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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
248/321

248.美容師~この世界について学ぶ

新作、『異世界で忘れ物をすると大変です』の投稿をはじめました。


不定期更新ですが、読んでみていただけると幸いです。


 

 真夜中から明け方にかけての時間にリリエンデール様に呼び出されることが多い。

 寝ている最中に精神だけとはいえ起きているのだから、寝不足になりそうな気はするが、実際はすこぶる気分がいい。


 あれ程綺麗な髪の毛を好きに触らせてもらっているからなのか、はたまた女神様の不思議な力で癒しを受けているからなのか、それはわからないが僕的には大満足だったりする。


 というわけで、今日も目覚めは完璧で、元気にお仕事にいくとしよう。


 かといって、昨日の出来事もやはり心のどこかで気がかりだったりするのだが、考えていても仕方がない。

 普段通りにするしかなく、気にしないしかないのだ。


 ギルマスの言う通り、なんらかの嫌がらせがあるのかどうかすらわからないし、あの男だって一晩寝たらすっきりして、僕のことなんてもうどうでもいいと思っているかもしれないし。


 両頬を叩いて気合を入れ、その音にびっくりしたのか起きてキョロキョロしているジストを定位置のフードに収納して出かけることに。



 冒険者ギルドに向かう間、ギルマスに教えてもらったこの世界について考える。

 マリーの後を追いかけて逃げ出したギルマスを捕まえて、不勉強だった国や貴族について教えてもらったのだ。


 かといって少しの時間で一度に詰め込める量の知識ではなく、かなり端折って説明してもらったので、足りない分は追々と増やしていく必要はある。


 頭の巡りをよくする為に、路地に足を向けながらシガーを口に咥える。


 この世界、つまりトリーティアには人種の治める国が4つあり、ラルーカ王国、スロベア王国、キッカ帝国、聖国であるローゼンとされる。


 僕が暮らしているニムルの街が含まれるのはラルーカ王国で、冒険者ギルドで働くギルマスやマリーはラルーカ王国の住民ということになる。


 人種以外が暮らす国、残りの3つは、妖精種であるエルフの国フィントとドワーフの国ガルムクルト、そして獣人種の暮らすグリード。


 四葉のクローバーの形をした大陸には7つの国があり、中心付近に人種の国が位置する。


 他の三国は自然と大陸の端に分かれることになり、西側にドワーフの国があり、東側にエルフの国、南側に獣人の国がある。


 人種の国の中では最北端にあるニムルの街が含まれるラルーカ王国。

 西側にスロベア王国、東側にローゼン、南側にキッカ帝国の配置だ。


 国の規模としてはラルーカ王国とキッカ帝国がほぼ同じ程度、少し落ちてスロベア王国があり、ローゼンとなる。


 ただこのローゼンという国は他の3つとは違い、所謂宗教国家で7柱の女神様を称える国となるので、治めているのは王や皇帝ではなく教皇だ。


 例の禁忌を世界に足らしめているのもこの国であり、僕にとってはある意味敵とも言える。


 だからと言って、戦いを挑むわけではないし、僕一人ではどうすることもできないので、ひっそりと心の中で敵認定しているだけなのだけど。


 人種以外の治める国、フィント、ガルムクルト、グリード。

 この3国はその面積も少なく、暮らしている者も多くはない。


 人種に比べると圧倒的に少数なのだ。

 そして滅多に外には出ないので、ほとんど出会うことがないらしい。


 たまに変わり者がいて、フィクスさんのように旅をしていたりするので、冒険者等をしていると出会うこともあるのだが。

 フィクスさん、今頃どこで何をしているのかなぁ。


 ぼんやりと思い浮かべると、美形な顔ではなく、きらめく金髪が脳裏に過る。

 せめてあの髪の毛を整えさせてほしいものだ。

 ため息交じりに煙を吐き出す。



 いけない、思考が逸れた。

 眉間を指でもみほぐしながらも、ギルマスの言葉を思い出す。


 今回、僕が揉めたあの小太りの男はラルーカ王国で子爵の位を持つ家、マキシード家の長男らしく、父親のバルトロメロ子爵は軍事系の派閥で王国軍を牛耳っている人物らしい。


 ギルマス曰く、かなりの人格者らしく、一人息子のバリスタインに甘くもあるが、若いうちは冒険者として活動し体と心を鍛えるようにと家から追い出したとか。


 ずいぶん昔に、手紙で何度か相談されたこともあるらしく、ギルマスも覚えていたようだ。


 あんなに我儘放題に暴れていることを知られれば、最悪家から勘当されることもありうるとか。

 だからあの場では父親に告げ口されることを恐れて大人しく引いたと考えられる。


 王都近くで無茶をくり返していたので父親にバレそうになり、目の届きにくい辺境であるニムルの街に来たのではないか。


 うん、たぶんそうだろう。

 僕もギルマスの予想は間違っていないような気がする。


 できれば今回の件が父親の耳に入って、すぐにでも連れ戻しにきてくれればいいのに、なんて思っているとギルドに到着。


 吸殻を灰皿代わりにしている革の小袋に入れて、腰に吊るしているシザ―ケースにしまう。


 こうしておくと、何故か吸殻が消えてなくなるから、不思議だけど便利だ。

 もしかすると、新しく再利用する原料になっているのかも。



 受付に進むとキンバリーさんがいて、念の為に今日はマリーが休みだと聞かされた。


 父親がいない自宅に一人でいるのも不安なので、ギルマスの家で奥さんと一緒にいるとのこと。


 さすがにギルマスの自宅には手出しができないだろうとの作戦だ。


 それならそれで安心ですね、と頷き合い、キンバリーさんからも注意するようにと心配された。

 なんならしばらくはこの街を離れるのもありだとも。


 そこまでするほどのことなのかな、なんて楽観的に考えていた僕がいけなかったのか……この後すぐに後悔することになる。


 大丈夫ですよ、と笑い飛ばしていた自分を殴り飛ばしてやりたいくらいに。




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