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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
314/321

314.美容師~迷宮を攻略する15

 

 そんなこんなのフィクスさん無双で迷宮を進み、ボス部屋の前に到着。

 僕はまったく疲れていないのだが、一人でオークに魔法をぶっぱなし続けたフィクスさんは顔色も悪く、お腹の辺りを手のひらでさすっている。


 別に攻撃を受けて怪我をしたわけではない。

 魔力回復薬の飲みすぎでお腹がたぽたぽ状態なのだ。


「うぅ……お腹が痛い。というか苦しい。吐きそうだよ」


 3階層に来る前まではあんなに元気だったのに、今では病人一歩手前のような感じ。


「大丈夫ですか? 少し休憩してから入ります? それともいっそ街に戻りますか?」


 何度目かになるが、もう帰ろうと言ってはみるけど、


「やだよ。せっかくの迷宮攻略だよ?

 しかも誰も足を踏み入れたことのない生まれたての迷宮。お宝独り占め状態なのに、もったいなくて帰れないよ。

 それにここで戻ったら、ここまで来たのが無駄になるし、戻るとなったらまたあいつらの相手をしなくちゃいけないじゃないか! そんなのわたしには耐えられないね!!」


 悲鳴交じりに叫ぶフィクスさんをなんとか宥め、ならばボス戦をするしかないと気持ちを切り替える。


「それで、3階層のボスはなんだと思います? オークメイジとオークソードマンとかですかね?」


「うーん、順当にいけばそんな感じだとは思うけれど、わたしとしてはできればオーク意外だと嬉しいところだね」


「その可能性もあるんですか?」


「ないとは言い切れないけれど、たぶんオークメイジかなぁ」


 自分で言っていて、どんどんと元気を失っていくフィクスさん。

 はぁ、と大きなため息をひとつ吐き、


「よしっ! 嫌なことはさっさと終わらせて4階層に行こうじゃないか。こんな場所とは早急におさらばだよ!」


 そう言うなり、いつものように扉を押し開けボス部屋に駆け込んでいく。

 小さく魔言を紡いでいるので、出てきた瞬間に魔法で吹き飛ばすつもりなのだろう。


 僕も腰から月刀孤影を引き抜き、ボス部屋へ駆け込んだ。

 すると、


「マズイ!? ソーヤ君、部屋に入るんじゃない! 戻るんだ!!」


 焦った様子のフィクスさんがこちらを振り向き叫んだ。

 けれど、戻れと言われても急に止まることなどできず、2歩、3歩と前に進んでしまう。

 それでも戻ろうと後ろを振り返るが、扉は無情にもピシャリと閉まった。


「ああ、くそっ。やられた」


 拳で扉を叩き、悔しそうに顔をしかめるフィクスさん。

 滅多に見せないその表情に、僕は何が起きたのか不安になってしまう。


「こうなったら仕方がない。体調が万全じゃないのが癪だがソーヤ君もいるしなんとかなるだろう」


 そう言って、腰のポーチから魔力回復薬を取り出し、一気に飲み干す。


「ソーヤ君も魔力が減っているなら今のうちに回復薬飲んでおいて。たぶん本気でやらないと危ないかもしれないから」


「いえ、僕の魔力はほぼ満タンなので大丈夫です。それより、どうしたんですかそんなに焦って」


「ああ、ソーヤ君にはわからないか。

 あそこを見てごらん。壁の一番奥に青い宝石のような物が埋まっているのがわかるかい? あれは迷宮のコアと呼ばれているものでね、迷宮の最終階にあるんだよ。そして最終階のボス部屋には迷宮のコアを守る番人がいる。それが守護者と呼ばれる魔物。BランクよりのCランク以上は確定で、時にはBランクが出てくることもある。

 まさかこんな低い階層にコアがあるなんて思わなかった。どんなに生まれたての迷宮でも最低5階層はあるはずなのに」


「それってつまり、ここが迷宮の終点ってことですか? それで階層ボスのかわりにコアを守る強い魔物がこれから出てくると?」


「そうだよ。ほらっ、コアの前に魔素が集まりだしている。できればCランクでお願いしたいものだね。それならわたしとソーヤ君で倒すのもそんなに難しくない。Bランクでもちょっと厳しい戦いになるけれど、わたしもソロで何匹か倒した経験はあるし大丈夫さ」


 Cランクか……それならBランクの女郎蜘蛛よりかは弱い魔物だ。

 でも、あの時はCランクの『狼の遠吠え』、Dランクの『千の槍』、Eランクだったけれど『炎の杯』、それにDランクのタイムさん。


 僕を入れて総勢11人で、やっとの思いで倒せたのだ。

 いくらBランク冒険者のフィクスさんがいるとはいえ、オークを一人で相手してきたせいで魔力の残りも厳しそうだし、できれば僕がメインで戦った方がいいだろう。


 そう思って、フィクスさんの横に並び、庇うように一歩前に出る。

 気合を入れて睨みつけていると、魔素の塊が実体を持ち始めた。


 そこに最初に現れた色は赤。

 ぞわり、と背中に悪寒が走った。


 少しずつ、輪郭がはっきりとしてくる。

 オークとは比べ物にならない大きさの体。

 腕だけでも僕の体くらいの太さがある。

 そして、頭部には先端の尖った角のようなもの。


「……赤鬼?」


 呟く僕の隣で、


「最悪だ」


 フィクスさんも呟いた。


「まさかここにきてオーガだなんて。しかも赤色。レッドオーガ」




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