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人形遣いの悪役令嬢 〜悪役なので、もちろん悪役をした分報酬はもらいます  作者: バッド
3章 組織を作る悪役令嬢

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94/128

94話 閑話につき

 ───夏に入る少し前に遡る。


 那月ヨミは執務室で忙しく働いていた。せっせと報告書を読んで、契約書は問題がないか確認してサイン。立ち並ぶ部下たちに指示を出していく。


「魔石の輸入が輸出を超過している貴族にアポイントメントをとって。マナタイトの有用性を示すための資料も忘れずに送付するんだ。魔石と比べるとどれだけコストが安くなるかを比較して検討させて購入させるように」


「畏まりました、ヨミ様。必ずや大口の取引を手に入れてきます」


 恭しく頭を下げると足早に下がる。雨屋家の分家の人だけど、弱い魔法ではなく営業で活躍する方が嬉しそうだ。


「こちらはマナ合金を使用した際の魔道具の生産コストになります。一読をお願いいたします」


「鍛冶職人から生体兵器の購入費用の見積もりが来ております」


「ふむ……これは、全体の相場を考慮してこちらでも計算。その結果と合わせて提出してください」


 畏まりましたと、やっぱり雨屋家の分家さんたちが意気揚々と下がっていく。


「食料品の購入費用が思いがけず高くなっております。区の食料品が徐々に値上りして、区民たちが不安を口にしているとのこと。ここまで大量の食料品が必要なのでしょうか?」


「和ちゃんが人の百倍食べるからね。それとシェルターの備蓄は空だし、必要なんだよ」


「なるほど……たしかにあの娘は尋常の食べっぷりではないですが、数万人分?」


「この間は、まずはお櫃を一杯食べてから食事をするって言ってたよ! 食べ終わったらお茶の代わりにお櫃でお茶漬け食べてたし!」


「はぁ……まぁ、良いでしょう。わかりました、そういうことにしておきます。あの娘が数万人分の一ヶ月の食料を食べたということで」


 コロニーのための食料品とは言えないので、和ちゃんのせいにします。でも、それで納得されるので恐るべき食いしんガール。裏の理由は疑問に思わないのが良い部下であることの一つだし。


「ママは3日に1度パーティーに行けば良いのね? 最低でも一ヶ月に一回出席すれば良いのかしら?」


「最低を確認する時点で、一ヶ月に一回しか出席しないつもりでしょ! でも、それでも良いよ。レアで希少感を出していく作戦に変更にしよう」


「そうね。私はパーティーでは滅多に会えないとなれば、皆は注目してくれるわ。決定ね。それじゃあ、ママはお総菜屋でコロッケを買ってくるわね」


 おっとりとした微笑みで、ママはいそいそと部屋を出ていく。今夜のご飯はコロッケかな。


 パーティー大嫌いなママは、お総菜屋さんとかでしか出会えなさそうである。まぁ、いっか。嫌なことはやる必要はないもんね。


「なぁ、ヨミ………パパとママの対応が違わないか? 俺のスケジュールは分刻みなんだが……」


 パパは手にしたスケジュール表を見て不思議そうに顔を青褪めさせている。厳しいスケジュール管理が納得いかない模様。


「石英お兄ちゃんが、魔石狩りに行って行方不明な分、パパに集中したの」


 なにせ瑪瑙ちゃんにTHEドゲザをして、天女を擁して魔物を退治しに行ったのだ。その際に雨屋家の大勢の分家を引き連れて。ブラボーリーダーに魔石を大量にプレゼントするため、荒々しい強面髭もじゃが山賊団を結成したように見えたけどね。


