12. 無
無
グイリ語 neihe ネーヘ
レンゾ語 dmashw ネアー
ゲルギ語 neilsedniha ネリセドニア
ジェーイェー語 nama27 ナーマー
カザベダ語 sahagye サハゲ
何も無いということはありえるのか、常に水や空気があるのではないのか、という問いはさておき、日常的には水とか空気といったいわば入れ物に何も入っていない状態を無と呼ぶ。上掲の語が使われる。
本当に何も無い状態を表すのにはグイリ語で nekiu ネーキウ、レンゾ語で spedmashw フィネアー、ゲルギ語で menneilsedniha ミネリセドニア、ジェーイェー語で na6 nama27 ナー・ナーマー、カザベダ語で sahigwu sahagye サヒグ・サハゲと言う。ただし、主に書き言葉で、日常的な無の意味を強調してこれらを用いることもある。
造語原理の上で「〜が無い」を作る最も普通の方法として、グイリ語では接尾辞 -na ナ、レンゾ語では -ent アーン、ゲルギ語では接頭辞 neil- ネリ、カザベダ語では接中辞 -dja- を付す。ジェーイェー語ではそのような表現には後置詞 bene18 ベーネーを使う。
上掲の語は文法学において「否定」をも意味する。言語によって否定表現が異なるのを無理に一つの原理のもと説明しようとした結果、無理が出ていると指摘される。新文法学派は従来の否定を「不足」「相違」「話法の否定」に分けて考える。それぞれレンゾ語でqezdmamdw アナン、dlyorm バール、tsperj mashw ピグ・ネアーと呼ぶ。ゲルギ語では neilkorkar ネリコルカル、feina フェニア、iqeirnaneilsedniha クェリナネリセドニアと呼ぶ。
歴史上で、分裂した古代帝国が争ったことで帝国の滅亡が決定的なものとなり、社会基盤が朽ち果てたのちしばらくの時代は「無の時代」と呼ばれる。グイリ語で vio neihe ヴィオ・ネーヘ、レンゾ語で dmashw ネアー、ゲルギ語で neilsednihaveigna ネリセドニアヴェグニア、ジェーイェー語で dele18 nama27 デーレー・ナーマー、カザベダ語で swahegwa サヘガである。
この時代を無と呼ぶのは、主に文学文献が乏しいことによる。ただしそれは古グイリ語の資料が現存していないだけであると考え、他言語に翻訳されたものを探る試みが近年行なわれている。その成否を判断するにはまだ早い。
人名に「無」とつけるのは一般的でない。しかし家畜に名前をつける文化圏の一部では、その命名としてありふれている。奪い手と呼ばれる恐ろしい存在に「お前には家畜がいるか」と問われて、家畜に無と名付けていたので「無がいる(=何もいない)」と答えたことで難を逃れたという伝承に由来するという。




