29.ひたすらに甘やかす
誤字報告ありがとうございます!作者の頭が空っぽなので間違いが多いと思いますが、その都度報告いただければ幸いです。
『で、甘やかせって具体的には何をして欲しいんだ?』
意気込んだ俺がそう聞くと、左隣にいたオリヴァーは目をぱちぱちと瞬かせ少し恥ずかしそうに顔を伏せて言った。
「…じゃあ、だ、抱き締めてほしい」
それくらいならいくらでも、と俺はオリヴァーに向き合いぎゅっと抱き締めた。
腕の中でびくり、とオリヴァーが跳ねる。
「………アルバートは、あったかいんだな…」
おそるおそる俺の背中に手を回したオリヴァーがぼそりと呟く。
自分ではそう思わないが、温かいと感じるならそれは2人の体温じゃないだろうか?
俺もこの温かな時間を堪能していると、後ろから服がくん、と引っ張られる感覚がした。
オリヴァーをそっと離してそちらを向くと、顔を真っ赤にしたリューが涙目で立っていた。
「…ずるい、…オリヴァーばっかり。アルは僕のことなんて、どうでもいいのか…?」
不安そうな顔をするリューには悪いが、物凄く可愛い。俺がオリヴァーの相手ばかりしてたら嫉妬して不安になっちゃうなんて、
『…かーわいい』
そんな嫉妬に堪らなく嬉しくなった俺は、リューの頭に手を乗せて優しく撫でた。
『どうでもいいわけないだろ?リューは何して欲しいんだ?』
出来るだけ優しく甘く問いかけると、リューは俺から視線をずらしながらぼそぼそと答えた。
「……ちゅー、してほしい…………」
…………キス、か。正直すごくしたいけど、俺たちは付き合ってるわけじゃない。未だに俺は、複数人と付き合うことに違和感があるんだよな。
……でもしなかったらリューを傷付けるよな…。
俺が考え込んでいると、リューが追い討ちをかけるようにこちらを見つめて
「…………だめ、か?」
なんて言ってきた。
ごめん、前世の俺。でもこんな顔されてキスしない方がどうかしてると思う。
ちゅ、
流石に口はまずいと思ったので、リューのさらさらな髪を避けるとその白い額に音を立てながらキスをした。
やけに熱かったリューの額から唇を離すと、真っ先に目に入ったのは顔を手で覆いながらチラチラとこちらを見るリューの姿だった。言わずもがな顔は真っ赤だ。
「っ……な、なんか、はずかしい、な」
その様子をデレデレと見守っていると、今度はまた後ろから大きな声をかけられて。
「アルバート、僕にも!ん!」
ん、と唇を突き出したオリヴァーがぎゅっと目をつむって俺に言う。
まるで子供のワガママのような可愛らしいお願いが愛しくて、すぐさま同じように口づけた。
初めの方はニマニマと嬉しそうに笑っていたオリヴァーだったが、途中から訝しげな表情になり、とうとうジトリと俺を睨み始めた。
『どうした、オリヴァー。…嫌だったか?』
もしや、と思って確認してみたがそうではないらしい。
「嫌じゃ、なかったけど……………アルバート、なんか手慣れてないか?…………僕は初めてだったのに!」
手慣れて、る?
あまり聞き覚えのない言葉に少し固まる。俺が手慣れてるって……。まぁ、前世の経験とか含めたら、手慣れてる方なのか…?
それでもこの世界では経験なしのただの童貞だけど。
むむむ、と拗ねた顔をするオリヴァー(可愛い)。
その隣のリューも、ハッと気付いたような顔をして。
「た、確かに………スマートでいつも格好良いなって思ってたけど、もしかして誰か恋人がいるとか………」
いつもそんなこと思ってくれてたのか…。
いや、そんなことより、
『俺に恋人なんていない。……慣れてるように見えたのなら、格好付けてただけだ。』
王子たちの前ではすごい格好付けだからな俺は。
だって少しでも格好良く見られたいだろ?この世界で格好良いって言われる顔なら尚更。
だから確かに、前世よりクールぶってるところはあるかもな…。乙女ゲームの隠しキャラみたいなイメージだ。
「格好付けてる…?なんで?アルバートの顔なら、何もしなくても格好良いじゃんか」
そう言ってくれるのは嬉しいけど、超嬉しいけど!
『どう言えばいいか…、そうだな。リューは俺に会う前、髪型を気にしたり服装を気にしたりするか?』
俺がそんな自惚れすぎている質問をすると、リューは少し考えて
「当たり前だ!…いくら不細工とはいえ、す、好きな人に会う前には、ちょっとでも綺麗でいたいって思うものだし…」
馬鹿可愛いなこいつ。俺に会う前、ほんとに髪の毛気にしたりとかしてんの?まじかわいい無理好き
じゃなくて!
『はは、有難う。それと同じで、俺もお前らの前では少しでも格好良くいたいんだ。…分かったか?』
ゆっくりとオリヴァーの顔を覗き込む。
「わ、分かった……そ、それより顔が近い!!」
『ああ、すまない。』
俺がパッ、と顔を離すとオリヴァーは落ち着いたのか俺の後ろをじっと見つめて、
「…あ、時間。…アルバート、帰る時間じゃないか?」
その言葉に俺も後ろを向いて時計を確認する。
本当だ、色々あって気付かなかったけどもうこんな時間か。
「アル、帰っちゃうのか…?」
うるうるとした目で俺を見つめてくるリュー。
『もう少し居られれば良かったんだが。すまない。』
俺自身ももう少しここにいたいなーと思っていたし。でも母さんは心配性だからな。
俺がそう言うとリューはふるふると首を横にふり、
「いや、…今日は、甘やかせなんて我儘を言ってしまってすまなかった。でも、その………う、嬉しかった!から、またしてくれたら、嬉しい…」
なんて言いやがった。かわいい、健気かよ。
普通に俺からしても癒しだから甘やかすに決まってるけどな。
『勿論、いつでもしてやるよ。……オリヴァーも、またな?』
オリヴァーに向き直ってそう声をかける。
「ま、まぁ、お前が僕のこと甘やかしたいんだったら、またしてくれてもいいけど!」
素直じゃないな、と思わず笑みが漏れる。
二人は城の門まで送ってくれて、そこで別れた。