「おのれ、我が息子ながら仕事をしない男よ………。女に弱すぎる」


 ゴゴゴと不穏な空気を立ち昇らせて怒りの表情になる。苦笑を浮かべちゃうヨミちゃんだけど、石英は役に立っている。


「石英お兄ちゃんの仕事も大事だよ。魔物狩りで優秀な文官が手に入ったし」


「? どういう意味だヨミ? 魔物狩りで文官?」


 ヨミちゃんがサラサラと申請書にサインを入れながら、むふふと微笑むとパパが困惑顔で首をひねる。


「魔物狩りは大金を稼げる一大イベントだよ。それでも参加せずにヨミちゃんのそばで仕事をする人は文官としての自身の才能に自信があるからだよ。長期的に見て、文官として仕事をした方が良いと考えているんだ」


「あぁ、なるほどな。だから優秀な文官の可能性が高いということか。今は仕事もどんどん増えているから、それは良いことだ。……だが、俺は他の区で困窮している貴族に会う必要はあるのか?」


「大貴族の雨屋家当主がわざわざ会いに来る。それが重要なんだよ。相手は感動して雨屋区に移住してくれるかも。困窮しているということはその区の領主に重用されていないんだろうし、それなら領主は興味を持たずに移住も簡単に行くだろうし」


「はぁ………よく考えているなぁ。我が娘ながら感心してしまうよ」


「雨屋区はどんどん大きくなるからね! 能力が平均50くらいの貴族たちでも役に立つんだよ」


 フッとニヒルに微笑むとちっこい脚を組んで、ヨミちゃんは手にした資料をパシンと叩くのであった。


 そうして雨屋家はどんどん下から地盤を固めていくのである。


           ◇


 大忙しの執務は終えて、クタクタヨミちゃんはぽすんとベッドに横たわる。うーん、誰か実務経験のある能力の高い人たちを大量に雇用したいなぁ。


「ヨミお嬢様。頼んでいた機材が届いたとご連絡が来ました」


「あっ、ようやく来たんだ。機材が足りなくていまいち望んでいる性能が出せなかったから助かるよ」


 メイドさんが声をかけてくるので、喜んで起き上がる。コロニーからマナ感知の機材を持ち込んだのだ。マナが枯渇し始めていた『蒼き惑星』のマナ感知器は、この世界のマナ感知器とはレベルが違う。どれくらい違うかというと、虫眼鏡とマイクロ電子顕微鏡くらいに性能が違う。


 微細なマナも無駄にしないように作られた超高性能のマナ感知器は、きっとこの世界のマナの流れを観測できるだろう。


 きっとどこかに他の世界から流れ込んだマナが貯蔵されている場所があるはずなんだよね。予想としては………。まぁ、観測をはじめればわかるだろう。


「運ばれてきた機材を持ってきて。大変だとは思うけど壊さないようにそっと運んでね。あ、これおやつ代」


「すぐに運んできますのでお任せください」

「大量にあるのですが、慣れているので楽々です」

「今日のおやつはシフォンケーキにします」


 3人のメイドズに銀を渡すと、キラリと目を輝かせてスキップして荷物を取りにいった。


 ───で、戻ってきたわけだけど。


「なんでこんなにたくさんあるの?」


 なぜか20箱近い段ボール箱がヨミちゃんの部屋に運ばれてきた。予想では多くても3箱くらいだと思ってたんだけど?


「ですが運ばれてきた物はこれだけありましたよ?」


「ほむ……えーっと、なになに? 服? 漫画本? ぬいぐるみ? なにこれ? ヨミちゃんの服とかも持ってきてくれたのかな」


 なんか段ボール箱にマジックで服とか漫画本とか書かれてる。気を利かせてくれたのかなぁ。………うん?


 壊れ物と貼られたシールの段ボール箱。なぜかガタゴト動いていた。なにか息遣いも聞こえてくるよ?


「………なにかいるのかな?」


 ジト目で段ボール箱に手をかける。と開く前に中からなにかが飛び出してきた。


「あだっ」


 勢いよく飛び出してきたので、顎にゴツンとぶつかって後ろに倒れ込んじゃう。顎が痛いよ!


