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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
237/321

237.美容師~フィクスと討伐に行く

 

 異世界に来た僕は、ついにエルフに会うことになった。

 人種だけではなく獣人種や妖精種のエルフがいることは話には聞いていたが、このニムルの街では見かけることはなく、まだまだ空想の存在だと思っていたので軽くショックだったりする。


 でも魔物がいて、剣と魔法の世界で暮らしている時点で、僕の概念なんてあってないようなものなので、今更と言えば今更だ。


 それでも獣人種や妖精種のエルフはこの世界では少数で珍しい存在なので、マリーもエルフに実際に会うのは初めてとのこと。


 ギルマスは冒険者時代に一時期、一緒に旅をしていたことがあるらしく、旧友と呼べる存在らしい。


 ちなみに、妖精種にはエルフの他にもドワーフがいて、ドワーフは背が低く髭を生やしていて鍛冶が得意。

 僕のイメージのままだ。


「ほらほら、証拠だよー。見てみてー。耳が少しだけ長くて尖っているでしょー?」


 髪の毛をかきあげて、フィクスさんがほんの少し尖った耳を見せてくれた。


 漫画やアニメでよく見たエルフはかなり細長い耳をして先端が尖っていたのだが、フィクスさんの耳は人種の耳と比べても少し長くて先細りになっている程度だ。

 言われなければ気がつかなかったかもしれない。


「わたしの母親がエルフで父親は人種なんだよねー。だから生粋のエルフに比べると耳も短いし先端も少し丸いかな」


 所謂ハーフエルフというやつらしい。


 ただよくある物語のように、『混ざりもの』ということで迫害等はされることはないらしく、エルフの特徴が濃く出ていればエルフとして扱われ、同族として認めてもらえるようだ。



 というわけで、僕はエルフとのファーストコンタクトを終えた。


 見た目が絶世の美男子なのはいい。

 けれど、もっさんに聞いていたクールなイメージはどこに行った?


 236歳なのにどこか人懐っこいエルフ、フィクスさんと共に、僕は魔物の討伐依頼を受けることになる。


 その際、ギルマスとマリーからはフィクスさんの探し人が自分だとバレないようにしろと注意を受けた。


 どうもフィクスさんの持っている情報が古いのと、王都に伝わるまでに間違った情報に変化している部分があり、『風属性の魔法を使うEランクの魔法使い』という風に伝わったらしい。


 幸い現在の僕はというと、『水属性の魔法を使うDランクの魔導師』なので、このまま知らない振りをすれば誤魔化せるんじゃないか、という見通しだ。


 僕も戦闘狂との模擬戦はもうお腹一杯だし、自分からバラすようなことはしたくないので、おとなしく従うことにした。



 フィクスさんとの討伐に選んだ相手はEランクの魔物、マッドウルフだ。


 本来はBランクのフィクスさんからすれば格下もいい所なのだが、以前モイラちゃんからもマッドウルフが増えすぎていて討伐してほしいと言われていたし、案の定ギルマスからも同じように頼まれた。


 今回はフィクスさんにこの付近を案内するという目的だし、剣や魔法を使っての戦い方をレクチャーするには相手は選ばないというフィクスさんの言葉もあり、流れのままに2人してマッドウルフ討伐の依頼を受ける。


 街についたばかりのフィクスさんではあるが、回復薬等はまだ手持ちがあるし補充する必要はないとのことなので、早速ニムルの森に繰り出すことに。

 あの狼親子はいるだろうか。



 街の門を抜けてニムルの森に入ると、自然と目についたキノコや薬草等を採取しながらマッドウルフの縄張りをめざす。

 残念ながら湖の周りには狼親子の姿は見えず、そのまま素通りして先に進む。


「お、ソーヤ君。気づいてるかな? 右方向からマッドウルフが三体近づいてきてるよ」


 狼親子を探す為に《気配察知》を発動していたが、まったく気がつかなかった。

 それもそのはず、


「んー、だいたい500メートルくらい先かな」


 フィクスさんの感知能力は、僕の《気配察知》よりもだいぶ広いようだ。


 同じ《気配察知》スキルを使用しているのか、もしくは他の似たようなスキルを用いているのかはわからないが、これくらいBランク冒険者なら当たり前なのだろうか。


「ずいぶんと遠くまで感知できるんですね。僕にはまだ気配がわかりません」


「ソーヤ君は《気配察知》のスキルかな? レベルは3~4くらい? それだとちょっと距離があるから難しいね。

 わたしは風属性の魔法で探っているから、半径1キロくらいはいけるよ」


 そうこうしている内に、僕の感知できる範囲内にマッドウルフが走り込んでくる。


「最初はどうする? わたしから行く? それともソーヤ君からやるかな?」


 3匹か。

 魔法で先制すれば問題なく倒せると思うけど……、


「できればフィクスさんから先でお願いできますか? 僕は後攻で」


「了解。わかったよー。なら、少し離れて見ているといい」


 軽い感じで片手を上げたフィクスさんが、腰に吊るしている細剣を音もなく抜いた。

 けれど剣を手にしたフィクスさんは構えるでもなく、ブラリとぶら下げたまま自然な感じで1歩2歩と前に進む。




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