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人形遣いの悪役令嬢 〜悪役なので、もちろん悪役をした分報酬はもらいます  作者: バッド
5章 悪役の報酬を求める悪役令嬢

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119話 敵の目的につき

「那月ヨミ……。その身体はいったい……貴様はお」


「ヨミちゃんぱーんち!」


 大国の口に小鍋で焼けていたお肉を放り投げる。ストライクと上手く口に入って、目を白黒させる大国。


 なんか余計なことを口にしようとしたでしょう。


「元は大人な絶世の美女と言いたかったんでしょ! でも、ヨミちゃんは将来性抜群だから! 来年辺りにはボンキュッバンな絶世の美女になる予定です」


 確固たる信念をもって、ふんすと鼻を鳴らす。もはやそこに疑問はない。間違いない、決定事項だ。


「そ、そうか………まぁ、たしかに貴様の正体は誰も知らなかった。元の姿がそれでもおかしくない、か。し、知らなかったか……?」


 肉を咀嚼しながら、フムと顎に手を当てる大国。なんだか頭を押さえてもいるから、記憶に混濁が発生しているのだろう。


 ランピーチは前の世界では正体はナイショだった。とはいえ、企業を通じて調べようと思えば、すぐにわかる正体だったけどね。まぁ、そこまでやる人はいなかった。美少女キャラならともかく、おっさんキャラをプレイしてたからね。興味を持つわけがない。


 まぁ、正体のことなんかどうでも良い。それよりも明日のことを考えないとね。


「というわけで、ヨミちゃんたちの秘密を瑪瑙ちゃんたちにも説明します」


 転生組ではない二人と一匹へと真面目な顔で向き合う。そして、これまでのことを語り始める。


 自分たちが転生者であること。なぜ転生したか。そして、この世界に何が起こっているのかを。


「そ、そうだったんだ……前に聞いたから、とっくに知ってゲフンゲフン、お、オドロイター」


「もぐもぐ……そんな大変なことがあったんだぁ、明らかに変だったから驚きは、お、オドロイター。あ、このふぐ刺しもう十人前くださぁい」


「ヒャンヒャンッ」


 瑪瑙ちゃん、和ちゃん、平君がそれぞれとっても驚いて、ヨミちゃんを見てくる。約一名はメニューを見ていたけど。駄目だよ、和ちゃん、ふぐ刺しは一枚ずつ食べること。複数枚を纏めて食べると味がわからないでしょ。


「でも、転生者なヨミちゃんは来年もっとちっこく可愛くなっているかもしれないよ?」


「まさかそんなわけないよ。そろそろ胸あたりがきつくなっているような気もするようなしないような気もするし」


 瑪瑙ちゃんがヨミちゃんの頭を優しく撫でて言ってくるけど、なんでヨミちゃんがちっこくなるわけ。


『まぁ、たしかに来年辺りは小人のように小さくなっているかもしれませんの』


 頭の上に座る月ちゃんが不穏なことを言って来るんだけど。どして?


『………予想外でしたが存在が消滅しかけているのかもです。段々と若返っていることに気づきませんでしたか? この世界に転生した時から段々と背丈が小さくなっているでしょう? 誰も不思議に思わないように意識操作しておりましたが、ヨミ自身は変だと思ってませんでしたの?』


「えぇっ! たしかに瑪瑙ちゃんと身長に差が開いているなぁとは思ってたけど、それって瑪瑙ちゃんが成長していたからじゃないの!?」


『廃墟ビルのことを思い出してくださいませ。あの時は瑪瑙ちゃんと同じ背丈でしたわよ? 瑪瑙ちゃんを抱きしめて外に出た時は抱えられたでしょう?』


「そ、そういえばそうだった。えぇ〜、サリーちゃんと同じくらいの身長になってるよ! 8歳と同じ背丈だよ!」


 はわわわと慌てちゃう。なんでこんなことになっているわけ? 瑪瑙ちゃんとかがちっちゃくなってるねと言ってきたけど、ただの冗談かと思ってたよ。


 たしかになんか変だなぁとは思ってたよ。毎日可愛くなっていると思ってました。まさか若返っているとはね。


「なにか原因を知っているでしょ! なんで若返っているの?」


『はい、知っておりますの。恐らくは妾のやったことが原因だと思われます。たぶん無理矢理合わせたのがいけなかったのでしょう。でも、それも上手くすれば直ります。大国君との話を続けましょう』


