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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
61/321

61.美容師~英雄か添加剤かを選ぶ

読んでいただき、ありがとうございます。


感想や評価を頂けて嬉しいので、もう一話投稿します。


今後とも宜しくお願い致します。


 ギルドの中は、いつもの倍くらい人がいてずいぶんと騒がしい様子だった。

 誰も彼もやる気が漲っているというか……無駄に元気で声が大きい。

 

 いつもは朝からテーブルの一角を占領して酒を飲みかわしている奴らも、今日はいない。

 ボードに貼られた依頼書を引きちぎるように手にして、依頼カウンターに直行する人ばかりだ。

 

 それに伴い、常時一つの受付カウンターには、職員が2人が立って応対している。

 それに、すれ違う冒険者達が僕を見るなり、ニヤッと笑いかけてきたり、肩や背中を叩いてきたり、いったいなんなのだろう?

 

 受付カウンターには、キンバリーさんとあの夜のシェミファさんだっけ。


「おはよう、ソーヤ君。今日も討伐依頼かい?」


「キンバリーさん、おはようございます。何かオススメはありますか? 冒険者の先輩として、また助言でも貰えるとありがたいですが」


「いいとも。マリーは今日遅番だから、僕が君にピッタリな討伐相手を紹介するよ」

 

 キンバリーさんも、ニコニコしていて機嫌が良さそうだ。

 何かいいことでもあったのだろうか。


「あの、皆さん今日は楽しそうですね。何かいいことでもあったんですか?」

 

 依頼書を捲っていたキンバリーさんが手を止めて僕を見ると、隣で別の冒険者のギルドカードを操作していたシェミファさんがプッと噴出した。


「楽しそうに見えるとしたら、それはあなたのせいだと思うわよ」


「僕のせいですか? 僕が何かしましたか?」


「したじゃない。Fランクのくせに単身で格上の魔物達の縄張りの中に出向いて、お姫様を颯爽と救助してきた英雄さん? 皆もそれを知っているからこそ、新人冒険者に負けていられないって、無駄にやる気が出ているみたいよ。いい添加剤ね、あなたは」

 

 だから視線が合うと、意味深な目を向けられていたというわけか。

 ただ、英雄よりは、添加剤の方がいいな。

 英雄なんて呼ばれる程、僕は立派な人間ではないし。

 

「シェミファ、口が悪いよ」


 キンバリーさんに窘められると、「はーい」と間延びした返事をして、彼女は仕事に戻って行った。


「彼女は口が悪くてすまないね。気分を害したのなら、かわりに謝罪しよう」


「いえ、全然気にしてないです。謝る必要はありませんよ。それより、いい討伐相手はいましたか?」


「そうだね。こいつなんてどうだろう?」


 言いながら、キンバリーさんがマリー特性の魔物図鑑を広げて見せてくれた。


「これってマリーの?」


「そうだよ。マリーは昼過ぎから出勤だからね。自分がいないうちにソーヤが依頼を受けにくるかもしれないから、来たら見せてほしいと置いていったんだ。

 それに本当はマリーが君の討伐相手は決めていたりするんだね。探している振りはしたけど、僕はそれを紹介するだけさ。いわゆる請負作業だね」


「それはそれは、お手数をおかけしまして」


「いやいや。これも仕事のうちだからね」

 

 なんて二人して和み合っていると、


「キンバリーさん、いつまでも遊んでないでこっちも手伝ってくださいよー! なんか無駄に格上の討伐依頼を受けたがる人が多くて、止めるので忙しいんですから!」

 

 シェミファからお小言が飛んできた。

 本当に口が悪い。

 ギルドに登録しに来たとき、相手をしてくれたのがマリーでよかった。


「さて、じゃあ仕事に戻ろうか。一応マリーの考えを予測する限りでは、ソーヤ君の戦闘スタイルに合わせたスキルの強化を狙っていると僕は考えるね」


「スキルの強化ですか?」


「そう、カードを貸してくれるかな?」

 

 カードを受け取ったキンバリーさんは、更新作業をしてスキル項目を表示させる。



 ==


 名前 ソーヤ・オリガミ

 種族 人間 男 

 年齢 26歳

 職業:    

 レベル:1

 HP:20/20

 MP:20/20

 筋力:16

 体力:16

 魔力:16

 器用:32

 俊敏:18


 スキル:採取《Lv4》、恐怖耐性《Lv2》、身軽《Lv1》、剣術《Lv3》、聴覚拡張《Lv3》、気配察知《Lv1》、投擲《Lv2》、集中《Lv3》、忍び足《LV1》、脚力強化《Lv1》、心肺強化《Lv1》、精神耐性《Lv1》


 称号:


 ==



「《身軽》、《投擲》、《集中》、《忍び足》、《脚力強化》、《心肺強化》……これらのソーヤ君のスキル構成から見ると、筋力よりはスピードを生かした戦い方ではないかな? 

 《剣術》のレベルは3だけど、4に上がるのに時間がかかっているって前に言っていたよね? 

 だとすると、《剣術》スキルのレベルを上げつつ、《身軽》や《脚力強化》のレベルアップ、その他の俊敏さに伴うスキルの取得を狙っているのかな、と思ってね」


「スキルって、狙ってレベルを上げたり取得することができるんですか?」


「確実にってわけではないけどね。この魔物と戦うと取得しやすいとか、レベルが上がりやすいってのはあるよ。

 無意識に使っていることが多いけど、わざと意識して行動するだけでも多少は違うし。冒険者ギルドの纏めたデーターでもそれは証明されている」


「だから、マリーは僕のスピード強化の為に、この魔物と戦わせようと?」


「たぶんね。僕の推測だから答えは本人に会った時にでも聞いてみてよ。 

 で、どうする? 受ける? それともほかの魔物にする? それはソーヤ君の自由だよ」


「受けます! この魔物の討伐でお願いします」


「了解。今、受注手続きをするからね。すぐに返さなくてもいいから、図鑑でちゃんと勉強してから出かけるんだよ」

 

 カードと図鑑を手渡され、空いた椅子に座り、魔物図鑑に目を落とした。

 

 

 本日のお相手は、Fランクの魔物、迷彩ミミズクだ。

 体調は50~100センチ程で、樹木や木の葉と体の色を一体化させ森に隠れて攻撃してくる。

 主な攻撃手段は、嘴と足の爪、自分の羽を飛ばしてくることもあるので注意とのこと。


 カメレオンとミミズクの合体したような感じかな?


『討伐部位は嘴だけど、左右の羽の裏に一枚ずつある赤い大きな羽根が高く売れるので持ち帰るのを忘れずに!』

 

 赤いインクで下線が引かれていた。

 まるで僕へ向けたメッセージのようだ。

 いや、その横に、


『魔核結晶も忘れないこと!!』と書き加えてある文字を発見。

 間違いなく僕へのメッセージだ。

 忘れないように気をつけよう。

 怖いから。


 図鑑をキンバリーさんに返却し、別れを告げて僕も気合を入れなおした。



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