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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
68/321

68.美容師~職業について教えを受ける


「さて、ではソーヤさん。就きたい職業はありますか?」


「いや、そもそもどんな職業があるのかすら知らないんだけど」


「大丈夫です。そうかと思って、昨夜からギルド職員を徹夜させて資料を作成してあります」

 

 このように、と羊皮紙数枚分の資料をテーブルに並べてくれた。

 ギルド職員を徹夜とか……ほんと勘弁してほしいよ。

 

 とほほ、と呟きたいのを我慢して、資料に目を落とした。

 そこには職業の名前が一覧で並んでいて、その横には内容が詳細に書かてれいる。

 例えばこう。


 ・戦士:筋力と体力に補正あり。

  剣や槍等の武器を用いて攻撃を行う。

  器用の値が高ければ、盾を用いるのも可。


 ・格闘家:筋力と体力、俊敏等に補正あり。

  拳や脚、体全体を武器として攻撃を行う。

  手甲や脚甲等、専用の武器もある。


 ・魔法使い:魔力に補正あり。

  杖やメイス等の武器を用いて攻撃を行う。

  魔力を用いて様々な魔法を使用し広範囲攻撃も可能。


 他にもゲームや漫画でおなじみの職業がズラーっと並んでいる。


「どうですか? 興味のあるものはありますか?」


「うーん、どうかな」

 

 正直、僕の就きたい職業は『美容師』なわけで、魔法使いには確かに憧れはあるけれど、その職業に就かなければ魔法は使えないのかな?


「そもそも、一定の職業に就くメリットやデメリット等はないの?」


「職業に就くメリットですか? 

 そうですね。まずテータスに+補正が付きます。戦士なら筋力と体力、魔法使いなら魔力、というように様々な値がUPするのでそれだけでも価値はありますね」


「職業を魔法使いにしないと魔法は使えない?」


「いえ、魔法を使うこと自体は、どの職業でも可能です。

 ただ、本人の魔力の量や才能が関係してきますので、魔法に適応している職業に就いた方がステータスの魔力が上がる分だけ、魔法を使いやすく、また威力も上がります。

 ソーヤさんは魔法に興味がおありですか?」


「まぁね、魔法自体には大変興味があります」

 

 日本人の男の子で、魔法に興味がない男の子等いないだろう。

 言わば漫画やアニメで魔法の英才教育を受けてきたようなものだし。


「では、魔法使いに決めますか? 魔法使いのソーヤさんもアリだと思います。この際、勢いでそうしちゃいましょう!」

 

 ずずいっと身を乗り出してくるので、両手で押し戻す。


「待って待って、もう少し考えさせてよ。それに職業って、その場のノリで簡単に決めてもいいの? 頻繁に変えることは可能なの?」


「職業の変更自体はわりと簡単に行えますよ。頻繁に変えることも可能ですが、あまりそうする人はいませんね」


「それはどうして?」


「職業にも経験値というか熟練度のようなものがあると考えられていますので、ころころと変えるよりもじっくりと一つの職業を育てた方がいいとこれまでのデーターからもわかっているからです」


「職業を育てるとどうなるの?」


「その職業によって固定のスキルを覚えることがあります。

 冒険者ギルドの定めるレベルのようなわかりやすいものはありませんので、その職業に就いて修行というか鍛錬を積む必要があるんです」

 

 考え方はスキルと同じということか。


「なので普通は冒険者登録をしてギルドカードを発行した際に、皆さん職業を選択します。

 大抵はそれまで就いていた職業をそのまま継続するか、改めて就きたい職業を決めて来られる方が多いので、無職のまま過ごす人はほぼいません。よって、今回のような問題が発生することはなかったんですね」

 

 それは無職のまま過ごしていた僕も悪いとは思っている。


「ただ、現状の職業から転職、つまり新たな職業に就く場合には、その人個人の才能が関係してきます。

 最初に就ける職業は大体3~5種類くらいで、多い人でも7種類くらいですね。少ない人だと1種類のみなんてこともあります」

 

 あれ、好きなものを選べるんじゃないの?


「自分がなりたい職業になれるんじゃないの?」


「選ぶこと自体は可能ですよ。その職業が選択肢の中に出てくればですけど」


 ……?

 いまいちわからない。


 「僕が初めて登録に来た時に、職業を聞いたよね?」


「はい、覚えていますよ。すでに就いている職業があれば継続、または新たにお決めになると思いましたので。

 なのでわたしの中では『すでに就いている職業、もしくは就きたい職業は?』と聞いたつもりでした。

 それに対してソーヤさんは『とりあえず無職で』とおっしゃられましたので、そのままカードの登録を行いました。

 わたしの言葉が足りなかったようで、申し訳ございません。しかもその後、改めて職業の選択をお勧めできなかったのは、本当にすみません」

 

 また、ぺこりとお辞儀。


「いやいや、それはもういいんだけどさ。冒険者ギルド以外でも職業に就くことはできるの?」


「はい、教会にある『職業選択所』で就くことが可能ですね。なのでソーヤさんもなんらかの職業に就いているだろうなと思っていました」

 

 教会か……謎が多いな。


「なら、僕がもし『魔法使いです』って答えたらどうなったの?」


「魔法使いになったんじゃないですか?」

 

 マリーがキョトンとした表情で首を傾げる。

 僕の言いたいことが伝わっていないようだ。

 もう少しかみ砕いて説明するか。 


「僕が何を言いたいかっていうと、虚偽の言葉を伝えたらどうなるのか? ってことなんだ。例えば、ギルドに登録する前は本当は戦士の職業だったのに、『自分は魔法使いです』って答えたらどうなるのかってことなんだけど」


「ああ、そういうことですか」

 

 納得がいったマリーが意味深に頷いた。


「嘘の職業を言っても意味がないんですよ。

 先程もお伝えしたとおり、職業の選択は一種の才能が関係してきますので、嘘の職業を言ったり、もし本人が本当に|自分は魔法使い≪・・・・・・・≫だと思い込んでいたとしても、才能がカケラもないとしたら、職業選択欄には『魔法使い』が現れません。

 恥ずかしい思いをするだけなので、『今は戦士だけど、改めて魔法使いに就きたい』と言うのが正しいですね」


「ということは、僕がもし魔法使いに就きたいと答えたとしても、才能がカケラもなければ魔法使いになれない可能性もある?」


「そういうことです」


「なら、僕に魔法使いを進めてきた理由は?」


「ソーヤさんなら、職業選択欄に魔法使いがあるかな? と」


「……」


「あるといいな、きっとあるだろうな? と」


「…………」


「ぶっちゃけ、早く職業を決めてほしかったので、とりあえずなんでもいいかなと。みんなの視線が痛いんですよ」

 

 マリーが小声で呟いた。

 

 それは僕にもわかる。

 ≪気配察知≫がこちらに向けられている視線の数を教えてくれるが、数える気もおきないくらいに多いんだ。


「で、ではソーヤさんの就ける職業を見てみましょうか! きっと魔法使いもあるはずですよ!!」




いつも読んでいただきありがとうございます。


ご意見ご感想、評価等頂けると更新の励みになるので嬉しいです。


※さらりと読める短編小説はじめました。


よければそちらも読んでみてください。






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