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人形遣いの悪役令嬢 〜悪役なので、もちろん悪役をした分報酬はもらいます  作者: バッド
3章 組織を作る悪役令嬢

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76話 妨害

 ───時間はすこしだけ巻き戻る。


 宇宙にぽつんと待機している艦隊があった。巡洋艦3隻が那月宇宙基地へと向かう最短ルートに展開をしているのだった。


 戦艦内で大国おおくに大地だいちは貨物室にてパイロットスーツを着込み、薄笑いで立っていた。目の前には機動兵器が鎮座しており、メカニックたちが調整を続けている。


 威圧感を与える獅子のような黄金の機体。二本足で立っている獅子のシルエット。装甲には曇りもなく、人の顔が映し出される程だ。マシンガンにもライフルにも使えるスマートライフルを片手に持ち、腰には日本刀がさしてある。背部には巨大な2枚のウイングバインダーを取り付けてあり、高加速を可能とする巨大なバーニアが搭載されている。


 大国大地専用機である『虎徹』だ。今回の作戦において用意した最新型の機体である。


「那月ヨミ……愚かな少女だ、そうは思わないか、彦兵衛?」


「そうですね、大地様。彼女は強引に物事を進めすぎです。高転びするタイプと言いますか。自身の力と正論を信じすぎて反発を恐れていない。古代に存在した日本という国を支配する寸前まで近づいた織田信長といった存在と同じでしょう」


「とすると、私は明智光秀といったところか、だが、私は3日天下にはならない。那月ヨミを処理したあとに、那月宇宙基地を制圧する準備はできているし、政界への根回しも父上が行っているしな」


 懐刀である細目の少年が、肩をすくめて虎徹を見上げる。彦兵衛の言葉にフンと鼻で笑う。彦兵衛の言葉のとおりだろう。那月ヨミという存在は才能がありすぎた。


 大地自身もその才能については認めている。だが、その溢れすぎる才能に周りはついていけない。特に現状を良しとする者たちにとっては害悪だ。


「しかし、大丈夫でしょうか? かの才媛にしかテレポートポータルの調整はできないという噂です。いえ、恐らくは事実でしょう。ここで彼女を排除すると、地球侵入作戦に支障が出るのではありませんかね?」


「少しは遅れをとるだろう。だが、テレポートポータルはほとんど調整は終わっていると聞く。問題はあるまい」


 テレポートポータル。稀代の天才那月ヨミが作り上げた空間に狭間を作り上げて、瞬間移動できる装置である。サイキッカーでもほんの一握り、しかも個人でしか使えず数十メートルという短距離でしかなかった瞬間移動を、万人に使えるように作り上げた超能力とマナ、科学技術を組み合わせた空前絶後の機械。


 『念動障壁』に覆われて侵入不可能であり、その内部に大量のマナを内包しているだろう地球に侵入するための奇跡だ。


 那月ヨミにしか扱えないとはいうが、所詮は科学技術の塊だ。優秀なる科学者に任せれば、最終調整くらいはできるだろう。


「所詮、機械だ。皆は大袈裟にしすぎだ彦兵衛。それよりもこの作戦においてサイキッカーがマナを運び、人類の救世主となることが重要だ。歴史に残る偉業を我らはなし得ねばならん」


「大国二世と呼ばれることもなくなりますしね、大地様?」

 

 片目を瞑り、からかうように言う彦兵衛に、多少苛立ちを持つが、寛容に肩をすくめるに留める。


「父上は優秀な政治家だからな。だが、いつまでも二世だという呼び名で呼ばれることなど、私の矜持が許さんよ」


 彦兵衛は大地の言葉に苦笑いを返すだけだ。大地の父親は絶妙に各勢力を纏め上げて、トップである那月一門に近づく勢力を持つに至った政治の天才である。那月ヨミがいなければ、今頃はコロニー連合のトップ勢力となっていてもおかしくなかった。


 対して、大国大地は優秀ではあるが、あくまでも優秀というレベルであり、天才たる父親には敵わない。周りの人間は揶揄も込めて、大地を二世と呼んでいた。大地もそのことを理解しており、傲慢さで劣等感を覆い隠し、無理な行動で結果を出そうとしている。


「那月ヨミは輸送艦での移動を止めて、姉が博物館から持ち出した機動兵器ラクタカーラサファイアで移動しているようです。最短ルートを移動しているので、こちらの襲撃ポイントへとそろそろ来るはずです」


「ふむ………輸送艦ならば簡単に片付くと考えていたのだが、そこまで油断はしていなかったか。だが、それも想定内だ。これだけの機動兵器による襲撃には耐えられまいよ」


「輸送艦には無人機体他何機かが搭載されていたので、どちらにしても襲撃は予想していたと思います」


「ふっ、数機程度なら撃退できると考えていたのだろうが、こちらは私自身も襲撃に加わるし、充分な戦力を保持している。那月ヨミも最後に読み間違えたということだ」


 床を蹴ると、無重力状態であるために身体が浮き、大地は虎徹のコックピットに向かう。その表情には笑みが浮いており、勝利を確信している様子だ。


 彦兵衛も後に続き、申し訳なさそうに顔を顰める。


「大地様。申し訳ありませんが、開発中のガンビットは用意できませんでした。テレパシーで動かす誘導兵器は今の技術では難しい状況なのでして」


「仕方があるまいよ。それにこれだけの数を揃えている、戦力としては充分だ。ラクタカーラサファイアとの技術の差は数で埋めることにしよう」


 椅子に座り、ヘルメットをかぶりバイザーを下ろす。新型とはいっても、大戦時の技術とは格差がある。しかし、大地自身が設計に加わった虎徹の性能はラクタカーラサファイアに負けないと自負していた。


