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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
250/321

250.美容師~戦闘を開始する

 

 ぼんやりした頭でぽかぽかの日差しを浴びていると、頭の中で急遽アラーム音が鳴り響く。

 これは……《危険察知》か?


 《気配察知》にはまだ反応がない。

 ならば、《集中》も継ぎ足して精度を上げてみれば何かが変わるかもしれない。


 《気配察知》の範囲がわずかだが広がり、数匹の魔物がこちらに向かって近づいてくることがわかった。

 3,4,5……マズイな、まだこの群れの後ろにも魔物がいるような気がする。


 急いで森を抜けて逃げるか?

 僕の焦りを感じとったのか魔物の気配を察知したのか、狼親子も立ちあがり鼻先を宙で揺らしてくんくんと鳴らしている。


 ただ、何故か狼親子達は、森の奥ではなく、森の入り口の方に向けて鼻を鳴らしていたりする。


 野生の感で何か危険が近づいてくるのはわかっても、その方向まではわからないのかな?


「逆だよ、逆」


 声をかけながらも、ジストは離れた場所で丸くなって毛玉と化しているので、片手で掴んでフードに収納。

 嫌そうに声をあげたが、今は構っている暇はないので無視することに。


「魔物がたくさん来る。お前達も一緒に逃げよう!」


「ワフッ」


 父狼から返事が来たので同意だと受け取る。

 けれど、どうやら間に合わないようだ。

 先頭集団がもうすぐそばまできている。


 このまま走っても、たぶん追いつかれて背中から攻撃をされる。

 ここで迎え撃つしかないか、

 せめて狼親子だけでも逃がすことを考えなければ。


「お前達は先に逃げろ! 僕はここで少し食い止めてから行く!」


 先に行け、と声をかけると、飛び上がった父狼がフードに前足をかけてぶら下がり、ジストを口に咥えてシュタっと下り立つ。


「任せてもいいのか?」


 訳がわからず暴れるジストを甘噛みしたまま父狼が頷いたので、「頼む」とお願いしてから魔言を紡ぎ始めた。

 ここを通すわけにはいかない。


 ならば、全力で殲滅するしかない。

 発動できるスキルは全てつぎ込み、魔力を練り上げる。


 それにしても数が多い。

 《集中》でブーストされた《気配察知》の範囲内に無数の魔物が存在する。


 幸いなのは何故か一列になってこちらに向かってくることだ。

 迎え撃つ場所も悪くない。


 ここには泉があり、水が溢れている。

 水属性魔法を得意とする僕にはうってつけの戦場だ。


 魔物が視界に入る前に、準備が終わった魔法を発動。

 『アクアウェーブ』で発生した激流が魔物を押し流していくのがわかる。


 魔力回復薬の手持ちはあるが、なるべく温存して使わなくては。

 昨日の報酬で体力と魔力の中級回復薬を購入しておいてよかった。


 指示をくれたフィクスさんには改めて感謝だ。

 本当はこの場にいてくれれば、こんなに嬉しいことはないんだけど。


 右手に弧影を握りしめ、左手の中指に嵌めた魔力発動体の指輪を意識して次の魔言を紡ぐ。

 泉の向こうに現れたマッドウルフの群れに向けて、左手で掴んだ『アクアブーメラン』を投擲!


 こんな時は、両利きで良かったと改めて思う。

 訓練の為に、慣れない左手で箸を使って米粒を摘まみ続けた自分を褒めてやりたい。


 弧を描いて飛んでいく水の刃が、右端から順番にマッドウルフを切り裂いていく。

 戻ってきて小さくなった刃の水を補充し、再び投擲。


 仲間が見えない何かに切り裂かれ怯んでいたマッドウルフだが、離れていると不利だと悟ったのか我先にと僕の元へ押し寄せてくる。


『アクアブーメラン』の軌跡を目で追いかけながら、ポーチから初級の魔力回復薬を取り出して一息で飲み干した。


 ここからは接近戦になるので魔法を連発できないが、余裕があるうちに魔力量を全開にしておいた方がいい。


 まだ僕はフィクスさんのように激しく動きながら魔言を紡ぐのは無理だ。

 弧影を振りながら、隙を見て少しずつでも魔言を紡がなくてはいけない。


 近寄ってきたマッドウルフの先頭集団と後続の空間に『アクアウォール』で壁を出し分担するのに成功した。

 まずはこちら側に残された5匹をすばやく確実に倒すんだ。


 相手の動きに合わせて2歩前に進み、右手の弧影で顔を切り裂き、左手に持っていた水の刃は投げずに剣の代わりにする。


 不可視の刃で腹を切り裂かれたマッドウルフが内臓ごと血をまき散らし、一瞬だけ僕のことを隠してくれた。


 その数秒の間に、大きく右から回り込み、僕を見失っていた最後尾のマッドウルフを横から奇襲する。


 孤影と水の刃をクロスするように同時に振り抜き、そのまま力強く地面に叩きつけた。


 これで、あと2匹。

 ちらりと見た水の壁は横一直線に広がっていて、微かに向こう側が透けて見えるが黒い影がひしめき合っているようだ。


「このまま逃げちゃだめかな」


 4匹目と5匹目をそれぞれ両手の刃で相手をしながら、鋭く振り抜いた孤影で致命傷を与えた。


 壁は……勢いが弱まってはきたがまだある。

 後ろを振り向くと、狼親子が離れた場所で僕を待っていた。


「よし、このまま逃げよう!」




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