伝説のドラゴンが街の近くで必殺技を出そうとしているので聖女になって止めてこいと言われました
なろうラジオ大賞2応募作品二作目です。
よろしくお願いいたします。
この街から10kmほど離れた山の上にドラゴンが現れた。
伝説上の生物でしょ?なにかの見間違いだよ!
えぇ、私もそう思った。全国民そう思った。
でも確かにいるのよ。山の上に。
しかもバリバリとオーラを纏ってる。
この世を呪うかのごとく黒いオーラを!
大教会の司祭が『あれは魔素を凝縮して必殺技を出そうとしておる! この国丸ごと滅ぼすつもりじゃ!』と騒いだもんで。
あれよあれよと生贄を捧げよう、若い娘を差し出そうと決定され、その白羽の矢は私に刺さった。
分かる!ある程度魔力があって身分もない私が適任だって!分かるわぁ…
納得は!出来ないけどな!
その日。私は丁寧に化粧を施され、綺麗な白いドレスを着せられた。
嫁入りという名の命日である。
聖女様バンザイ!とか知らんがな。うるせぇよ。
一人ガタガタ震えながら山を登り、ドラゴンの前にやってきた。
なんか圧すごい。ドレス泥だらけでビリビリ。ちくしょう。
魔素の塊というのを間近で感じた。
皮膚の表面が静電気を走ったように痛い。
「あのー! すみませーん! ここでの必殺技は御遠慮くださーい!」
勇気を出してドラゴンに触れると、ドラゴンの声が響いた。
「うるさい…どうせ俺はモテないんだ…死なせてくれ…」
「いや、死ぬのに人を巻き込むなよ」
思わずツッコミが出た。
「もう、こんな世界滅ぼしてやる…俺がモテない世界なんて…」
「そんなこと言ったらお母さんが悲しむよ」
説得の常套句である。情に訴えてみる。
「ドラゴン、卵、母親、知ラン」
あ、ちょっと動揺してる。魔素が揺らいだ。
「もうちょい頑張ってみようよ。それでもダメだったら私が結婚してあげるから」
「……え?」
魔素が消えた。
初めてその瞳に私を映した。
「きっ…ききき、君、か、かわいぃいねぇえ」
尻尾がドッタンバッタン振れた。
山の反対側が消し飛んだ。
予想以上の食いつきに若干引きつつも、これで国を救えると希望が見えた。
「…結婚する?」
「う、うん! けけけ、結婚、するぅう!」
途端にドラゴンの身体が光を纏った。
あまりの眩さに目を閉じた。
「お、俺、リュ、リュート! 521歳! よよよ、よろしく!」
そう言って胸の辺りに可愛い美少年が抱きついていた。
赤い髪に紅い瞳、華奢な身体に可愛らしすぎる顔立ち。
モロタイプである!
「え? 521歳?」
「う、うん」
合法ショタ万歳!!
私は両手を上げて喜んだ。
「結婚しましょう!」
こうして国は救われ、新たな伝説が生まれたのだった。
どもってる下野紘さんを聞きたくて書きました。