり、昼のニュース番組をつける。

お気に入りのカップに珈琲を注ぐ。

日常的な動作を行うにも昨夜見た夢の内容が頭をよぎってしまう。

何処か懐かしく、でも記憶にない、

そんな矛盾が最適解な曖昧な夢。

夢の始終、可憐な少女とずっと話していた。

春風の吹く丘の上の木の下に二人で腰掛けて。

顔も名前も知らないのに、話は怖いほど合う、

心が読まれていると錯覚する程に。

談笑の途中、少女はこう言った。

「ねぇ、貴方、人形拾ったでしょ」

恐怖より先に、興味が湧いた。

「なんで分かるの?」

少女は笑いながら言った。

「だって、私とこう、会えるのは人形を持った人だけなのよ。」

この日から夢の中でしか会えない少女との奇妙な関係が始まった。


#2

今日、いつもより早く布団に入ったのは長く彼女といたかったからかもしれない。

「こんばんは!」

少女の声が響く。

「今更なんだけどさ、名前って聞いてもいい?」

「私は小森そよ、小さい森のそよ風って書いて小森そよだよ!」

年相応の可愛らしい説明だった。

「後藤圭」

あの説明の仕方は三十路には少々キツい。

「ねぇ」

「なに?」

「現実の世界で俺と会ったことある?」

一日気になっていたことを訊いた。

「何で?」

「私が中学生の時に好きだった女の子にすごく似てるんだよね、君」

「え、そ、そうなんだー」

「もしかして、照れてる?」

照れてない!という彼女は照れていた。

茶番も一段落つき彼女は口を開く。

「そっかぁ、でも違うなぁ」

「じゃあ、夢の中で誰かと会うのは私で何人目?」

少しの間があり、

「一人目だよ、」

突然の耳打ちに動揺していると、

悪い笑みを浮かべて少女は、

「あれー?ときめいちゃったー?」

と垂れる。

台無しだなあと思いつつも真実を。

「うん。正直結構、」

「えっ、あ、そ、そうなんだ〜」

と紅潮されたのはかなりドキドキした。


#3

今日も彼女に会いに行く。

「ねえねえ、後藤さん」

語りかけてくる優しい声。

「何だ?」

「恋バナしない?」

私を見るは上目遣い、

これはずるい。

「まあいいけど」

我ながらチョロすぎる。

「彼女っていたことある?」

「あるよ、大学で2人、会社で1人」

「え、嘘でしょ〜」

その声はいつもの陽気さを欠いていた。

言葉を紡ぐようにして少女は続ける。

「可愛かったの?その子たち」

天然の笑い方ではない、完全に作られたものだった。

「みんな可愛かったよ、付き合った位だから」

「えー後藤さん面食いなのー」

ちげぇよと否定する私を見て口元に手をてて笑っていた。

きっと、何かの勘違いなのだろう。

彼女が私を想っているという考えは胸の奥底にしまった。


#4

あの日から話題はずっと恋バナだ。

何故なのか訊いたが曖昧な回答が返ってくるばかり、

まるで、何かを隠しているかのように。


#5

半月ほど出張があった。

必要最低限の荷物を鞄に詰めていた。

あれも持っていくか考えたが同期と相部屋だったことを思い出し、枕元に戻した。

二週間後、久しぶりに彼女と会う。

私が、久しぶりーと言うのを待たず、

抱きついてきた。

潤む瞳からは涙が零れ落ちていた。

号泣の理由を訊くと、こう並べる。

「だって、また捨てられたかと思ったの、

こんなに楽しかった毎日ももう終わりなのかなって思って、そう思うと毎日毎日苦しくて、」

何と慰めようか迷っていると突然、

そっとキスをされた。

驚く私を見ながらもう一度、

今度は大人のキスを。

そうして、彼女の涙腺が落ち着くまで抱き合った、お互いの体温を感じながら。


#6

隣には先程の大胆な行動を思い出し、紅潮する少女。

気まずさ故の静寂を裂くように、彼女が口を開く。

「あ、あの後藤さん、出来ればさっきのことは忘れて欲しいなー、なんて」

「はい、忘れます」

彼女の顔が明るくなっ、、、

「で、忘れられるようなものじゃないだろ」

ぷくっと頬を膨らませる彼女、威嚇のつもりなのだろうか。

「そよもすごいよなぁ、抱きついてきたと思ったら、キスもしてくるし、それも大人の方の、」

と言いかけた時、口が手で塞がれた。

「誘ってるの?襲っちゃうよ?」

形勢逆転。

想定外のカウンターに動揺していると、

いつもの悪い笑みを浮かべ、

「なーんてね、冗談だよ」

と、言われたところで夢から覚めた。


彼が去ったあとの木の下に響く叫び声。

「や、やっちゃったぁぁ、気付かれてないよね、、、?」

「絶対に隠し通さなきゃ、私が**だってこと、、、、」

春風にかき消された言葉は何か、彼女以外に知る者はいない。

ここで1話終わりです。

どうでしたでしょうか、、?

頭のキレる方ならもう、結末まで予想できちゃうんじゃないかなと不安になってきました笑。

因みにタイトルの由来ですが、花言葉で決めました。

'サギソウ'という花の花言葉は'夢でも貴方を想う'です。

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