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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
240/321

240.美容師~戦闘スタイルについて考える

 

 夕飯を取る前に冒険者ギルドに寄ってマッドウルフの討伐依頼の報酬を貰った。

 売却部位も売り払い、フィクスさんと二人で山分けに。


 おかげで財布代わりのポーチの中身がだいぶ潤った。

 明日はグラリスさんに借金の返済に行くとしよう。



 夕飯を食べ、果実酒を飲みながらフィクスさんから僕の戦闘についてのアドバイスを受けた。


 エルフって酒豪キャラだっけ? と思う程の勢いでフィクスさんが果実酒を飲み干していくので、つられるように僕の杯を開けるペースも早まり、最後の方はほとんど記憶がなかったりする。


 僕の中での酒豪キャラのイメージはドワーフの方だったんだけどな。

 もっさんに聞いて答え合わせがしたいが無理なので諦めよう。


 夜も更けて、どうにかこうにか宿までは帰ってきたみたい。

 朝日が眩しく、目が覚めたらいつもの自分の部屋だった。


 かすかに痛む頭を押さえながら部屋を見回したがフィクスさんの姿はない。

 無事にどこかで眠っていてくれればいいが。


 僕以上に酔っぱらって歩くことすらできていなかったフィクスさんを思い出し、少し不安になっていると、


「あっ、ジストは!?」


 一瞬で残っていた酒気が吹き飛んだ。

 ベッドの上を見渡すがいない。


 フィクスさんと討伐を受ける際に、マリーに預かってもらい、報酬を受け取る時に返してもらった。


 酒場のテーブルの上でフィクスさんに突かれ、嫌な顔をしながら肉をかじっていたのは覚えている。


 いつのまにかテーブルの上で丸くなって眠ってしまったのでそのままにしておいて、酒場から帰る時……確か片手で掴んでいつものようにローブのフードに入れて……足元でクシャクシャになっていたローブを掴んで持ち上げると、コロンと黒くて丸い塊が零れ落ちてきた。


 よかった、ちゃんと一緒に帰ってきたようだ。

 ジストは丸くなったまま、まだ眠りを貪っている。

 指で突いてみたが、まったく起きる様子がない。


 そういえば、僕がトイレに行っている隙に、面白がってフィクスさんが果実酒を舐めさせていたのを思い出した。

 アルコール中毒とか大丈夫なのだろうか。


 寝息はすやすやと心地よさそう。

 苦しんでいる様子はない。

 この分なら問題なさそうだ。


 大量にかいた冷や汗と一緒に残っていたアルコール成分が抜けたのか、僕の二日酔いもどこかにいってしまったようだ。

 備え付けのタライに水属性魔法で水を出し、顔を洗ったらすっきりとした。


 さて、今日はグラリスさんのところに行って借金の返済をするんだっけ。

 今日の予定を頭の中で組み立てながら、着替えて出かける準備をする。



 軽く朝食を取り、眠ったままのジストをローブのフードに入れて街を歩く。


 顔馴染みの果物屋のおじさんから、ジストの好物の黄色い果実を1個分けてもらい、グラリスさんの店までのショートカットができる路地に入った。


 シザーケースからシガーを取り出して、一本咥えてジッポで火をつけた。


 そういえば、この世界に来てからはオイルを足していないので、いずれ火がつかなくなるはずだ。

 オイルの代わりの何かを見つけておかないとな。


 ミントのような香を煙と一緒に肺まで吸い込み、ゆっくり細く吐き出した。

 いつもながら頭がすっきりとして思考がクリアになる。


 ちょうどいいので、昨日フィクスさんから言われたことを思い出し、今後の課題として自分なりに纏めておこう。

 Bランクの冒険者らしく、的確な助言をたくさんくれた。

 



 フィクスさん曰く。

 剣士としての僕の腕はDランク相当。


 ただし、長剣ではなく短剣を使っているのでリーチが短く攻撃力に乏しい。

 それに剣が短い分、敵に対して一歩踏み込む必要があるので、今後もすばやさを中心に鍛錬を積むように言われた。


 あとフィクスさんがしきりに悩んでいたのは、僕が戦闘中に時々短剣を回転させていたからのようだ。


 筋力の少なさをカバーする為に何かしているのでは? と考えていたようだが、ただ単にマッドウルフの爪を弾いているのだと伝えたら、しきりに感心していた。


 すでに酔いが回っているのに、実際に見せてくれと酒場で剣を抜いた時は正直焦った。


 周りのテーブルで飲んでいた客は驚き椅子から転げ落ちたし、冒険者達は何事かと己の武器に手をかけて鋭い視線を飛ばしてきたのだ。


「なんでもありません。ちょっと酔っ払いすぎているだけなので」


 とっさにフィクスさんの手を掴み、ぺこぺこと頭を下げると、皆は苦笑やヤジを飛ばしながらも許してくれた。

 当の本人であるフィクスさんはとても不満そうに頬を膨らませていたけれど。


 ギルマスではないが、236歳もの大人が常識を少しは考えてほしい。

 しかも子供みたいに頬を膨らませて怒られてもこちらが困るというものだ。


 なんとかフィクスさんを宥め、また今度とあやし、酒を飲ませてけむに巻くことにした。


 ナイス僕!

 今思い出しても、自分自身を褒めてやりたい。


 まぁ、纏めると。

 僕の剣の実力はDランク相当であり、長剣ではなく短剣を使っているので今まで通りスピード重視でやっていくように、とのことだ。




 

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