判明する真実
それから十分後。
宵子と伊織は館内のベンチに並んで座り、ぐったりとうなだれていた。
ふたりそろって着ているのはサメの絵が描かれた青いシャツだし、まったく同じタオルを頭からかぶっている。土産物屋で投げ売りされていたものを、明日華が買ってきてくれたのだ。今現在、彼女は温かい飲み物を買うために売店に並んでくれている。
それもこれもイルカショーでおもいっきり水を被ってしまったせいだった。
今もショーは続いているようで、プールの方からは大きな歓声が聞こえてくる。
おかげで館内はがらんとしていて、かなり静かなものだった。おまけに先ほどから宵子との会話が完全に途切れてしまっている。平たく言って気まずいにもほどがあった。
いたたまれない空気に耐えかねて、伊織は口を開くのだが――。
「えっと、なんかごめんな……俺が変なこと言ったせいで、ショーが見れなくなっちゃって」
「……いいのよ。さっきのは私も悪いし」
宵子は力なくかぶりを振る。
うつむき加減で表情はよく見えないが、かなり落ち込んでいることが見て取れた。
百合デートを邪魔してしまったことに、伊織は強い罪悪感を抱くのだが――宵子がため息交じりに続けた言葉に、目を丸くしてしまう。
「わかってたことなのにね、伊織くんの好きなタイプは昔から、明日華みたいな明るい子だって」
「……うん?」
「それなのに私ってば明日華に嫉妬しちゃって……ごめんなさいね」
「いやあの、ごめんとかじゃなくってさ……」
しおらしく頭を下げる宵子に、伊織は戸惑うしかない。
「俺の好きなタイプが明るい子って……いったい何の話だ?」
今も昔も、そんなことを口にした覚えなどまるでなかった。
それなのに宵子は自嘲気味な笑みを浮かべて伊織を見やる。
「ふっ……いいのよ、隠さなくったって。私たちの間には、今さら隠し事はなしにしましょ」
「いや、ほんとに心当たりがないんだけど……どうしてそう思ったんだ?」
「どうしてって……昔、見ちゃったのよ」
宵子は眉をひそめてから、遠い目をして言う。
「小学生の頃だったかしらね。伊織くん、高校生くらいのお姉さんと一緒に公園にいたでしょ。ちょうど明日華みたいに髪を染めた、明るい感じの人」
「…………うん?」
「伊織くんったら目をキラキラさせて、そのお姉さんの話を夢中で聞いていたわ。だから私……『ああ、伊織くんは私みたいなのじゃなくて、あんな人がタイプなんだな……』って思ったの」
「えっと、それ……いつ頃の話?」
「たしか六年生の夏頃だったかしら。伊織くんのお姉さんの、透さんも一緒だったわね。覚えてるでしょ?」
「うん……思い出しました」
伊織は頭を抱えるしかない。
宵子の語る光景は鮮明に覚えている。たしかに自分はそんなお姉さんに必死になって話をせがんで、夢中になって聞いたものだ。
宵子はふっ……と薄く笑って、絞り出すようにして続けるのだが――。
「だから私は、一度はあなたへの恋を諦めたのよ。まったくもう……こんなこと言わせるなんて、あなたってば酷い人……って、どうかしたの?」
「あのさあ、宵子……」
伊織は真っ青な顔で宵子を見つめる。
どうやら彼女は……重大な勘違いをしているらしかった。
「おまえが見たそのお姉さん……たぶん、うちの姉さんの当時の彼女だぞ」
「…………はい?」