 すっとぼける月ちゃん。ヌググと歯噛みしちゃうけど、月ちゃんは答えるつもりはなさそうだ。顔を手で覆い丸まって、亀の子状態です。


 若返っていくこの身体。どんどんちっこくなってたのか。え、来年辺りに赤ちゃんになっているの? 無理矢理合わせたって、どういうこと?


『ほらほら、ハリーハリー、伊崎がどこにいるかがわかったのです。気を取り直しましょう』


「了解。後で教えてね!」


『大丈夫です、良きエンディングに至れば全て解決、円満退職、ハッピーエンドで解決しますので』


 良きエンディングとかからかってくる月ちゃんは相変わらず悪戯っ子だ。そして秘密主義だ。ヨミちゃんに言わないことがあるんだろうけど、教えるつもりはないらしい。


「それじゃ、秘密も共有したことだし、これからの作戦を話したいと思います」


「作戦? 話を聞く予定ではあったが、作戦?」


 大国が首を傾げるが、そうなのだ、作戦なのだ。月ちゃんが耳元でこっそりと告げてくる作戦。ヨミちゃんも賛成です。


「うん、さっくりというと、天照家を襲撃しよう。襲撃理由は鏡花さんを捕まえるためです」


「はぁ? アホバカじゃないの、そんなの天照家を敵に回すどころか、その勢力も合わせて敵にするのよ」


 重川ちゃんがテーブルを叩いて、他のメンツも同様に顔を顰めて反対っぽい。


「反対するのは良いけど、この先、ろくでもない未来しかないと思うよ? 鏡花さんはきっとトラムの『次元動力炉ディメンションエンジン』に侵入する手段を探しているはず。そして、それまでの時間はないと思うんだ」


「ふむ………各家門の承認が必要な扉があるのだから無理だと考えるのは愚かなことか。……たしかに鏡花を放置しておくと厄介なことになりそうだ。私は話に乗っかろうじゃないか。そこまで言うなら、戦力にあてがあるのだろう?」


「皆との友情、勝利、お金があれば勝てると思います。那月ファンドは常に投資家を求めているよ」


「どさくさ紛れに金を求めないでよ。……はぁ〜仕方ないわね。私も話に乗って良いわよ。嫌な予感しかないしね」


「よみたんの言う事なら、俺は大賛成」


「くくく、選ばれし戦士たちが強大な敵に立ち向かう。僕も乗ったぜ!」


「もちろん、私もね! 踊って手伝うよ!」


「なんだかよくわからないけど、私も頑張るよぉ〜」


「ニッシッシ。仕方ない。あたしも手伝うよ〜」


「ヒャンヒャンッ」


 全員が賛成してくれるので安心だ。それぞれ思惑はあるだろうけど、そんなことはいつもの事なので問題はない。


「鏡花さんは油断している。大貴族の庇護下にあれば、隠れ場所がバレても大丈夫だと考えているんだろうね」


「だけど、鏡花さんが天照家の屋敷に隠れているとは限らないわよ? 研究所ならいくつもあるし、地道に探すわけ?」


「それじゃ情報集めだね〜。あたしは役に立てると思うよ〜」


 重川さんが難しそうな顔になり、ちょこちゃんが得意げに親指を立てる。たしかに鏡花さんがどこに隠れているのか探すのは大変そうだ。たぶん最近新技術を開発し始めている場所だとは思うんだけど。


『そんなことはする必要はありませんわよ? 伊崎の場所を探すなんて時間がかかってしまいます』


「ん? ならどうすれば良いの?」


 月ちゃんが呆れた声で足をプラプラと振る。たしかに鏡花を探すのは場所が限定されても難しそうだ。でも他に方法があるわけ?


