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人形遣いの悪役令嬢 〜悪役なので、もちろん悪役をした分報酬はもらいます  作者: バッド
4章 旅行する悪役令嬢

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104話 カジノにつき

 宝箱のようだ。カジノというものはお客にとっての宝箱。箱の中には財宝があるか、猫が住んでるか、ミミックが擬態しているかわからない。それがカジノという宝箱なのだ。by那月ヨミ。


「ヨミちゃん語録。メモメモ」


「一巻分溜まったら販売しようね」


 ヨミちゃんポエムを聞いて、サッとメモ帳を取り出す瑪瑙ちゃん。カリカリと書いていくので、一巻分発売のためにも、どんどんポエムを考えないといけないね。


「うわぁ、ツッコミ不在の漫才だよ、うっしっし」


 なぜかヨミちゃんと瑪瑙ちゃんの掛け合いを見て、ちょこちゃんが可笑しそうにケラケラと笑うけど、何かおかしいところあったかな?


「ふわぁ、初めてカジノに来たのです。リーナおねーちゃん、お星さまがキラキラなのです」


「サリーの言葉はいつも可愛らしいわ。もぉ〜、このこの〜」


 サリーちゃんの無邪気な言葉に、リーナちゃんが相好を崩して抱きしめる。妹にメロメロらしい。


「あっはっは、なんか姉妹合わせてそっくりさんみたい。ひー、ひーっ、お腹が苦しー」


 ヨミちゃんたちとサリーちゃんたちの姉妹を見て、ますます笑うちょこちゃん。


 なんとなくサリーちゃんたちと顔を見合わせて、苦笑しつつカジノに入る。カジノというだけあって、クリスマスツリーも上回るネオンが光っており、眩しくって目を細めちゃうくらいだ。


 中に一歩入ると、目に入る光景に呆然としてしまう。瑪瑙ちゃんも声を失って、サリーちゃんに至っては、ポカンと口を開けて歩いているので、入口の段差で転んでいた。ナイスキャッチとリーナちゃんが転ばないように押さえていたけど。


「おぉ〜………これがカジノ………」


「ほへぇ〜。知識では知ってたけど、こんなのなんだ」


「スロット、カード、ルーレット、ハイアンドロー、あれはモンスターバトルなのです?」


 ゲームとかでもカジノは見たことがあるけど、想像と数十倍違う。スロットはどこまでも遠くまで並んでいるし、カード場も何基設置されているかわからない。


 その全てが驚くことに自動だ。カードも空中に浮いており、ホログラムである。魔法によるイカサマを防ぐためなのだろう。


 ………これ、胴元がいくらでもイカサマできない?


「システムは古代のプログラムで自動だから、運営もイカサマできないのよ」


「ほへぇ〜。それは失礼しました」


 ヨミちゃんの表情からリーナちゃんが何を思ったのか気づく。


「まぁ、皆一度は考えることだから、気にしないで。さて、まずはどこに行く?」


「それはもちろん、アイテム交換所でお願いします!」


 それは聞かれるまでもない。どんなアイテムがあるか確認しないとね!


「はーい。それじゃこっちだよ〜」


「はぁい」


 ガイドのリーナちゃんの後にぽてぽてとついていく。その途中でカジノで楽しむ人たちが目に入るが、皆楽しそうだ。


「こいっ、大穴だ。大穴で一発逆転、当てて借金を返す。そして出ていった妻たちを呼び戻すんだ」


 パチンコをやっている男の人が必死の形相でレバーを握っている。その目は銀玉に釘付けだ。どこかで見たことがあるなと思っていたら無上先生だった。


「やった! 一段クルーン通過。二段クルーン、よしよし、最後のクルーンに突入! フハハハ、やはり私は幸運の星のもとにいるのだよ! もらったぁ………ほんぎゃー、外した〜! 今なにか不自然な動きにならなかったかぁっ!?」


