14.王子は口説かれる(王子視点)
投稿出来なくてすみません!今日2話投稿します!
〜第二王子視点〜
初対面にも関わらず泣き出してしまった面倒くさい僕のことを、アルバートは何を言うでもなくただ寄り添って泣き止むのを待っていてくれた。
「泣き止んだか?」
優しい声でそう聞かれれば、不安定だった心も正気に戻り、一気に羞恥心が湧き出てきた。
「あ、ああ。……その、見苦しいところを見せた……」
と気まずそうに僕が言ったその時。
頭に大きくて骨ばった手が触れて、
「はは、お前って実は泣き虫なのか?可愛いな」
確かにそう言った。その顔はふわりと微笑んでいて、僕の顔はきっと真っ赤だったと思う。
…………え?今、僕のことを可愛いって言ったか?
う、嘘、だって僕の顔は、でもこんな、優しい笑顔…は、ほんとうに、僕のことを……。
その瞬間、心臓からどきりと音がした気がした。
僕のことを可愛いと言う人間なんてアルバートくらいしかいないだろう。
はじめてだ、可愛いなんて言われるのは。でも、はじめてそんなことを言うのが、こんなに格好良い人だなんて聞いてない……!
僕は赤くなって狼狽えながら、先程アルバートが言ったことを復唱するくらいしか出来なかった。
「嫌だったならすまない。可愛いなって思ったら、思わず撫でたくなったんだ」
悔しいくらいに格好良い顔でそんなことを言われたら、僕は可愛かったのかもなんて錯覚してしまいそうになる。もちろんそんなはずないのだが。
嫌だなんてそんなこともあるはずない。ただアルバートの瞳からは僕の反応を楽しんでいる様子が見てとれて。
「か、からかわないでくれ……!僕は慣れてないんだ、こういうこと」
赤くなる僕の顔を見て心の中では嗤っているんじゃないかと疑ってしまう。可愛いなんて言われたこともないし、頭を撫でられたことも、手を繋いだり抱き締められたり、き、キスなんかも一切した事ないんだから、初心なのは当然だろう!
僕がそう思いキッとアルバートを睨むと(アルバートには上目遣いにしか見えていなかったらしいが)
「からかってなんかない。けど、そう思われてるのか……」
シュンとした顔でアルバートがそう言った。
しまった、悲しませたかった訳じゃないのに。これじゃ僕がアルバートを信用していないって言ったみたいじゃないか。
「ち、違う!…嫌なわけじゃ、ない……またしてほしい……」
即座に否定したはいいものの、なんだかすごいことを言った気がする。アルバートと出会ってから、僕も知らない我儘な僕が出てきているようで恥ずかしい。
そんな僕をアルバートは、熱のこもった瞳で見つめたあと、僕を気遣ってくれたのか話を変えた。
「ところでアンドリュー。結局俺のこと、アルって呼んでくれるのか?」
え?……あ、そうだった。そういえば、愛称で呼ぶかどうかの話をしていたんだった。僕が泣き出したせいで話が脱線してしまっていたのか。
しかし、僕が愛称で呼んでいいのか……嬉しいけれど、嬉しすぎてちょっとくすぐったい。
「……あ、アル……」
声を震えさせながら零したそれは、聞こえていたのか分からないが、その名前を呼ぶだけでなんだか幸せな気持ちになった。
「僕のことも、リューって呼んでほしい……」
自然に出た言葉だった。な、何を言ってるんだ僕は。愛称で呼び合うなんて、こ、恋人……みたいじゃないか。
「勿論だ、リュー」
そう言ったアルは、今日1番の笑顔で。僕もつられて、笑顔になってしまった。(アルはそれを見てちょっと待ってくれと後ろを向いてしまったけど)
そのタイミングで食事も終わり、少し話して解散する事になった。その話の途中でもアルは甘い言葉ばかり口にして、好意を向けられているんじゃないかと勘違いするところだった。
別れるのは寂しかったが、
「近いうちにまた会いたい。」
と言ってくれたので、きっとまたすぐに会えるんだと思う。
じゃあ、と言って僕達は別れた。