『ちょっと身体を貸してくださいませ』


「はぁい」


 ヨミちゃんと再び身体を入れ替える。入れ替わった月ちゃんは余裕の笑みで箸を振る。


「鏡花さんを探す必要などありません。天照家のある施設を襲撃しましょう」


「ある施設?」


「はい。鏡花さんが絶対に姿を現す場所です」


 大国へと月ちゃんはニコリと怪しげに微笑む。美幼女の微笑みにメロメロとなるかと思いきや、嫌そうな顔になる大国。


「その施設とは……どこのことだ? 本家の屋敷か? 本家を襲撃すると大変な騒ぎになるぞ?」


「それでは鏡花さんが姿を現すことはありませんの。本家襲撃なんかする必要はないと思いませんか?」


「それじゃどこに襲撃を仕掛けるわけ? まさか学園? それとも研究所?」


 重川ちゃんが重要施設を口にするけどそこではないと、月ちゃんは薄っすらと笑みを作る。


「もちろん、天照家の地下にある『次元動力炉ディメンションエンジン』に繋がる扉ですわ。指名手配犯の鏡花さんが侵入しようとしていると理由をつけます」


「な!? 鏡花を捕まえるために私たちが『次元動力炉ディメンションエンジン』に襲撃を仕掛けると言うわけか?」


「そのとおりですの。どうせ扉を開けることは不可能。ですが、鏡花さんはそれを知りません。しかも各家門の子息が襲撃を仕掛ければ、扉を開ける方法がわかったと考えて慌てて姿を現すはずですの」


 大国の言葉に、ヘラリと答える月ちゃん。


「それって、邪神の復活を防ぐために、邪神の復活をするようなものじゃない。めちゃくちゃだわっ!」


「あくまでもふりですよ、ふり。相手はわかりませんので、幼女に油揚げをかっさらわれると焦ると思いますよ?」


 ぽすんと手を合わせて、小首を傾げちゃう月ちゃんです。純粋なるその笑みは、誰もが見惚れてしまうので、ナイスアイデアと皆は大賛成だ。大賛成のはずなのに、なぜかビミョーな顔だけど。


「……那月ヨミ………。元はランピーチ……。えげつない方法を考えるのね………。味方にすると頼りになるけど、鏡花が可哀想な気もするわ」


「あぁ、えげつない作戦を考えるヨミたんも可愛いよ」


「鏡花は姿を現すしか選択肢はないわけか。くくく

復讐に燃える僕が高笑いして、ザマァと鏡花に告げる。いいねいいね」


 重川ちゃんはジト目になり、九郎君、御雷君は別のことを考えているが、どちらにしても反対意見はない模様。


 月ちゃんの言うとおりに、鏡花に逃げ場はない。ヨミちゃんに相応しい作戦だと言えるだろう。


「それじゃいつ襲撃するの? バレたら大変だよ?」


「準備に時間はかけられないよね。できるだけ早くしないと」


「ヒャンッ」


 瑪瑙ちゃんたちの問いに、パチリとウィンクを返す。


「では、次の土曜日としましょう。扉に続く通路を選定しておいてくださいませ。頼みましたよ、重川さん、ちょこちゃん楽しみましたよ。おーほっほですの」


 高笑いをしちゃう月ちゃんでした。それじゃ、ラクタカーラの部隊も連れて一斉に攻撃を仕掛けるかな。


「早すぎるだろっ! ほとんど戦力を集められないぞ!」


「頑張って集めてくださいませ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] おっさんの中の人すら疑わないといけない世界、業が深すぎだろうw
[一言] 小説の欠点ですが、主人公の変化とかわかりにくいですよね。 今回の指摘でそういえば最初は同サイズだったなってやっとなりました。
[一言] スパイには誤情報を掴ませるのは基本だよね!
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