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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
178/321

178.閑話 ケネス~思考する

いつも読んでいただきありがとうございます。


いつのまにかPVが50万を越えていました。


今年も今日で終わりですね。


皆様にとって、良い一日になりますように。



 立ち上がり、椅子を蹴飛ばし部屋を飛び出そうとするが、がっしりと腕をつかまれた。

 その手の主はたいして力を入れているわけではなさそうなのに、決して振りほどけそうにない。


 さすがは元高ランク冒険者といったところか。

 こんなことでも力の差を感じる。

 私もまだまだ修業が足りない。


「落ち着けケネス。またお前の悪い癖が出ているぞ。今は座って俺の相談にのってくれや」


 そうだった。

 ギルマスに呼ばれて、私は相談にのっていたのだった。


 落ち着こう。

 こういう時は深呼吸だ。


 大きく息を吸ってゆっくりと細く吐き出す。

 3回程繰り返すと、少しずつ落ち着いてきた。


「申し訳ありません。これは私の病気のようなものでして」


「わかってる。そんなお前だからこそ俺も相談役に選んだんだ」


「失礼しました。それで、相談とは?」


「率直なお前の意見を聞かせてほしい。お前がご執心のソーヤのことだ。冒険者ギルドとしては、今後のあいつをどう扱おうか悩んでいる。

具体的には今回の功績を考慮してあいつのランクを上げるのがいいと思うんだが、お前どう思う?」


「彼の冒険者ランクを上げるのですか? 私は賛成ですよ。彼はEランクの枠なんてとっくに飛び出していますし。

 ただ冒険者ギルドからの特別な報酬としてということなら話は別ですね。対価としては少し弱いような……無理に今上げなくてもどうせすぐに自力で上がるでしょうし。

 彼本人にとっては、要は遅いか早いかだけの差ではないでしょうか?」


「やはりか……お前もそう思うよな。

ただ俺の一存で決められるとなるとそれくらいしかなぁ。報酬の金額はもちろん色をつけはしたんだが、Eランクの冒険者を緊急依頼で無理やり同行させた結果、Bランクの女郎蜘蛛とタイマンを張らせたわけだしな。

何かしらの対価を与えておかねーと、こちらとしては借りを作ることになりかねないし……ケネス、お前でもそう思うだろ?」


「愚問ですね。それで対価としてギルドから特別な報酬としてランクを上げると……。

ふむ、それなら冒険者ギルドの懐が痛むわけではないし、冒険者としては楽にランクが上がるのを喜ぶのではないかとの考えですね。

でも今回の功績を鑑みると、Dランクに昇格させるだけでは足りないのでは? いっそ飛び級でCランクに上げるとか?」


 Cランクか。

 自分で言っておいて、それもまたありかと思えた。


 本来ならDランクになるところを特別に飛び級でCランクにするか……それなら彼だって、まわりが見たってより納得の結果と言える。


 それに私達と同じCランクならば、本気で『狼の遠吠え』に勧誘してみるのもいいかもしれない。


 すでにニムルの街周辺で名前の売れてしまっている私達が冒険者になりたてのEランクの彼を勧誘するのは問題だが、同じCランクになってくれさえすれば、周りからの変なやっかみも心配しなくていいだろう。


 しかもずっと間近で観察することができればこの先どんなに楽しいことになるか。

 自然と笑みが込み上げてくる。


「おいおい、簡単に言うんじゃねーよ。

Cランクってお前、シド達よりも上になっちまうじゃねーか。さすがにまずいだろ、それは。周りが黙っちゃねーぞ」


「なに、簡単ですよ。いっそシド達『千の槍』も同時にCランクに上げてしまえばいいのです。

 元々シド単体でならCランクに近い実力はありますし、ランカさんとハスラさんはまだ少し早いのでシド個人だけCランクにして2人はDランクのまま据え置き、パーティーランクをCランクに上げるという方法もありますしね。それなら周りも騒ぎませんし問題なしです。

 どうです? わりといい考えじゃないですか?」


「ふざけるのも大概にしろ! 他人事だと思って簡単に言ってんじゃねーよ」


 万事解決と話を纏めようとしたが、私の提案は無惨にも一刀両断されてしまった。


 ダメか。

 わりといい考えだと思ったのだが。


 ソーヤ君単体だと目につくがシド達を隠れ蓑にして有耶無耶にしてしまえば、それほど悪目立ちするとは思えないのに。

 

今となれば本気で残念だ。

 私達がCランクになる前にこっそり勧誘して入れてしまえばよかった。

 Dランクのあの時ならば、それも可能だったのに。


 いや、とりあえず過ぎたことは仕方がない。

ギルマスはソーヤ君をDランクには上げるつもりがあるようだし、時間はかかるだろうが、彼ならそのうちCランクにも上ってくるだろう。

 

その時になって他の誰かに横から掻っ攫われないように、今のうちに唾をつけておかなくては。


 その為には、今後の立ち回りが重要になるだろう。

 どうにかしてソーヤ君に良い印象を与えることはできないか?


 それこそ、自分から私達のパーティーに入りたいと言ってくれるくらいに。

 頭の中をフル回転させている私にギルマスが怒気を張り上げる。


「おい! いい加減人の話を聞け! こっちは真剣に相談しているんだぞ!」


 失礼な。

 私だって真剣に考えている。

 ここ最近でこんなにも答えが出ない難問に取り掛かったことはない。


 誰かに相談できればよいのだが……いっそギルマスを巻き込むか?

 

ギルマスを通して私達のパーティーに入るようにソーヤ君に勧誘をかけてもらう?

うーん、違うな。

 

冒険者ギルドに変な借りを作るのはおあまり面白くないし、ギルマスの発言力がソーヤ君に対してそこまで有効かどうかもわからないし。


 あまり良案とは思えない。

 他に何かないか……。

 私は深く深く思考する。




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