表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/31

百合カップルを全力支援

 宵子も明日華もきょとんとする。やがて宵子の方がおずおずと首を傾げてみせた。

 

「他言するつもりはないって……なんで……?」

「なんでってそりゃ……ふたりはこのこと、隠して置きたいんだろ」

「まあ……そうだけど」

 

 宵子は少し視線を外し、ぽつりと言う。


 伊織の予想通りだ。

 教室では不仲を装っていたのも、わざわざこんなところでこっそりと会っていたのも、周囲に恋人だとバレたくなかったからだろう。何より百合作品ではよくある展開だから、伊織もピンときたのだ。


 近年では同性愛者に対する理解が深まりつつある。しかしやはりまだ、そうした個性を持っているというただそれだけで、差別する者も多いのもまた事実で――。

 ふたりが恋人であることを隠そうとするのにも頷ける。

 そして、その関係をいたずらに壊す権利など、伊織はおろか世界中の誰にもないのだ。

 

「ふたりが秘密にしたいなら、俺もそれに従う。どうか信じてほしい」

「伊織くん……」

 

 宵子はうろたえ、視線を彷徨わせる。伊織を信じるべきか迷っているのだろう。

 

「信じろ、って……そんなの無理に決まってるでしょ!」

 

 悲鳴のような声を上げるのは明日華の方だった。

 キッと目をつりあげて伊織をねめつける。

 

「あんただって、本当は気持ち悪いとか思ってるに違いないわ……! どうせ裏で馬鹿にするつもりなんでしょ! 女の子同士で恋人とか……おかしいとか言うんでしょ!」

「そんなことない」

 

 その悲痛な叫び声に、伊織はゆっくりと首を横に振った。

 そうした差別意識を抱く人間もいるだろう。だがしかし、伊織は違う。

 

「人が人を好きになることの、何がおかしいって言うんだよ。それは単なる恋愛に過ぎないだろ」

「なっ……」

 

 明日華は目を丸くして言葉を失う。


「それってまさか、本気で言ってるの……?」

「もちろん」

 

 おずおずとしたその問いかけに、伊織は堂々とうなずいた。明日華はそれで完全に勢いを失ってしまう。揺れる瞳で伊織を見つめるだけだ。

 どうやら今のセリフがかなり心に刺さったらしい。

 

(まあこれ、合沢さんに渡した百合漫画のセリフなんだけどな!)

 

 完全に、人の褌で相撲を取ってしまった。

 しかしこれは伊織の本心だ。恋愛は自由。誰が誰と付き合っても責められるいわれはない。ただし浮気は除く。

 その想いが伝わったのだろうか。黙り込んでいた宵子が、重いため息をこぼしてかぶりを振る。

 

「わかったわ。今のところは……伊織くん、あなたのことを信じましょう」

「よーちゃん!?」

「あ、ありがとう。宵子」

「ただし……」

 

 ホッと胸をなでおろす伊織に、宵子は人差し指を突きつける。

 

「本当に秘密を守るつもりがあるのか、しばらくあなたの動向を監視させてもらうわ。かまわないわね?」

「もちろん。そもそもこれは覗き見した俺が悪いんだし……」

 

 むしろ、その程度で許されていいのか自信がない。

 しょげる伊織をよそに、明日華は慌てたように宵子の袖を引く。

 

「ちょっとちょっと、よーちゃん、いいの……? 早乙女くんを信じちゃっても」

「すこし不安はあるけど……この人のことは昔から知っているから大丈夫よ。人を貶めて喜ぶようなタイプじゃないわ」

「だからってそんな……は?」

 

 不安げに眉を寄せていた明日華が、途端に真顔になった。そのままずいっと宵子に詰め寄って睨みを効かせ。

 

「昔から知ってるって、何? そういえばふたりとも下の名前で呼び合ってるけど、どういう関係なの?」

「えっと、平たくいえばお隣さんの幼馴染で……」

「はあ!? 何それズルい! あたしもよーちゃんの幼馴染になるし!」

「なりたくてなるようなものでもないと思うのだけど……」

「むううう……よーちゃんのケチ!」

「えっ、えっ!? わ、わかった。わかったわ。今日から明日華も幼馴染だから。ね?」

 

 宵子はタジタジになりつつ、どうにかこうにか明日華の機嫌を治そうとする。

 力関係は宵子の方が上と見せかけて、けっこう明日華にもしたたかな一面があるらしい。

 

「すごい……百合、尊い……」

 

 男の自分がこの場にいることに大きな罪悪感を覚えつつも、伊織は目の前の光景をしっかり網膜に焼き付けたという。

続きは明日更新します。明日も複数回更新予定。

お気に召しましたらブクマや評価で応援いただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cijm7vd7f9ypatg0g1zvl3klfc2x_n1_1pc_yi_1
書店にて予約受け付け中!
やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにグイグイいく
連載中のラブコメです。本作と同じ学校が舞台。
― 新着の感想 ―
[良い点] あ 一回だったかw この後 百合シーンの見学会とかあんのかなw [一言] 明日もまってま~す
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