12.会食(王子視点)
〜第二王子視点〜
会食への誘いがあってから数日______
あまり意味が無いことを知りつつも、僕は出来るだけ良い格好で出られるようにいつもよりも入念に手入れをした。
そして当日。ノルマンディ家の次男を招くというからにはもっと広い場所に呼ぶものだと思っていたが、僕が待たされたのは思っていたよりも狭めの個室だった。(後から聞いたらアルは、僕とより近くにいられるから嬉しいと言ってくれたが)
この家の執事長は特に僕のことを嫌っているから、きっとあの人が手配したんだろう。僕は慣れているから構わないが、ノルマンディ家に失礼では?と正直思った。
まぁ、それとこれとは話が別だ。僕がどうだろうと、部屋がどうだろうと、今は心臓がドキドキして仕方ない。僕に会食の誘いをくれたのだ、もしかすると、この顔が平気かもしれない。
と、そこまで想像したが、裏切られた時のショックが倍になるから止めておいた。
この静かな部屋では、外からの足音さえもよく響く。遠くから少しずつ足音が聞こえてきたと思ったら、僕がいる部屋の前で止まった。
コンコン
ノックの音が響く。次いで、
「……アンドリュー殿下、アルバート・ノルマンディ様をお連れいたしました」
感情のない声が頭に入り込む。仕事だからと仕方なくしていることだ。怒ることじゃない。
「入れ」
自分で許可を出したものの、頭の中は緊張でパニックを起こしていた。そんな僕でも1つ気になったことがある。彼の姿だ。彼は社交界に顔を出していない。美形だらけのノルマンディ家の次男ともなれば、さぞ良い顔だと思うものだが、社交界に出ないところを見ると、僕と同じなのかもしれないとも考えられる。
勝手に同情されても迷惑だろうし、何より見ていないんだし、勝手に想像しても意味が無い。
そう思った時、ゆっくりとドアが開いた。
すぐに目線を上にあげると、
まず目に入ったのは綺麗な黒髪だった。弟のアイザックも黒に近い髪色だが、ここまでのものは初めて見た。まさに漆黒……本物だ。
それだけでも驚きだが、それだけではなかった。
顔を見ると、それはこの世のものとは思えないくらいの美形だった。ノルマンディ家の面々なんか比べることすらできないくらいに。
会食のためにと、僕が着飾ったことなど何の意味も無かったのだ。それほどの圧倒的な美がそこにはあった。
その綺麗な瞳が僕のことをじっと見つめる。僕はいたたまれなくなって幾度も目線を外そうと試みたが、目をそらすことは出来なかった。夢のような時間だった。ぽうっと見惚れていると、その唇が開き、低くて色気のある声が、僕の耳を擽った。
「お初にお目にかかります。ノルマンディ家次男、アルバート・ノルマンディと申します。」
完璧な所作に挨拶。だけど僕が王子だからか、かなり固くなっているように見えた。
すぐに声が出なかった。
「……っ、アンドリュー・エゼルウェルドだ。……公の場ではないし、そんなに固くならなくてもいい」
さり気なく気さくに接してほしいことを伝え、僕達は椅子に着席する。
次も王子視点でお送りします!