 その自信ある態度に彦兵衛も安心したと頷き、武器ハンガーへと指を向ける。


「前線を務める大地様たち専用に、強装弾を用意しました。サイキックへの同調性が高い純度の高いマナタイト製です。これならば大戦時の機体の持つ装甲も問題なく貫けるでしょう」


「助かる。これで飽和攻撃を仕掛ければ、いかに那月ヨミの大戦時の性能の高い機体といえど、ひとたまりもあるまい」


「さすがに数を揃えることは難しく、大地様たちの分しかありません。赤色のマガジンを持っていってください。僕たちは巡洋艦の護衛に回ります。青色のマガジンを使いますので、持っていくマガジンは間違えないでください」


 武器ハンガーに並ぶマガジン。赤色と青色のマガジンがずらりと並んでいる。


「わかった。苦労をかけるな、彦兵衛。まぁ、お前らの出番はあるまい。後ろで私の勇姿を眺めているが良いだろう」


「期待しております。では、ご武運を」


 敬礼をすると、彦兵衛は隣に鎮座している機体へと乗り込むために飛んでいく。


 大地もコンソールを叩き、ハッチを閉じる。モニターに光りが灯り、薄笑いを浮かべる大地の顔を照らし出す。


「貨物ハッチを開け。出撃する」


 レバーを握り締めて、虎徹を操作する。貨物ハッチが開き、漆黒の世界が映し出される。スラスターを吹かせて虎徹が出撃し、後に部下たちも続く。


 湯水のように資金を使い、優れた技術者のもと、希少なる素材を集めて作り上げた機体たちだ。この機体であれば、大昔の機体などは相手にならないと自信を持っていえるだろう。


 マナドライブの光りが機体の進むあとに残り、白銀の装甲を持つ量産機『メイナカータ』たち各機が訓練通りに展開をする。その戸惑うことのない行動は練度の高さを示していた。


 宇宙に並ぶその勇姿に、大地は絶対の自信を持ってスマートライフルを構える。レーダーに高速で接近する輝点が映し出されて、会敵が近いと心が荒ぶる。


「私が、私こそがこの世界を導き、救世主となり崇められる存在となる。この大国大地が! 歴史に残る男となるのだ!」

 

 無意識に己の願望を口にして、逸る心を抑えてレバーを強く握り締めて───眩しい光に視界が覆われた。


『この世界はこのままではバッドエンドに向かいます』


「な、なんだ?」


 コックピットにいるはずなのに、なぜか大地は白い空間にいた。白い空間は光により作られたかのように眩しく輝いており、その盲目になる程の強い光に目を眇めて、動揺で顔を歪める。


『このままですとバッドエンドに向かいます』


 どこかで聞いたような男の声が囁くように聞こえてくる。だが、思い出せない。


『エンディングを目指してください』


「何を言っている? 誰が言っている? エンディングとは?」


 わからないが、わかっている。意識の狭間にある無意識の領域ではわかっている。だが、意味がわからない。形にならない。


「なにかはわからないが、私に任せておけ! 私こそが世界を統べる者。安心するが良い!」


 だが、自分は大国大地なのだ。何事も超えることのできる力を持っている。


『───何度繰り返しても駄目ですか。ですが今回はようやく───』


 大地の叫びに反応することなく、呟くように男の声は言葉を重ねて、消えていく。その言葉に含まれた大地への諦めに、憤慨し追求しようとした瞬間──再び光に視界が覆われる。


 その強烈な輝きに目を瞑り──。


「───大国様、大国様。通信は届いておりますでしょうか?」


 気付いたときには、元のコックピットに座っていた。部下からの通信が入ってきており、慌てて通信を開く。


「あ、あぁ、大丈夫だ……。いったいなにが?」


 周りを見るが、機動兵器の微かな駆動音以外は静かなもので、先程の出来事は白昼夢かと戸惑う。


「大国様、那月ヨミの機体がそろそろ射程内に入ります」


「そうだな。それでは最後通牒といくか」


 気のせいであったのだ。疲れているのかもしれない。バッドエンド? よくわからないが、那月ヨミを殺せば、全ては自身のものとなるのだ。


 通信を迫る機体へと向けるとスイッチを入れる。


『那月嬢。大変申し訳ないが、君の事業はこの私が受け継ごうと思う』


 モニターには戦闘機にしては大きすぎる機体が漆黒の空間を貫いて飛行してきている。


『大国君だね。まさか大国君自身が襲撃に加わるなんて………いや、考えていたのか。なるほど』


 愉快そうな少女の声が聞こえてくるが、その言葉はというと戸惑う声音だった。学校でも思ったが、いつもの冷酷な人を拒絶する声音ではなく、楽しげな可愛らしい少女の声に、僅かに不信を持つ。


『まぁ、良いや。それじゃさようなら、大国君。君がここで死ねば、サイキッカーたちの動きも静かになるよね』


「罠だと知っていて、ルートを変えることなく来たのか? その傲慢さが貴様を死に追いやるのだ、那月ヨミ!」


 その言葉の意味を悟り、カチンときて、激昂する。罠だと気づいていても、踏み抜くその傲慢さに。


「さようならだ、那月ヨミ。各機、攻撃を開始せよ!」


 指示を下し、自身も虎徹を操作しようとし───強烈なビームが飛来すると、部下の機体に命中し、一撃で爆散するのであった。

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― 新着の感想 ―
グロウの砲撃で全員一撃である
[一言] 無計画なアホだというのは伝わってきました!
[一言] しょ、少佐、武器が違います。あの武器は自分は見ていません
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