追憶と重なる未来ー2
「娘の飛芽だ。ちょっとばかしやんちゃだけど、どうだ? かわいいだろ?」
「おぉおぉー、かわいいな飛芽ちゃん! だがよ、俺の息子もなかなかの男前だぜ?」
俺と飛芽の出会いはこんな感じだった。
俺の親父と飛芽のおじさんは昔から親友だったらしく、こうして自分の生まれてきた子を自慢するように見せつけあっていたのを憶えている。
俺は親父の大きな手を、飛芽はおじさんの優しそうな手を握りながら、互いに見つめあっていたんだ。
「おら、草。飛芽ちゃんに挨拶しろよ」
「うん! ぼくの名前はそーっていーます。ひめちゃん、よろしくね」
飛芽に対する俺の第一声はこんな感じだったと思う。
「ほら、飛芽。草君にちゃんと挨拶するんだ」
そして飛芽の俺に対する第一声。
「おい、そー」
「え?」
声は幼くて年相応でかわいかった。だがその声の発した言葉は男勝りというか、随分と俺を見下した言い方で。
「あたしについてこい。じゃないとぶっとばす」
この頃の飛芽が、俺は怖かった。
そうだ。幼い頃は飛芽の事が怖かった。目は威圧しているようでいて、口は常にへの字に曲げていて、この時の身長は俺よりも高かった。
この出会いを機に、俺達は二人で遊ぶ――連れていかれる――ようになり、飛芽が先行く道を俺がこそこそと後ろから辿っていく、そんな関係になっていったのだ。
幼馴染としてのスタートラインはここにあった。
しかし、俺はなぜ飛芽と出会った場面を思い出している? この場面でアスターの花なんて影も形も出てこないというのに。
まあいいか。記憶を掘り起こした所為でついてきた付属品のようなものだろう。
とりあえず。
俺と飛芽の出会いはこんな感じだったんだ。
幼稚園の頃に俺達は出会い、それからはいつも一緒にいた。俺が飛芽の後をこそこそとついてまわるだけだったが……小学校に上がってからもその関係は変わらなかった。
幼少期の子供というのはいろんな場所を歩き回り、見て、触って、それがなんなのかを拙い感性で精一杯に感じ取ろうとする。
俺達二人は背丈を伸ばすのと同時にいろんなものに目を向けるようになっていて、俺はサッカーに、飛芽は草花に興味を持ち始めた。いつも一緒にいたのに別々の事に興味を持ち始めたのは、やはり性別の違いというのもあったんだろうが、俺に対していつも態度をでかく取る飛芽に対抗心があった、というのも大きかった。
サッカーが上手くなって、絶対に飛芽ちゃんを見返してやる。
密かながらも飛芽に向けてそんな気持ちを抱いていた。




