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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
83/321

83.美容師~魔法の才能を調べてみる


「僕には魔法の才能がないんでしょうか?」


 涙がこぼれそうになってしまう。


「ソーヤの職業は魔法使いなんだろう? 魔法使いの職業が出たのなら、才能が皆無なはずはないよ。諦めずに頑張ってごらん」


 励まされてやる気を取り戻したが、何かコツのようなものはないだろうか?


「師匠、人それぞれと言いましたが、どのようなやり方があるのでしょうか? 参考までに教えて頂けませんか? ちなみに師匠はどうやっているのでしょう?」


「わたしかい? わたしはもう自然とできるのが普通だからねぇ。昔はどうやっていたかねぇ」


 記憶を手繰り寄せるようにしばしの黙考。


「ダメだね。思い出せない」


「そうですか」


「あえて言うなら、グッと溜めてパッと出す感じかねぇ」


 全然わかりません。

 

 けれど師匠の言葉を信じて試してみることにしよう。

 三度、法玉を握りしめる。


 スキル頼みは無駄だとわかった。

 色々とやってみるしかない。

 

 体の中にあると言われている魔素をこの玉に移動させるのだから……血管を流れる血をイメージしてみるか。

 

 心臓から押し出された血液に魔素が含まれていると仮定して、それが手の平に集まり、小さな傷から染み出てくるイメージを。

 ほんのりと手の中が温かくなった気がした。

 

 見てみると、法玉は薄らと赤く色づいている。

 ほんの少し、赤みが増したかな程度だ。


「赤色か。ソーヤの適性は火かね。ただ、それにしても色が薄いか……」


 手の上で転がる法玉を見て、師匠が呟く。


「ソーヤ、今どうやったんだい?」


「手の平に傷口があって、そこから血が出てくるのをイメージをしました」


「ふむ、変わったやり方だね。なら今度は血じゃなくて、傷から水が出てくるイメージでやってごらん」


 傷口から水が出てくる?

 イメージしずらいな。


 ならば、手の平をシャワーに見立てて、水が噴き出すイメージでやってみるか。

 新しい法玉をもらい、想像の中で水を出す為に蛇口をひねる。


 そんなイメージならお手の物だ。

 毎日繰り返して見ていた光景だし。


 握った手の平の中がひんやりと冷たくなった。

 ポーン、


【スキル 魔力操作を獲得しました】


 ということは……2つ目の法玉は綺麗な青色になっていた。

 師匠の変化させた法玉の色と比べても、ほぼ遜色がないくらい。


「やっぱり……ソーヤ、あんたの適性は水だね。水属性の魔法使いだよ」


「水属性ですか? ちなみに師匠は?」


「わたしも()いて言えば水属性だね。これは教えがいのある弟子ができたもんだ」


 師匠は嬉しそうに微笑んでいる。


 弟子として、師匠と同じ属正だったのはラッキーだ。

 師匠の得意な魔法を教えて貰えそうだし。


「ソーヤ、あんたの人生で水に関わる生活をしていなかったかい? 水辺の近くに住んでいたとか、両親が漁をしていてそれを手伝っていたとか?」


「もしかして、才能に関する話しですか?」


「そうさ。実は水属性の魔法使いは全体から見るとあまり多くないんだ。

 一番多いのが土属性。これは小さな頃から畑を耕す手伝いをしていたんだろうね。

 次が風属性、風はいつも吹いているからね。風に触れたことのない人はいないはずだよ。

 次が火属性と水属性。どちらも人との関わりは深いけれど、土や風の方が触れる機会が多いからね。

 全体の7割は土か風の属性が適性になると考えられているんだ」

 

 確かに僕は水に触れる機会は多かった。

 小さな子供の頃から、両親の真似をしてシャンプー台でシャワーに触っていたし、美容師として働き始めてからは、シャンプーマシーンのごとく洗髪しかしていなかった時期もあるくらだいし。


「以前は、水によく触れる仕事をしていました」


「だからかねぇ」


 自分の仮定が正しいと知り、師匠が満足そうに頷いた。


「師匠、適性と言うからには、僕は水属性の才能があるのでしょうか?」


「そうだよ。ソーヤ、おまえは水属性の魔法が得意な魔法使いになるはずさ」


「水属性の魔法以外は使えないということですか?」


「それはどうだろうね。これから調べていかないとなんとも言えないが、さっき赤色に法玉が染まっただろ? 

 火属性の魔法も使えるとは思うね。ただ、水属性の魔法の方が威力は大きいはずだよ」


「属性の適性というのは、あくまで得意分野という認識でいいのでしょうか?」


「そうだね。それで合っているよ。ちなみに、わたしの適性は水だけど、風属性もそれなりに使えるよ」


「師匠は水と風、2つの属性の魔法を使えるのですか?」


「ああ、そうさ」


「それは珍しいことなのでしょうか? それとも普通のことなのでしょうか?」


「どうだろうねぇ……珍しいといえば珍しいかもねぇ」


 終始にこにこしているので表情が読みづらい。

 まぁ、とりあえず僕の適性属性は水だとわかったことで良しとしよう。

 

 火属性も使えるみたいだし、魔法が使えないなんてことにならなくてほっとしたのが一番だ。




お読みいただきありがとうございます。


ご意見ご感想、評価、ブックマーク等頂けると更新の励みになるので、嬉しいです。


今後とも宜しくお願い致します。



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