「ふぉぉぉー、リズ参上! リストラ反対、フェニックスリズは灰の中から蘇ってきた!」


 飛び出してきたのはリズおねぇちゃんだった。おさげを尻尾のようにぶんぶん振って、興奮気味に鼻をふんすふんすと鳴らしての仁王立ちだ。ちんまりとした身体で腰に手を当てて立つその姿は可愛らしい。


「アタタタ、リズおねぇちゃん、どうしたの? あっちの仕事は?」


「大量のマナタイトが手に入ったから数年は大丈夫! ならばリズは妹の手伝いをするべくこの地に来た! リズも地球で仕事をしたいし、美味しいご飯を食べたい! お饅頭貰ってない!」


 ヨミちゃんの実姉の那月リズである。優れたサイキッカーであり、コロニーのエンジニアだったのに、魔石を大量に渡したから暇ができたらしい。


「リズはここで頑張る! 妹の部屋はここ?」


 早くも段ボール箱を開いて荷解きを始めるリズおねぇちゃん。相変わらずの唯我独尊の人だ。


「えーっ、リズおねぇちゃんが来たら危ない……というわけでもないかな? あ、おやつ持ってきてください。なんか美味しい物を買ってきてね。あ、これお金です。お釣りはお駄賃となります」


「はい! すぐに買ってきます!」


 小判を渡すとメイドズは喜色満面で再び部屋を飛び出す。


「次は私たちが仕事をします! 貴女たちばかりずるいです」

「そうはいきません、私たちが頼まれたんですから」

「美味しいケーキ屋リストは我らの方が上です」

「血路をひらけー!」


 部屋の外で他のメイドズたちが立ちはだかり、ガスガスと戦闘音がしてくるけど、気にしないことにするかな。


 ふんふんふーんと鼻歌を歌いご機嫌なリズおねぇちゃんは、勝手に本棚に漫画本を並べて、服をタンスに仕舞っていく。


「一緒に住む。良いよね?」


 でも、ピタリと動きを止めると少し不安そうに聞いてくるので、優しい笑顔で頷き返す。


「うん、もちろんだよ。ヨミちゃんも手伝うね!」


 本来の歴史では、リズおねぇちゃんはヨミちゃんと一緒に死んでいたのだ。それに変わった歴史では地球にヨミちゃんが侵入して暫く経つ。不安だったのだろう。


「良かった。リズは最強のサイキッカーだからきっと役に立つ。妹の護衛もできる!」


 花咲くように微笑むと飛び込んでくる。勢い余って二人でコロコロと床を転がり、顔を見合わせてクスリと笑う。


 ヨミちゃんは本来の『蒼き惑星』のヨミちゃんではないし、リズは本当は死んでいた。その歴史を変えて奇跡の再会をしたのだと、改めて実感する。


 存在が融合したヨミちゃんは感慨深く、ホロリとしちゃう。きっと妹から連絡がないので不安に思い、心配をしていたのだろう。リズおねぇちゃんは優しい人なのだ。


「これからよろしくね、リズおねぇちゃん! サイキッカーとしても頼りにしてるよ」


「うん、これからはリズに任せる! 頼りにする!」


 二人でクスクスと笑い合って、キャッキャッとはしゃぐ。そうして、リズおねぇちゃんは一緒に住むことになったのであった。


 この後、おやつを食べたリズおねぇちゃんが美味しさに仰天したり、帰宅した瑪瑙ちゃんが私も一緒の部屋に住むと騒いで、結局リズおねぇちゃんは自室を用意してもらったりと色々とあったけど。


 ますますヨミちゃんの周りは騒がしく楽しくなるのでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] この色んな人に支持を飛ばして儲けてるヨミちゃんってのが当主なのかな?(すっとぼけ
[良い点]  やっぱりヨミちゃんの中の人はかなり優秀だったのが伝わる貴族経営のハツラツっぷり(・Д・)元の世界では妹の為にプロゲーマーとして早くから仕事してたけど地頭が良くなければ「現実と見まがうVR…
[一言] 元ネタのリズが嫌いなんでちょっとこの展開はキツイ‥
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