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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
63/321

63.美容師~ようやくレベルが上がる


《気配察知》を意識しながら、同時に《聴覚拡張》も経験を積ませようと耳を澄ました。

 

 自分の歩く足音が耳に響いてくる。

 草を踏む音、ブーツの裏に付いた砂がパラパラと落ちる音、視界の外で鳥が囀る音……どのくらいの距離の音を拾っているのだろうか?

 

 確かめる術がないので、半径100メートルくらいかな、とアタリをつけることにした。


【気になります!】


 頭の中で声が響き、引きつけられる場所に意識を傾ける。

 何かいるようには感じない。

 

 けれど、《集中》と《観察》の発動を強く願うと、視線の先の枝葉が重なった場所に迷彩ミミズクを発見!

 

 枝部分は茶色に、葉の部分は緑にと斑模様の擬態をしている。

 器用なもんだな。

 

 関心していると、ターゲットと目が合った!

 向こうも見つかっているのがわかったようだ。

 

 一瞬で体色を焦げ茶色に戻し、枝を蹴った勢いを利用して迷彩ミミズクが飛び上がった。

 飛び立った後の枝の揺れが無償に気になるが、まずは向かってくる相手に集中することに。

 

 僕は左右の手に短剣を1本ずつ持ち、左の短剣で弾いて右で攻撃しようとイメージをして身構えた。

 けれど、迷彩ミミズクは僕の5メートル程手前で急に上昇し、届かない距離から羽を飛ばしてくる。

 

 撃退体制を崩された僕は、とっさに右へ転がるようにかわすが、右からも羽が飛んできたので、立ち上がらずに短剣を握ったまま両拳で地面を押して体を跳ね起こした。

 

 いつのまにか迷彩ミミズクがもう1匹、戦闘に加わっているのだ。

 たぶん、1匹目の後方に2匹目がいたのだろう。

 

 枝の揺れが2匹目の擬態と重なり、何かに違和感を覚えたのを思い出す。

 ただ1匹目が向かってくるのに焦り、きちんと確認出来なかった自分のミスだ。

 

 2匹は僕の攻撃が届かない距離を保ちながら、連携して死角に回り込むように羽を飛ばしてくる。

 

 こんなに飛ばして羽は無くならないのだろうか? なんて疑問を覚えるが、正直避けるのに精いっぱいで相手の心配までしていられない。

 

 攻撃手段にしているくらいなので、某妖怪の男の子のように飛ばした分は自然と生えてくるのだろう。

 

 木の陰に隠れて、2匹の射線から逃れた。

 《心肺強化》を意識して呼吸を整え、打開策を考える。

 

 近づいてもらわないと、僕からの攻撃が当らない。

 せめて1対1なら、《投擲》スキルで狙うのだが、2方向からの羽を避けるのに忙しく、狙いが定まらないのだ。

 

 さて、どうする……?

 迷彩ミミズク2匹は、空中にホバリングしたまま、こちらをうかがっていた。

 

 どこかに行ってくれてもいいのに。

 擬態を剥がれると好戦的になるのは本当のようだ。

 

 ギラギラと輝く赤い目が4つ、油断せずにこちらを見ている。

 このままここに隠れていても仕方ない。

 

 いっそ、2匹同時に《投擲》で狙ってみるか。

 どちらか片方にでも当れば、状況が少しは良い方へ向かうだろう。

 

 ただ、両方外して短剣2本を無くしてしまうと、一気に僕が不利になる。

 その為には、と。

 

 左手の短剣を鞘に戻し、ナイフに持ち変えた。

 大きく深呼吸をひとつ、ふたつ、みっつ。

 

 同時に木の陰から飛び出した。

 待ち構えていた迷彩ミミズク2匹が、タイミングをずらして羽を飛ばしてくる。

 それを転がり、飛び跳ねて回避しながら、2匹が視界の中に納まるように配置を考えながら動いた。

 

