4.弟が可愛い
それからしばらく歩いていたら、エディの部屋についたみたいだ。よし、道は覚えたぞ。
コンコン
『エディ、いるか?』
軽くノックをしてみると、すぐにその扉は開いた。
「アル兄様!?」
扉が開いてすぐに出てきた(おそらく)エディは、俺に突進してきた。正しくは抱きついてきた。
「僕が昼食をご一緒したいと言ったから……来てくださったんですね!アル兄様!」
かなり元気がいい子のようだ。すごくハキハキと喋る。
『そうだ、おはようエディ』
だいぶ遅いが朝の挨拶だ。挨拶は大事だからな。
「くすっ、兄様は起きたばかりですか?おはようございます!」
そこでやっと俺を離したエディを正面から見る。
母似の綺麗な茶髪で、顔は世間一般で見れば薄めだが、母や俺と比べると濃かった。
『ああ、昼食を食べに行くんだったな。ティールームに行こう』
と言ってもティールームまでの道のりが分からないけどな。エディに連れて行ってもらうしかない。
『エディ、寝起きの兄様のこと、頼りになるエディが案内してくれるか?』
よし!いい感じに兄感を出しつつも案内してもらう作戦だ!
「も、勿論です兄様!僕が兄様を案内します!」
成功したみたいだ。張り切る弟が可愛い。
歩き始めて数分後……口を開いたエディがこんなことを言った。
「あの、兄様……。今日は僕のこと、いつもみたいにエドって呼んでくれないんですか……?」
………!エディって呼び方じゃなかったのか……!!失敗した…いきなり愛称呼びじゃなくなるなんて不安になるよな……!
『……少しからかっただけだ、エドがどんな反応をするかと思ってな』
無理やりな理由だけど、兄弟間だしこれくらいはするよな…?分からないけど……。
「ひ、酷いです兄様!からかったんですか!?」
思ったよりも怒られた、が……
『すまないエド、もうしない』
真摯な態度で謝罪!これは前世で課長にも効いたかなり強い技だ!
案の定エディ…じゃなくてエドも顔を真っ赤にしてぷるぷるしながら言った。
「そ、そんなのずるいです、兄様、自分の顔が良いって分かっててやってますよね…!?」
ああ、そうか。エドのこの態度は、俺の真摯な謝罪に感激した訳ではなく、超絶イケメン顔で見つめながら謝ったからだったらしい。それなら、この顔を使えば勝てないってことだな。
『エド……許してくれるか?』
じっとエドの顔を見つめ、少し困り顔を浮かべてみる。
「〜っ、ゆ、許します、今回だけですよ…!」
俺は多分次回も許してくれるだろうと確信した。