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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
233/321

233.美容師~理想の存在に出会う

いつのまにか、ユニークが10万を達成していました。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


 

 数日経つと気温はぐんぐんと高くなり、夏も本番となったのか、エアコンなんてないこの世界では夜も寝苦しい季節となってきた。


 毛で覆われているジストは見ているだけで暑苦しく、嫌がるジストをなんとか宥めながらも、少しずつ毛束を取り分け三つ編みをしていくと、大分すっきりとした見た目になった。


 ジスト的にはいつも視界を塞いでいた黒い毛が消え去り不思議そうにしていたが、今度は揺れる毛束が気になるのか落ち着かない様子を見せていた。


 それでもしばらくすると慣れたのか、体を洗ったあとはわりと大人しく編ませてくれるようになったので、本人的にも気に入ったみたい。


 マリーやメェちゃんからも可愛いと評判が良く、僕的にも気に入っている。

 何より毎日ジストの毛を編ませてもらうだけでも、僕としては楽しく嬉しい時間だったりする。

 これも立派なスキンシップと言えば、リリエンデール様も納得してくれるだろうか。



 朝食を取り、装備を整えて冒険者ギルドへ向かった。

 ジストは自分の足で歩きたいのか、しきりに下に降りたがるが、人が多くて迷子になってもいけないので、街の中ではフードの中にいてもらう。


 周りが気になるのかな。

 ジストはフードの中で身を捩りながら、顔だけだしてきょろきょろとしているようだ。


 時折、不思議なものを見るように視線が飛んでくるので、皆もジストに気がついているのだろう。

 顔見知りになった商店や屋台等の店員に挨拶を交わしながら冒険者ギルドに到着。

 さて、今日はどんな依頼を受けようか。



 いつも開け放たれたままのギルドの扉を潜り受付へと向かう最中、僕は、そこで神を見た。


 いや、神のような髪を見た。


 キラキラと光り輝く黄金の髪の毛。

 定規で一本一本線を引いたかのように、それが真っ直ぐに流れ落ちている。


 赤やオレンジかほんの少し混じる茶色が多く、この世界に来てからは一度も目にしたことのないその色彩。

 僕は吸い寄せられるようにふらふらと近づき、自然と右手が前に伸びていた。


「ソーヤさん!!」


 大声で名前を呼ばれて、一瞬動きが止まる。

 そして、金色の髪の毛がふわりと揺れて、その持ち主が振り返った。


「ん? 何かな? わたしに何か用かい?」


 神の髪の毛を持つ人物が怪訝そうに僕を見る。


「いや、あの、用というかなんというか」


 しどろもどろになりながらも答えを探していると、


「ソーヤさん! ダメですよ!!」


 マリーが怒りの表情を浮かべて、


「今すぐその手をしまってください!」


 と僕の右手を指さした。


「手? 手がどうかしたのかい?」


 金髪の持ち主が、宙で浮かんだまま止まっている僕の右手を見た。

 不思議そうに小首を傾げ、流れ落ちる髪の毛を手でふわりとかきあげる。


「おおぉ」


 さらさらさら、と光を反射しながら髪の毛が流れ落ち、僕はその光景に目を奪われて固まってしまう。


「さ、触りたい」


 小声で呟いた僕の言葉を聞き取ったのか、それとも読唇術でも使えるのか、


「ソーヤさんっ! ダメですよ!」


 マリーが大声で注意してきた。


「触りたいって? 何を? もしかして、わたしの髪の毛を触りたいの?」


 胸元まで流れ落ちている金髪を手で弄びながら、その持ち主が聞いてきたので思わず頷きそうになると、


「ダメです! フィクス様、危険です! 今すぐソーヤさんから離れてください!!」


 マリーがカウンターから手を伸ばして、自らの方に力強く引っ張った。


「おっと、なになに? そんなにこの人は危険なのかな?」


「そうです! ある意味、この状況ではとんでもなく危険な人物です。

 ソーヤさん、ゆっくり、ゆっくりですよ。とりあえず2歩、後ろに下がってください」


 言われた通り、しぶしぶ僕は距離を取った。

 その間も、僕の目は黄金の髪の毛に釘付けだったりするのだけど。


「フィクス様、できれば今すぐこの街を出てもらえたりしませんか?」


「いやいや、出て行けって酷くないかな? わたしは今この街に着いたばかりなんだけど?」


「それはこちらも重々承知しています。それでもそこをなんとかなりませんか?」


「なりませんよ。申し訳ないけど、しばらくはこの街に滞在するつもりだからね。

 わざわざ王都から長い道のりをかけて来たんだし、まだ目的も果たしてないのに」


「そうですか。それならあまり無理は言えませんね。できるだけ早く目的を果たして出て行ってくださいとしか、こちらからは言えませんし」


 マリーと金髪の持ち主が、二人で何やら話し合っている。

 けれど僕にとってはどうでもいいことだ。


 僕は≪観察≫を使用して、ある部分を凝視する。

 見れば見る程ため息が出てしまう。


 ヘアオイルを塗って丁寧にロールブラシでブローしたかのような、癖のない艶のある髪。

 この世界では見かけない天使の輪が白く浮かび上がっている。


 唯一残念なのは、揺れる毛先が綺麗に整えられていないということ。

 場所によって長さがバラバラなので、アウトラインが微妙に崩れている。


 それにわざとこんな髪型にしているのだろうか?

 右側は前下がりなのに、左側は前上がりになっていて、完全にアシンメトリーだ。


 これも個性といえばそれでいいのだけど、僕からするとバックとの繋ぎ部分が気に入らない。

 もっと自然な感じにあの辺りから繋げて……いや、あえてあそこはあのままの長さで、トップ部分からレイヤーを入れていって……




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