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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
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67.美容師~期待を受けて追い込まれる

 

 今日は討伐依頼を受けるとともに、石鹸モドキとシャンプーモドキの制作にとりかかる。

 泡を出して汚れを落とすにはアルカリ性の材料を探す必要がある。

 

 本来なら苛性ソーダがあればいいのだが、昨日キンバリーさんやマリーに聞いてみたが、知らないと言われた。

 

 独自に探してもまず手に入らないので、朝食の時に重曹はないか女将さんに聞いてみると、少しならあるということで分けてもらえた。

 これならなんとかなりそうだ。

 

 冒険者ギルドに向かうついでに、野菜を売っている露店で物色しつつ目当ての物を見つけるたびに購入して小袋へ入れる。

 

 ギルドの受付にはマリーが立っていたので、買ってきたものを預かってもらう為に、小袋ごと渡した。

 

 さて、今日はどんな魔物を倒そうか。


「ソーヤさん、実はいい知らせがあるんです!」

 

 若干興奮気味にマリーがまくしたてる。

 ただ、その内容が問題である。


「ソーヤさんのレベルが上がらない原因がわかったかもしれません!」


「いや、あのマリー……そのね」

 

 その問題はすでに解決していて、僕のレベルは2に上がっている。

 そう伝えたいのだが、マリーの嬉しそうな表情を見ていると、なんだか遮りがたい。

 

 そんな僕の戸惑いにも、今日のマリーは気づいてくれない。

 困惑する僕を無視して、解決策を教えてくれた。


「ソーヤさん、職業を決めましょう! 

 今のソーヤさんは無職の状態です。職業を選んでいないせい、つまり無職のせいでレベルが上がらないのかもしれません。

 昨夜ギルド本部から連絡がありまして、過去に何人か同じようにレベルが上がらないという問題が起こった事例を覚えている人がいました。

 当人の話を聞くと、中には無職状態の人がいたようで、その人は職業を登録することで無事レベルが上がったとのことでした。

 なので、ソーヤさんも職業を登録すれば、きっとレベルが上がりますよ! 

 原因がわかってほっとしましたが、そもそも職業登録をもっと早くお勧めしなかったわたしにも責任があります。申し訳ございませんでした」

 

 きっち90度のお辞儀を決めて謝罪されてしまい、ますます言い出しづらくなってしまった。

 

 誰かのせいだとすれば、それはマリーのせいなんかじゃなく、シアンやアンジェリーナのせいなんだから。


「いやいや、マリーのせいなんかじゃないよ。実はね――」

 

 覚悟を決めて伝えようとしたが、マリーが被せ気味に言葉を発したので、その勢いに負けてしまった。


「はい、ソーヤさんならきっとそう言ってくれると思っていました。

 でも、冒険者ギルドの職員としても責任の一端は感じていますので、きちんと職業の案内をさせていただければと思っています。

 ギルマスやキンバリーさんからも了承は貰っていますので、そこの椅子に掛けて一緒に職業を選びましょう!」

 

 ささっとカウンターを回り込み、受付業務をシェミファさんとバトンタッチするなり、僕の手を引きテーブルにつく。

 

 ご丁寧に、ギルド職員が二人分の果実水を置いていってくれた。

 

 冒険者ギルドとしても、今回の件により、冒険者のレベルが上がらない原因に職業がかかわっていることが明らかになれば新しい発見の一つになるとのことで、表彰ものらしい。

 

 というのが、先程の話をしてくれた人の記憶が80年以上前のものなのと、書類での記録がない為きちんとした証明がされず、今回のケースで改めてギルド本部での承認が下りるのだ。

 つまり、あとは僕が職業を決めてレベルが上がったのを確認する作業だけ。


 このままいくと、第一発見者としてギルマスであるゴルダさんの名前が記録に残るらしく、この先冒険者ギルド内では昇進確実で物凄く名誉あることみたい。

 

 ゴルダさんからは、『とにかく今日中にソーヤの職業を決めてレベルを上げるように!』とのお達しまで出ているようだ。


 なので、マリーは僕が来るのを今か今かと待ち構えていたということ。

 出会うなりの、あのテンションは、マリーにも特別ボーナスが支給され、他の職員にもオコボレがありそうだから。

 誰も彼も、気合が入っている。


 ヤバい……。

 ますます言いづらい。

 

 2階に上がる階段の陰から、ギルマスがこっそり見ているのを≪気配察知≫が教えてくれた。

 

 今更言えない……。

 すでにレベルが上がっていることを、勢いに負けずあの場で言っておけばよかった。

 

 幸い、昨日シェミファさんにカードの更新を頼んだ時には内容を見られていない。

 あの機械にはカードの履歴が残るのだろうか?

 

 そんな話は聞いていないので、残らないだろう、と都合のいい方に考える。

 なんとかして隠し通さなければ。




いつも読んでいただきありがとうございます。


ストックが切れそうなので、しばらくは週に2~3話の投稿になりそうです。


書けた分から載せていくので、誤字脱字のご指摘を頂けると助かります。


またご意見ご感想、評価等頂けると更新の励みになるので、嬉しいです。


今後とも宜しくお願い致します。


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