悪魔の提案
しばらくぶりに間近で見る幼馴染みの笑顔に、妙にドキドキしてしまった。
(な、なんか昔よりぐっと美人になったよな、宵子…………って、宵子には恋人がいるんだぞ!? しかも百合カップル! 俺はお呼びじゃないっつーの!)
トキメキを振り払うようにしてかぶりを振る。
この流れはちょっとまずい。伊織は慌てて話を変えた。
「と、とりあえず今後のことだ。白崎さんのあの様子なら、宵子たちが本当のことを打ち明けてもきっと力になってくれると思う」
当事者同士にしかわからない悩みを相談することも、惚気話を聞かせることもできる。
これまでこっそり人目を忍んで付き合っていた宵子と明日華にとって、とても頼もしい味方になるだろう。
「だから、俺と付き合ってるなんて嘘をつく必要はもうないんだ。作り話だって言うなり、俺に見切りを付けてふたりで付き合うことにしたって言うなり……どっちでも好きな方を選べばいいよ」
伊織の口から出まかせはもう何の意味もない。
むしろ今となってはふたりのお付き合いを阻む邪魔者でしかなくて、早いうちに彼女らの口から否定してもらうのがいいと思えた。
伊織はそう説明するのだが――。
「ふーん。好きな方……か」
「明日華? どうかしたの?」
ふむ、と顎を撫でてなぜか明日華は唸ってみせた。
どこか真剣なその表情に宵子は首をかしげる。だが明日華はおかまいなしで伊織をじっと見据えてきた。
「ちょっと、早乙女くんに聞きたいことがあるんだけどさあ」
「えっ、急になんだよ」
「今好きな人っている?」
「……特にいないけど?」
「で、彼女募集中なのよね?」
「まあ、朝言ったとおり……何これ、恋占いか何か?」
「ううん。面接みたいなもの?」
明日華はいたずらっぽく、にんまりと笑う。
元の素材がいいため、ぱっと花が咲いたような笑顔が実によく似合う。
しかしその瞬間、なぜか身の毛がよだつような悪寒が伊織を襲った。心臓がきゅっと縮み上がり、全身からねばつく汗が吹き出しはじめる。
(えっ、な、なんだこれ……なんか、い、嫌な予感がする……!)
伊織は正体不明の悪寒に、ごくりと喉を鳴らすしかない。
そんななか、明日華はにこにこと続けた。
「じゃあね、早乙女くん。ちょっくら提案があるんだけどさ」
「な、なんでしょうか……」
そうして彼女が名案だとばかりに言い放ったのは――伊織がもっとも聞いてはいけないタイプのセリフであった。
「ずばり! いっそあの嘘を本当にして……私たち三人で付き合わない?」
「…………は?」
ようやくあらすじの内容になりました。本日あと一回更新予定。
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