 ポーン、ポーン、頭の中で音がする。


【スキル 身軽のレベルが上がりました】


【スキル 脚力強化のレベルが上がりました】


 よし、体が軽くなったような気がする。

 跳躍力も増えた。


 急に僕の動きが良くなり、迷彩ミミズク達の戸惑いが伝わってくる。

 それを利用するかのように緩急をつけて揺さぶりつつ、両手を交差するようにして《投擲》スキルを意識し短剣とナイフを投げはなった。


「ゲェェ」


「グェェエ」


 短剣は1匹の頭に命中し、地に落ちた。

 ナイフの方は致命傷ではないが、片方の羽を切り裂いたのか、まだ宙をフラフラと飛んでいるので、すばやく近づいて短剣で切り落とした。


 ポーン、


【スキル 投擲のレベルが上がりました】


 よし、投擲も上がった。

 なんとかなったな。

 そう思った瞬間、


 ピロリロリーン~、テレテレテッテッテ~。

 

 昔懐かしいあの音楽が。


 

 シザーケースからノートを取り出して確認することに。


 ==


 名前 ソーヤ・オリガミ

 種族 人間 男 

 年齢 26歳

 職業:    

 レベル:2

 HP:20/30

 MP:20/30

 筋力:18

 体力:18

 魔力:18

 器用:36

 俊敏:20



 テクニカルスキル:シザー7 300/???

          《Lv1》カット


 ユニークスキル:言語翻訳《/》、回転《Lv5》、観察《Lv3》、好奇心耐性《Lv1》、調色《Lv1》


 スキル:採取《Lv4》、恐怖耐性《Lv2》、身軽《Lv2》、剣術《Lv3》、聴覚拡張《Lv3》、気配察知《Lv2》、投擲《Lv3》、集中《Lv4》、忍び足《LV1》、脚力強化《Lv2》、心肺強化《Lv1》、精神耐性《Lv1》


 称号:女神リリエンデールの加護


 装備:カットソー、ジーンズ、シザーケース、腕時計、短剣×2、ナイフ、革の防具一式、黒曜の籠手


 ==


 ようやく僕もレベルアップか。

 レベルアップ前のデーターが隣のページに残っていたので見比べてみた。

 

 HPとMPが10ずつ上がってる。

 筋力、体力、魔力、俊敏がそれぞれ2増えて、器用だけ4増えたのか。

 器用だけ4増えたのは何か理由があるのだろうか?

 

 ステータスの上がる数値も、個人の才能に由来しているのかもしれないな。

 これもマリー達か、リリエンデール様に会えたら聞いてみよう。

 

 ノートをしまい、考察終了。

 手早く迷彩ミミズクの討伐部位と素材、魔核結晶を剥ぎ取り、袋にしまう。


 

 地面を転がりまくったおかげで、体中土で汚れてしまった。

 こんな時くらいは、熱いお風呂に入りたいものだ。

 

 毎日水で絞った布で体を拭いてはいるが、そろそろ限界を感じてきていた。

 頭を思い切り洗いたいし、湯船に肩まで浸かってくつろぎたい。

 

 サッパリしたいんだ!

 決めた。

 今日こそお風呂に入るぞ!

 

 無ければ作ればいいんだ。

 樽にお湯を入れれば、ドラム缶風呂のかわりにはなるだろう。

 そうと決めたら、こんな所とはオサラバだ。

 

 《気配察知》と《聴覚拡張》で周囲を軽く確かめ、魔物の気配がないことを確認すると、《脚力強化》を使用して走り出した。

 

 スキルレベルとステータスのUPもあり、体が軽い。

 久しぶりにお風呂に入れるかもしれない喜びを(ぎょ)し切れず、僕は最速タイムでニムルの街まで戻った。

 

 門に立っていた衛兵から、「何かあったのか?」と心配されるくらいの勢いだったので、「何もない」と答えると、「紛らわしい!」と怒られてしまったのはご愛敬ということで。



いつも読んでいただきありがとうございます。


ご意見、ご感想、評価等頂けると更新の励みになるので、嬉しいです。


宜しくお願い致します。

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