 超高レートのパチンコ台をしているらしい。絶叫するほど楽しんでいてなにより。床に転がり頭を抱えているので、店員さんに運ばれていった。


 ………イカサマはないんだよね? 大丈夫なのかと視線をリーナちゃんに送ると


「大丈夫。コインは一人一日一千万円までしか買えない制限になってるからさ。個人認証でカードが作られるんだけど、買う際に買った履歴が参照されるんだ」


「円?」


「コインは旧世界の通貨でしか買えないんだ。だから円と両替するカウンターを矢田家は設置してるの」


「なるほどね。でも円を両に直すと一千万円って実際いくら?」


「百両だよ。一両十万円扱いになるみたい。だから破産する人は少ないわけ」


「カジノに訪れるレベルの人たちは裕福だから大丈夫というわけなんだね」


 一千万円は端金と。たしかに金持ちにとってはびくともしないだろうなぁ。この世界の金持ちはとんでもない金額を稼いでいるからね。


「ちなみにアイテム交換は稼いだコインだけでしかできない仕様だから、買ったコインを貯めても無駄なんだよ」


「なるほど、よく考えられているんだね。観光地のカジノって感じなんだ」


 ここまでよく考えられているなら、カジノとして成り立つ。ギャンブル依存症もあんまり出ないだろうね。他の土地でカジノを開こうとしても、魔法を使ってのイカサマがあるから、普通はカジノ場は作らないだろうし。


「うぉぉぉ、あと少し、あと少しなんだぁっ! 離せ、離してくれぇ!」


 ギャンブル依存症は出ないだろうしね。今の血を吐くような叫びはギャンブル依存症の人じゃないから大丈夫。イカサマはないと繰り返し否定してはくれなかったけどさ。


 ちょっとした騒ぎはあれど、中を進むとバニーガールさんがいるカウンターに到着した。アイテム交換所と看板が置かれており、ホログラムで様々な武器やアイテムが映し出されている。


「いらっしゃいウサ。ここはアイテム交換所。あなたの欲しいアイテムに交換できる夢の場所ウサよ」


「バニーガールさんは何枚ウサ?」


「百億枚ウサよ」


「非売品なんだね、しょぼん」


 鼻をスンスンと鳴らして、つぶらな赤い目の白いもふもふ毛皮のバニーガールちゃん。ヨミちゃんよりもちっちゃくて、可愛らしいぬいぐるみのようなウサギだ。たぶんメスだからガールであってると思う。二本足で立っていて、胸元にちょこんと蝶ネクタイをつけて、黒いスーツの上着を羽織っている。


 あまりの可愛さに、ヨミちゃんもウサウサと口ずさんで、カウンターによじ登りバニーガールへと手を伸ばす。撫でていいかな?


「バニーガールへのお触りは禁止ウサ。ご遠慮くださいウサよ」


「持ち帰りたいのです。リーナおねーちゃん、百億枚目指して頑張ろーなのですよ。コイン交換所に行くです!」


「おし! それじゃ私の奇跡のミラクルベットを見せてあげる!」


 もちろんサリーちゃんも触ろうとしてウサちゃんに逃げられたので、リーナおねーちゃんにお強請りをして、コイン交換所に向かうのだった。


 ヨミちゃんとしては、ざっと交換できるアイテムを知りたい。


「交換一覧のパンフはタダでウサ、どーぞ」


「おぉ、ありがとう!」

 

 細長いパンフを差し出してくれるので、握手をしてから受け取る。ふわふわで気持ちいいおててだなぁ。ヨミちゃんもウサちゃん交換を目指そうかな。


 ふんふん、季節ごとの交換アイテムもあるのか。今の季節はイフリートの魔剣かぁ。キャンペーンもあるのね。あれ、ガチャもあるのか。


 エリクサーは一千万枚か………。結構高いや。九郎君はどこにいるのかな? エリクサー手に入れたかしらん。


 その他には空飛ぶボード、瞬間転移できる杖、マナを回復させる祈念の指輪。ミスター美味しん坊全巻。……何でもあるな。漫画なんか手頃で面白そう。千枚だし。


 ………んん? 鉄道の歴史? 変わった物もある。最新の技術を説明と帯に書いてあるぞ。当時の最新技術………。ちょっと興味があるな。交換するには……十万枚か。チャレンジしても良いかも。


