プロローグ
雑草。
花壇に咲く色とりどりの草花や、畑や水田で実る作物の生育を阻害する。特に作物の場合、生産量や品質にも影響を与え、栽培する上で看過する事は決して許されない。
花や作物だけではなく、この世界で生活する人間たちも雑草を疎む者は多い。
自分の育てたお気に入りの花の傍に雑草が生えていれば遠慮なく引き千切り、新たな地を開拓する為にその場所で生きている雑草は悉く刈り取られる。例え道端で必死に生きようとしていても、前を見て歩く人間には雑草などただの道としての一部分でしかなく、あっけなく踏みつぶされてしまっても誰の目にも止まらない。
雑草はその名の通り、無価値な草でしかないのだ。
だがどれだけ少数であろうと、雑草に価値を見出す者もいる。小さい葉に虫が寄れば、子供たちの遊び場程度にはなる。鬱蒼としているだけで緑が多いと思ってくれる者もいるかもしれない。
しかし大半の雑草がその例に漏れているのは、この世界の常識が既に証明している。多くの雑草は自分の居場所を見失い、挙句の果てに燃やされてしまうだけ――。
雑草の悲惨な末路を想像しては疑問を抱く。
雑草に救いはあるのか?
そんな世間からしたらどうでもいい、些末な事を俺はよく考える。
だから俺は、自分によく似た存在である雑草を見ているといつも思うのだ。
もしも。
花弁の影の下。陽の光を浴びれなくたって構わない。
雑草との共存を望み、それでいて尚美しく咲き続ける花がいてくれるならば。
その時はきっと――。
雑草は自分の居場所を見つけられるのではないかと。




