Day.1
あたたかくて甘いホットココアを、口に運ぶ。
晩冬が過ぎ、立春がやってきた最近でも、まだ冷たい風が厳しい。
私、望月 文は、こうしてココアを飲みながら文庫本を開き、ある人を待つという日課がある。
たぶん、今日で一年くらいになると思う。一年前の今日も、同じように、彼にーー
「あ、望月。お前今日もいたのか………」
ふと、掛けられた声の方向へ勢い良く振り向く。
そこには、地毛の金髪と生まれつきの薄茶の瞳が目立ち、またそれ以上に整った顔立ちが際立つ男性が呆れた溜め息をついた。
私は彼の登場に、表情が明るくなり、声が自然と弾む。
「こんにちは!須藤さん、今日は早いですね!」
「…………あれ、俺、昨日『明日は休みだ』って言ったと思うんだけど……。何でいるんだよ、怖いわ」
開いていた文庫本をパタンと閉じ、笑ってみせる。
「そんな嘘ぐらい、もう昔の私じゃないんだから通用しませんよ」
須藤さんは頭を抱えて苦笑いを浮かべた。
「………はあ。
あー、うん。もういいや、嘘つくのも面倒くさくなってきた。もう嘘つかないから、安心して俺がいる時に来なさい」
「…え、それはそれで私の楽しみが一つなくなってしまう。あの須藤さんの、私を見たら嫌がる表情見るの結構好きなんですけど」
「うるさい………。黙れ望月」
そう言って少し睨みつけながらも、私の隣に座り込んだ。