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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
40/321

40.美容師~幼女に約束を破られ三度牢屋に入る


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


PV20000を越えました。


ブックマークも増え、感想や評価も頂けて、とても嬉しいです。


今後とも宜しくお願いいたします。

 泉に戻っている最中に完全に日が暮れてしまったようだ。

 

 暗闇の中、《視覚強化》と《聴覚拡張》、《気配察知》の3つのスキルを頼りに障害物を避けていく。

 

 泉のそばに近づくとぼんやりと明かりがあり、松明を手にした3人の兵が固まっていた。

 僕を見つけるなり、その中の一人が駆け寄って来る。

 冒険者ギルドに来ていた人だ。


「その子は!? どうやら無事のようだな」


 僕の腕で眠るメェちゃんを見て、ほぉっと大きな息を吐いた。

 彼も子供のことは心配していたのだろう。

 リンダさんの取り乱す姿を目にしているから余計にかもしれない。


「それにしても……ずいぶんな格好だな。大丈夫なのか?」


 今度は僕の心配まで。

 ずいぶんと彼は優し人のようだ。


「まぁ、なんとか歩ける程度には」


「その傷では辛いだろう。俺が変わろう」


 メェちゃんを受けとろうとするので渡そうとしたが、小さな手が僕の服を握りしめていて離れなかった。


「どうやら、お姫様はお前をご所望のようだな」


「光栄ですね。この傷さえなければですが」


 

 メェちゃんを抱え直し、兵達に先導されて森を抜けた。

 街の門が見えると、ようやく終わったと思うことができた。

 

 森を抜けてからは警戒を緩めたが、どこか気が張っていたのだ。

 篝火(かがりび)に照らされた門を潜ると、兵の詰め所から人が飛び出してきた。


「メイは!? メイベルは無事なの?」


 リンダさんがマリーを振り切って駆け寄って来る。


「ここにいますよ。疲れて眠っているだけです」


 メェちゃんの顔が見えるように体を傾けると、


「あぁ……あぁぁ……よかった。よかった……」


 僕の腕にもたれ掛かり、泣き崩れた。


「ソーヤさん! 無事ですか? よかった……怪我は? って……血だらけじゃないですか!?」


 遅れてやってきたマリーが、僕の全身を見回して叫ぶ。

 安心したり、叫んだり忙しいものだ。

 

 周りがうるさくて目が覚めたのか、モゾモゾと腕の中で動くメェちゃんをリンダさんに預けると、


「お母さん……?」


 小さく呟いた。


「そうだよ。お母さんだよ。もう大丈夫だからね。よく頑張ったね。今はゆっくりとおやすみ。寝ていていいんだよ」


 リンダさんが愛おしそうに娘にほお擦りする。


「……お兄ちゃんは?」


「お兄ちゃんはそこにいるよ」


 リンダさんが体の向きを変え、僕が視界に入るようにする。


「……お兄ちゃん」


 寝ぼけているのか、僕を見て嬉しそうに笑い、


「メェね。お兄ちゃんに頭撫で撫でされるの好きよ。また内緒で撫で撫でしてね」


 そう呟いて寝てしまった。


 

 ……空気が一瞬で切り替わるのがわかった。

 

 リンダさんが警戒するように僕から距離を取る。

 

 3人の兵が僕を取り囲むように陣形を組みつつ、


「ソーヤさん……ちょっとそこでお話をしましょうか? 

 皆さんもいろいろと聞きたいことがあるようですし。

 そうそう、傷の手当もしなくちゃですね」


「マリー? 違うよ? 違うんだよ。これには訳があって」


「はいはい、あとでゆっくりと聞いてあげますからね」


 僕はマリーに引きずられて詰め所に連行されたのだった。



 

「しばらくここで頭を冷やしてください」


 三度、僕は牢屋の中に入っている。

 

 子供を助け出した英雄から一転、傷の手当なんてしなくてもいいんじゃね、の扱いに変わってしまったが、マリーが頼み込んで救急セットを借りてくれた。

 

 事情聴取をされつつ、マリーに怒られつつ、傷の手当が終わった僕はとりあえず牢屋に入ることになったのだ。


 今後の僕の扱いは、明日の朝メェちゃんの話を聞いてから決まるらしい。

 自分の懲りない馬鹿さ加減と、子供の約束を信じた愚かさの両方に落ち込んでいると、見張りの兵がやってきた。

 

 その男は僕を見るなり、


「またお前かよ……ほんと懲りない奴だな」


 ため息混じりに言われてしまった。

 

 はい、僕もそう思います。

 

 とりあえずふて寝というわけではないが横になることにした。

 実際、体は疲れていて休息を必要としているからだ。


「大人しく寝てるなら寝てろよ。魔物と戦ったんだろ」


 そうなんだ。

 

 メェちゃんの父親を襲った狼と交渉し、その後マッドウルフ二匹と戦いになったと報告したら、よく生きていたな、と全員から褒められた。

 

 マリーからはどうしてそんな危ない目に合うんだ! と泣きながら怒られたが。

 

 その為に、牢屋には入れられたが、僕に対する態度はかなり軟化していたのだ。

 

 見張りの男もそれを聞いていたのだろう。

 懲りないなとは言われたが、どこか労るような態度が見られる。


「そうします。実は体中が痛くて」


 ゆっくりと寝転び、目を閉じると吸い込まれるように眠りに落ちた。

 ……はずだった。



読んでいただき、ありがとうございます。


感想、ブックマーク、評価等頂けると更新の励みになるので、嬉しいです。


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