表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/31

百合デートの待ち合わせ

 かくしてその週の日曜日。

 伊織は待ち合わせ場所の駅にのこのことやって来て、猛烈な後悔に襲われていた。

 

「俺は一体何をしているんだ……?」

 

 駅前のベンチに腰を落として頭を抱え、自問自答する。

 春先の休日、しかもよく晴れた朝ということもあってあたりは多くの家族連れやカップルなどで賑わっていた。

 つまり、絶好のデート日和とも言える。

 

「デート……デート……かあ」


 おかげで伊織はますます自己嫌悪に陥ってしまうのだ。

 デート相手に文句はない。むしろご褒美みたいなものだ。

 しかし問題は……今日デートするふたりが、百合カップルということに尽きる。伊織は苦悩のままに呻くしかない。

 

「百合カップルとデートするなんて……どう考えても男の俺が邪魔……! むしろ害悪……!」

 

 百合デートが間近で見れるというのでついつい釣られてしまったが、どう考えても伊織が同行すべきイベントではない。

 これが百合ラノベや百合漫画だったら、読者からの抗議の電話と手紙が殺到していたことだろう。たぶん伊織も恨みに任せて筆を取っていた。

 

「よし……やっぱり帰ろう」

 

 約束は約束なので渋々やって来たものの、すでに心は限界だった。


 待ち合わせ時間にはまだ早いので、逃げるなら今のうちだ。あとで適当な体調不良を連絡しておけば、ふたりは伊織抜きでデートを楽しむだろうし、そちらの方がずっと平和で――。


「いおりーーん!」

「うぎゃっ!?」

 

 ベンチから立ち上がりかけたそのとき、勢いよく背後から抱き付かれてしまった。

 相手が誰かなんて、顔を見なくてもわかる。甘い匂いがふんわり漂うし、背中に押し当てられたものが非常に柔らかくてボリューミーだ。


 それでも伊織はぎこちなく首を回して、背後を確かめる。

 

「あ、合沢さん……」

「おっはよー、いおりん。ちゃんと来てくれたんだね」


 明日華はそう言って、にっこりと笑う。

 青空の下でその笑顔は伊織の目に特別輝いて見えた。それもそのはず。今日の彼女は私服姿だ。


 惜しげもなく生足を晒すミニスカートに白いトップス。シンプルないでたちではあるものの、小物などのアクセントがきらりと光り、素材の良さが十分に発揮されている。胸も大きく開いていて目に毒だ。

 

(か、かわいい……!)

  

 制服姿しか知らないクラスメートの、気合の入った私服姿。おもわず伊織は見惚れてしまって、ついつい言葉を失ってしまう。

 そんな伊織に、明日華は唇を尖らせてむすっとしてみせた。

 

「それよりいおりん、いい加減にあたしのことも下の名前で呼んでよね。よーちゃんのことは宵子って呼ぶくせにさあ。差別はよくないと思うんだよなー」

「えっ……えーっと、それじゃあ……明日華……?」

「よろしい、よくできましたー」

「ちょっ、やめ……!?」

 

 明日華はにっこり笑って伊織の首に腕を回し、わしゃわしゃと頭を撫で回す。犬でも飼っているのか、その手つきはかなり慣れたものだった。

 

「もう、明日華ったらまた伊織くんに飛びついて。危ないでしょ」

「宵子! 助け、て……」

 

 そこで呆れたような声が降りかかる。伊織はおもわず助けを求めるのだが、途中で台詞が尻すぼみになってしまった。

 

 宵子も宵子で私服姿だ。明日華がカジュアルなJKスタイルだとすると、こちらは両家のお嬢様然とした服装だ。花柄の膝丈スカートに真っ白なブラウス。長い黒髪にはリボン飾りをつけて、全体的に綺麗めでまとめている。

 

(宵子、やっぱり美人になったよなあ……!?)

 

 久々に見る幼馴染みの私服も、やっぱり威力抜群だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cijm7vd7f9ypatg0g1zvl3klfc2x_n1_1pc_yi_1
書店にて予約受け付け中!
やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにグイグイいく
連載中のラブコメです。本作と同じ学校が舞台。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