20.美形に口説かれる?(王子視点)
以前から18時投稿でしたが最近難しくなってきており、これから遅めの投稿が増えるかもしれないです。すみません。
〜第七王子視点〜
僕がやっと声を出せたと思ったら、口にしたのは面白みも何もない感謝の言葉だった。
「ぁ、ありがとう、ございます……その、お世辞、でも、嬉しい……です?」
なんて言えばいいか分からずに疑問形になってしまった。ああ、やっぱり。アルバート・ノルマンディも不思議そうな顔をしている。
説明しようとしたがそうなると、僕に経験が無いことを自分から言わなくてはいけなくて。…………正直、言いたくない。
僕は恥ずかしくなり目線を下げて言い訳をした。
「そういうこと……を、あまり言われ慣れていないので、どう返せばいいか分からなくて、……すみません……。」
……情けない。目の前の美形に翻弄されすぎだ。こんなの、僕らしくもない。
「いえ、私の方こそ。でも思っていることは本心ですよ。」
僕なんかを口説くことにその顔を使うな!!
……つい感情が高ぶってしまった。口説くって言うのは違うな。僕を口説いてる訳がない。しかし、……こんなに綺麗な顔で社交界に出ないのに、僕なんかを引っ掛けるために使うなんてどういうことなんだ。
くだらない事を考えていると、周りからなんとなく視線を感じた。……さっきはざまぁみろと思っていたけど、よくよく考えると、もしもこんな会話を聞かれていたら誤解されてしまわないか?
「っ、ろ、廊下の真ん中でそんな事を言うと、王子を口説いていると思われますよ!そんな噂がたったら……嫌でしょう?」
「いえ、私は別に構いませんけど?」
…………………………は、
彼のためを思って言ってやったのに、まさかこんなに間髪入れず否定されるとは。
もし、もしこれが演技だとしたら、こいつ恐ろしすぎるだろ。
「良いんですか……?私なんかと……こ、恋人だとか、言われても……」
あまりにも即答されてしまって少し疑わしいのでもう一度確認しておく。
「ええ。どちらかと言うと、そんな噂が立てば私が殿下に迷惑をかけてしまうのでは?」
はぁ?そんな顔しておきながら、嫌味か!?
って言うか、流されたけど今、肯定したよな?僕と恋人に思われても良いって……。いや、騙されるな。本当にされたら嫌に決まってる。
迷惑なわけがないことを伝えると、彼は何かを考えたあとこう言った。
「ありがとうございます。オリヴァー殿下にそんな事を言っていただけるなら、この顔も悪くはありませんね。」
…………なんか、手馴れてそうな返事だな。まぁ、スマートだし、モテてるだろうしな。
……いや、なんで僕はモヤモヤしてるんだ?恋仲でもなんでもない、ただの貴族だろう。別にどれだけ遊んでようと、僕には関係ない……よな。
嫌な想像に腹が立った僕は、彼に向かって、僕じゃなくても褒めてくれる人はたくさんいるだろうと嫌味を言ってしまった。
あぁ可愛くない。顔も醜いのに心も醜いのか。
そんな僕の嫌味に対し、全く気にしない素振りを見せた彼は少し嬉しそうな顔で
「他の誰でもないオリヴァー殿下に言われたから嬉しいんですよ。」
と自惚れそうなことを言った。
「…………そ、そう、ですか」
僕に言われたから、嬉しい。彼の言葉が頭の中に何度も木霊する。一緒にいて思ったが、やっぱり僕……口説かれてないか??
これこそ自惚れかもしれないけれど、誰に対してもこの態度だとは思えない。こんな顔なのに、誰彼構わず口説いたらどうなるかくらい分かるだろうし。
色々考えて黙り込んでしまっていたが、よくよく考えると今日、案内出来てなくないか?
廊下が長いからずっと歩いていられたけど、当初の目的が何一つ果たせていない!
……呆れられたかもしれない。
でももう外も赤くなってきたし、そろそろ家に帰るよな……。仕方ない。ここは素直に謝ろう。
「あの、案内をすると言っておきながら話し込んでしまって申し訳ありません」
僕が申し訳なさそうにしてそう言うと、
「はは、少し話しすぎましたね。そうですね……また来るので、その時に案内してくれますか?」
また来ると言ってくれた!案内は出来ていないけど、ノルマンディ家の次男と関わりは持てたんじゃないか!?
また会ってくれることに驚きつつも、次来た時には絶対に案内することを約束した。今日はもう帰るということを少し寂しく思っていると、アルバート・ノルマンディが近付いてきて、低くて色気のある声が耳元を擽った。
「……次会うときは、ぜひ貴方の素を見せてくださいね。」
〜〜〜〜〜!?!いつからバレてたんだ……僕の演技は完璧だったはずなのに!
慌てる僕をよそに、彼はさっさと王城を去ってしまった。……通った道、覚えてたのか。
……次会うのが、ものすごく不安になった……。
オリヴァーが難しい……トゲのある純粋なキャラって書くの大変ですね……。