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13.王子は混乱する(王子視点)

〜第二王子視点〜

椅子に座ったはいいものの……

どうしてこんなに見られているんだろうか…。


僕はなにかしてしまったのか?それとも、僕の顔が醜いから……美形の多いノルマンディ家の出身だから、僕みたいな醜い人間を見たことがないのかもしれない。


目をそらすのも失礼なのでこの機会に僕も相手の顔をよく見てみることにする。


しかし、見れば見るほど美形だな……どうしてこんな人が社交界に出ていないんだ?ノルマンディ家の中でもとびきり顔が良いのに。


と思っていると、ドアからノックの音がした。僕はすぐにそちらに目をやり、入れと促した。

入ってきたのは若い使用人だった。僕の方を見ないようにしていて、夢のような空間から現実に引き戻された感覚がした。


「お、お食事でございます……」

急いで皿を並べると、そそくさと部屋を去っていった。食事が届いたことにより、彼が帰ってしまう時間が迫っていることに気付いた僕は、どうにか話をしなければと焦る。


とにかく会食の誘いの礼を言わなくては、と

「………誘っていただいたこと、感謝する」

無愛想な顔で口にした僕だったが、そんな僕に嫌な顔ひとつせず、

「いえ、私の方こそ、誘いを受けていただいて感謝致します。」

と返してくれた。ただこの会話は貴族として当たり前のことなので、僕と彼が会話したということにはならないだろう。その時の僕は雰囲気に酔っていたのか、会食の誘いで浮かれていたのか分からないが、そんな気分のままあることを口にした。


「その、先程も言ったが、此処は公の場ではないし、普段通りの話し方でいい」

言ってしまった、と思う暇もなく

「アンドリュー様の前でそのような事は出来ません!」

と返事をされた。しかし言ってしまったものは仕方ないし、正直な話、この美丈夫と仲良くなりたいと思ってしまったので、自重しないことにする。


「それもだ、……アンドリューでいい」

僕がそう言うと、悩んでいるのだろう。少しの後

「……分かった、アンドリュー」

と諦めるような声が。今、アンドリューって、いや、半ば命令のように頼んだのは僕だが、だって、今、僕の名前を……!


僕は感動で動けなかったが、話の途中だったので、急いで返事を返した。

「ああ。……ところでその、僕も、アルバートって呼んでいいのか……?」

もしかしたらこれを言ったことで嫌われるかもしれないけれど、僕の名前を呼んでくれた彼のことを、僕もどうしても名前で呼びたかった。


いきなり僕の顔を覗き込んできた美丈夫は、

「勿論。でも俺は、アルって呼んで欲しい」

そんな問題発言をした。


理解するまで時間がかかった。そもそも顔が良すぎて何も話が入ってこなかったのもあると思う。

アルって呼んで欲しい、って、アルって……アルって……愛称?そうだよな、いや待て待て!

この国では愛称は、家族や恋人や、自分の命と同じくらいに大事な人にだけ呼ばせるんだぞ?


僕にアルと呼べってことは、その、僕がアルバートにとって大事な人に、なる、わけで……。


「で、でも、それって愛称じゃ……」

そこまで言いかけて口をつぐむ。いや……というか今更だけど、愛称で呼んで欲しいなんて、アルバートは僕の顔が醜くないのだろうか?国民、乳母、実の親にまで嫌われたこの顔が……。


そんなことを考えていた僕は、思わず声に出して聞いてしまった。

「今更だけど、僕の顔を見て、醜いと思わないのか。向き合って座っていたけど、気持ち悪くないか。」


彼の返事をじっと待つ。嫌な時間だ。不安で顔が真っ青になっていることも気付かず、僕は顔を上げて彼を見つめた。


彼から返ってきた言葉はとても単純なものだった。

「思わない。俺にとっては、すごく綺麗だ。」



枯れていたと思っていた涙が、瞳から、身体から、心の底から込み上げてくる。

もう醜いと言われて泣くこともないと思っていたが、綺麗と言われて泣くなんて。


「ほんとうに……?うぅっ……ぐす、」

泣き止まなければ。こんな姿を見せるのは恥ずかしい。そう思い目を擦っていると、僕よりも大きなすらっと伸びた手が、僕の手を掴んで。



「本当だ。お前のことを醜いなんて思わない」



これが嘘でも良かった。この言葉が嘘だろうと、涙が出るほど嬉しかったのだ。僕はその言葉に、涙が止まらなくなって、笑えてくるほど、たくさん泣いた。


次も王子視点かもしれないです!

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