 これはワクワクしちゃうよと、むふーと頬を赤くしちゃう。


「皆、早くコイン買うのです。私は制限一杯まで買ったですよ〜。一枚千円なのです」


 クリスタル製のカードを手に持って、サリーちゃんがふんすふんすと鼻息荒く急かしてくる。一万枚スタートというわけなのね。持ちコインを千倍に増やすかぁ……、高レートのスロットとかなら夢じゃないかも。観察してたけど、一ゲーム千枚レートとかあったしね。


 どうやらコインはクリスタルカードに入力されており、データだけの存在らしい。


 もちろんヨミちゃんも制限一杯まで買ったよ。というか、周りの人たちも制限一杯まで買ってる。金持ちだらけだなぁ。


「見てみて、本物のコインみたいなのです。触れるですよ」


「ほへぇ〜、旧世界の技術って凄いとしか言えないね」


 カードをひっくり返すとジャラジャラとコインが落ちてくる。触れるし、その感触も本物そっくりだけど、表示をオフにすると消えるのでホログラムだ。触れるホログラムとか魔法としか言いようがない。


「カジノ場内ならコインは触れるよ。そのコインをベットすると、本当に賭けられるから気をつけてね。コインの色で枚数も変わるから。黒コインは千枚分。白コインは百枚分の価値があるというふうになってるんだ」


「魔法みたいな科学なのか、本当に魔法なのかわからないや」


 瑪瑙ちゃんが白コインを呼び出して、感心して触ってるけど、たしかに言うとおりだ。これは魔法なのか?


「まぁ、ゲームができれば良いじゃん! よみっちはなんのゲームをやるの?」


「まずはけんだね。一枚の価値の赤コインで色んなゲームを楽しむよ」


 赤コインを呼び出すと、握りしめてちょこちゃんにムフンと答える。設定の緩いスロット台を探すつもりだ。


 これぞ、カジノ必勝法! ゲームでも同じことをしてたのだ。リーチ演出がたくさんある台が狙い目。


「モンスターバトルをやるのです! ヨミも行くのですよ! 千倍のぽよりんに千回賭ければ百億枚稼げちゃうのです!」

 

 ヨミちゃんの手を握って引っ張るサリーちゃん。結構力が強くて抑えきれない。


「その計算はおかしいよ、サリーちゃん。リーナちゃん止めてあげて!」


「天才! あたしの妹は天才だったわ! それならウサちゃんを貰えるわよ!」


「瑪瑙ちゃん? なにか言ってあげて!」


「負けても、次に賭ける金額を倍にしていけば良いんだよ。百倍狙いなら百回中一回勝てば良いんだし! 私も必勝法考えついちゃった!」


「それ、駄目な必勝法〜!」

 

 古今東西有名な必勝法だけど、それで勝った人は聞いたことないよ!


「あっはっは! 面白ぶふっ、うん、大勝ちする未来が見えるよ。ついていくよ、瑪瑙っち!」


 どうやら味方はいないようだ。ぬぬぬぬ。


「ヨミちゃんは堅実にギャンブルするからね! まずは見! 狙い目を見つけたら大勝負するんだよ。それが必勝法だから! スロット台をそれぞれ10回ずつやって、リーチが頻繁に来るのをやるんだよ!」


 仕方ない。ヨミちゃんのとっておきの必勝法を教えてあげるよ。この必勝法は皆と違って論理的で確実なのだ。


「行ってらっしゃいウサ〜。楽しんでね〜」


 フリフリと手を振り、ウサちゃんが鼻をスンスン鳴らすのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 美〇しんぼ 赤ちゃん ハチミツ うっ・・・頭が・・・
[良い点] 今年も小説を楽しませてもらいありがとうございました。 良いお年をお過ごしください。 [一言] 人間が不正できないだけで運営側はやっぱり不正できるよね? あかんわー
[一言] 全員が余念無く負けフラグ立ててて草 でもそういう時って不思議と意外に勝てたりもするんだよな…
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