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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
193/321

193.美容師~魔法の修行をする


 マリーが帰った後は師匠と秘密の特訓場所へと移動して、つきっきりで魔法の指導をしてもらった。


 当然メェちゃんには約束を破ったせいで涙を見せられてしまい、マリーとリンダさんにも協力してもらって、なんとか宥めることには成功した。


 ただ、今度時間を作って一日メェちゃんと遊ぶ約束をかわりにさせられることにはなってしまったが。


 水属性の魔法を初級からお浚いをし、中級の魔法を魔力がもつ限り撃ちまくる。

 とはいっても僕の魔力量はあまり多くはないので、すぐに枯渇しそうになり長い休憩をとることになった。


 途中で夕飯を挟み、食後のお茶を飲んでいると、ふとした瞬間に師匠が口にした。


「ソーヤ、あんた土蜘蛛や女郎蜘蛛を倒してレベルもそこそこ上がったんだろう? あまり魔力量は増えなかったのかい?」


 師匠には討伐依頼に出かける前の最大魔力量は伝えてあるので、魔法を発動させた数と状況から推測して、以前より増えていないことに気がついたらしい。


 僕としてはバレてしまったか、と答えづらい質問だが嘘をついても仕方ないので正直に答えるしかない。


「えーと、とある事情があり、レベルは上がっていません。ので、魔力量も変わっていません」


「嘘だろ? まさか、1つも上がってないのかい?

 確かあんたのレベルは一桁で、土蜘蛛を何匹も倒して、女郎蜘蛛の戦闘にも参加したんだろ? それだけ格上の魔物を倒しておいて、そんなことってあるのかい?

 そもそもとある事情って……あんたまだ、何かわたしに隠しているね? それは言えることなのかい? 言えないことなのかい?」


 またもや答えづらい質問をされてしまった。

 隠していることはたくさんあるし、言えることもあれば言えないこともある。


 リリエンデール様のことに関しては、言っていいのかすら判断がつかないし。

 この際、言えることに関しては全て話してしまうのもいいかもしれない。


 僕の中では一大決心ををしていたのだが、長く時間をかけすぎてしまったのか師匠は妙な気をまわしてしまい、


「まぁ、いいさ。わたしにだって、いくら弟子にだとはいえ言えないことはあるさね。無理に話す必要はないよ」


 なんて、とても聞き分けのいいセリフを吐かれてしまった。

 僕としてはタイミングを逃してしまった格好になってしまい、曖昧に微笑むことしかできなくなってしまった。




 それから5日が経った。

 朝起きると毎日師匠の元に訪れ、朝から晩まで魔法の修行をして過ごしていた。


 文字通り、朝から晩までびっしりと訓練をしているので、夕飯をごちそうになって帰る頃にはヘロヘロ状態。


 100%魔法の修行なので体力的には楽なものなのだが、そのかわりに精神が酷使されていた。


 僕の魔力量が少なすぎるのが問題で、一日に何度も魔力切れを起こしてしまうので、その疲れが修行の終わりと同時にどっと襲ってくる感じなのだ。


 ただ、それは僕にとって昔のある経験を思い出させる。


 一日の営業が終わると、終電までびっしりと練習していた美容師のアシスタント時代の練習を思い出し懐かしい感じだ。


 タイムを計り、試験に向けて1回1回集中を高めて練習を行うので、精神的な疲労が半端なかった。

 その当時とよく似ているのだ。


 疲労感を漂わせながらも、何故か満足そうに笑う僕を見て、師匠は何を勘違いしたのか、僕の疲労が限界を突破してしまったと思ったらしい。


 申し訳なさそうに明日は一日休みにしてくれたので、何をしようか考えながら宿までの夜道を歩いていた。


 すぐにメェちゃんと約束通り遊ぶことを思いついたのだが、あいにく明日はリンダさんと出かける用事があるとかで断られてしまった。


 残念、タイミングが悪かった。

 また誘うね、とメェちゃんに新たな約束をし、せっかくなので一日ゆっくりとしようかと思い直した。


 正直、毎日の疲れがたまっていたのも事実だし、また明後日から魔法の修行が再開されるのは確実なので、師匠の言うとおり、体と心を休めるべくリフレッシュすることにしょう。


 そういえば、あの狼の親子は元気だろうか?

 もう一週間以上会ってないな。


 よし、明日はニムルの森に行ってみよう。

 会えればいいし、会えなくても草の上に寝転んでのんびりと過ごせばいいや。


 ちょうど宿に着いたので、女将さんに挨拶して部屋に戻り、心地よい体のダルさとともにベッドにもぐりこんだ。



 翌朝、目が覚めると朝食を食べて朝からお風呂に入った。

 もはや僕の朝風呂は女将さんや宿の泊まり客の中では、また変なことをしているくらいの認識なので、その時間帯は庭に出てくることもなく目に触れることはない。


 けれど、一応はアンジェリーナとの入浴は控えている。

 万が一誰かに見られて騒がれるのは面倒だから。


 早く自分の家を持ちたいものだ。

 そうすれば誰に気がねすることなく、好きな時に好きなように入浴できるのに。


 ケネスさんとの模擬戦が終わったら、お金を貯めて家を借りることを視野に入れてみようかな。


 最近覚えた風属性魔法というか、僕のオリジナル魔法になるのだけれど、親指と人差し指で作った円の中から温かな風を出し、濡れた髪の毛を手早く乾かす。


 使い勝手はドライヤーの持ち手部分ではなく、筒部分を持つような感じだ。

 ブローの時にやり慣れているので、違和感等はまったくない。

 便利な魔法を覚えることができてとても嬉しく思う。


 ちなみにアンジェリーナはロールブラシとこの魔法でブローされていて、ピカピカのツルツルストレートヘアーになっている。


 最近は毎晩疲れて帰ってきているので、シザーの開閉練習やアンジェリーナとの触れ合いも少ないが、模擬戦が終わったら次は縦巻ヘアーにしてあげようと思っている。


 一応は魔物が出没する森に行くので壊れた防具の中からまだましな物だけを選んで身に着け、グラリスさんに借りた短剣を装備して準備完了。


 1階に降りると、予め頼んでおいたお弁当代わりのパンを女将さんから受け取り、冒険者ギルドに寄ってからニムルの森に出かけることに。


 


 




 

読んでいただきありがとうございます。

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