58.美容師~マリーの冗談に恐怖を感じる
「カードの更新はしますか?」
もう怒ってないですよ、と告げるかわりに、優しい口調に戻ったので安心して顔を戻した。
「うん、お願いするよ」
「見てもいいですか?」
「もちろん、どうぞ」
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名前 ソーヤ・オリガミ
種族 人間 男
年齢 26歳
職業:
レベル:1
HP:20/20
MP:20/20
筋力:16
体力:16
魔力:16
器用:32
俊敏:18
スキル:採取《Lv4》、恐怖耐性《Lv2》、身軽《Lv1》、剣術《Lv3》、聴覚拡張《Lv3》、気配察知《Lv1》、投擲《Lv2》、集中《Lv3》、忍び足《LV1》、脚力強化《Lv1》、心肺強化《Lv1》、精神耐性《Lv1》
称号:
==
《調色》スキルがない。
やはりユニークスキルに分類されているのだろう。
僕がこのスキルを獲得できたのは、普段カラー剤の調合をしていて、経験値が持ち越されているから調色の才能があったということか?
「……またこんなに増やして……そもそも《忍び足》ってなんですか? 暗殺者ですか? それに《脚力強化》に《心肺強化》、《精神耐性》まで……ソーヤさん、、どれだけの修羅場を潜ったんですか?」
怒っているかと思ったら、心配されていたのか、マリーの目が涙ぐんでいる。
《精神耐性》はリリエンデール様の加護の弊害なので、マッドウルフは関係ないんだけど……そんなこと言えるわけはないので、
「まぁ、それなりに大変だったよ」
曖昧に答えるしかなかった。
「それにしても、やっぱりレベルが上がってないですね。マッドウルフを2匹も倒したのに、レベル1のままなんて、明らかに異常ですよ? ギルマスに報告しておきますね」
「ああ、よろしく頼むよ」
この問題の原因はすでに判明しているけれど、教えるわけにもいかないので、深刻そうな表情を作っておいた。
うまくできているかは別にして。
「大丈夫ですよ! ここではわからなくても、冒険者ギルドの本部ならきっと原因がわかるはずですから。そんなに気を落とさないでください」
どうやら、やりすぎてしまったらしい。
マリーの気遣いに心苦しくなる。
「ありがとう。でもそのうち、貯まっていたレベルが一気に上がったりしてね」
「そうですね、そんなこともあるかもしれませんね」
そんなことあるわけがないとわかっていても、僕の冗談のような言葉にのっかってくれるマリー。
なんとも優しいものだ。
騙しているようで、いっそノートを見せて全てを話してしまおうかと悩む。
悩むが……今はまだやめておこう。
信じてもらえず、また平手打ちを食らうのが嫌なのだ。
そうだっ!
僕はまだマリーに謝罪をしていなかった。
ので、
「マリー、今朝はごめんね。ちょっと冗談が過ぎたみたいで」
「今朝? ああ、そのことならもういいんです。わたしもとっさに叩いてしまって、すみませんでした。痛くなかったですか?」
「大丈夫だよ。僕だってこれでもFランクの冒険者なんだから、あのくらいどうってことないよ」
強がってみせるが、本当は結構痛かった。
体がというよりも、主に心の方が。
「ならよかったです。今度からは遠慮せずに避けてくださいね」
「う、うん。そうさせてもらうよ」
今度からは避けてください?
僕はこれから何度、マリーに叩かれなくてはいけないのだ?
思い悩んでいると、マリーの肩が小刻みに揺れだした。
手の平で口元を押さえて、笑いをかみ殺している。
「ソーヤさん、冗談なんですから、真剣に返さないでくださいよ」
冗談か……仕返しをされたということなんだろう。
マリーなりに、和ませてくれようとしたのかも。
「うん、でも本当にごめんね。今後は気を付けますので」
「そうですね。今後は変な冗談を言うときは気を付けてくださいね。次はパーじゃなくて、グーですからね?」
にっこりと微笑むマリー。
これも冗談だよね?
えっ、違うの?
どうなの?
いくら待ってもマリーの口からは、冗談ですよ、の言葉が出てこなかった。
僕も、怖くてそれについては触れられず、二人で微笑みあってその日は別れることに。
《観察》スキルを上げよう。
しかも早急に!
心のノートに重要! 赤ペンでメモをした。
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