少女のひとり言
生きづらい世界ね、と遠くのあかりを見ながら、わたしはひとりつぶやく。夜は暗くないし、人々は眠らなくなった。住みやすかった家も、もうない。それは人が便利さを求めた末のことで、結果的にずいぶんと暮らしは楽になったのだろう。明るい世界はたしかに綺麗で心惹かれる。だけどわたしは、何もかも覆いつくしてしまうようなあの空気は、好きじゃない。はっきり言ってしまえば、嫌いだった。明るいのに澱んでるよう、だなんてひどい矛盾だ。昼と夜、なんて言葉はもう意味を成さないのかもしれない。見た目はどうあれ、どちらも同じもののように、わたしには思えるから。
今の世界が駄目なわけじゃない。ただ、ほんのひと眠りして起きたら、いつの間にか私の居場所なんてない世界に変わってて、すこし、ほんのすこし、恋しくなった。それだけ。
自分のために生きたいだけなの。でも、他のだれかに産み落とされた身だから、それは叶わない。本当に、息のしづらい世界ね。
『少女のひとり言』