表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
174/321

174.美容師~部位の報酬について教えてもらう


「よし、これで防具は大丈夫だな。次は新しい武器だが……ソーヤ、お前女郎蜘蛛の部位を報酬で貰ってないか?」


「そういえば魔物の部位や魔核結晶なんかはケネスさん達に纏めて渡していたので、特に貰っていませんけど……たぶん、冒険者ギルドに渡して売却したんじゃないですか? 参加したメンバーは皆、ギルドから報酬を貰っていましたよ?」


「それは単にギルドからの緊急依頼に対する報酬だろ? 

 EランクやDランククラスの魔物、今回なら大量発生していた土蜘蛛か? それらの魔核結晶や部位ならギルドに売却して参加人数で分配した金額が含まれているかもしれないが、Bランクの女郎蜘蛛の部位なら簡単には売らないはずだ。

 間違いなく今回の功労者に分配されるはずなんだ……そこらへんはケネスなら上手くやってくれていると思うが、一応こっちでも手を打っておくか。

 マリー! お前、今すぐ冒険者ギルドに走って、女郎蜘蛛の魔核や部位がどうなっているか確認しにいってこい!

 ソーヤの報酬は鋏角と足爪を獲得しろ! ああ、できれば足爪は2本な。ほらっ、行け! 急げよ! 間違っても鋏角だけは他の奴に横取りされんな!!」


「なんですか、急に。もうっ、わかりましたよ! まったく、いつもグラリスさんは勝手なんですから」


 ぐちぐちと文句を言いながらも、マリーがダッシュで駆けていく。


「ケネスの野郎は魔核結晶か眼球を欲しがるはずだから問題ないとして……あとはカシムとランドールに『千の槍』のシドか……うまく眼球か足爪に流れてくれればいいが、そうはいかねーだろうな。

 ソーヤの活躍具合からして足爪1本は問題無くいけると思うが、おそらく鋏角は取りあいになるか」


 親指の爪をガジガジと噛み、グラリスさんが呟いている。

 なんだなんだ?

 僕だけがこの流れについていけてない。


「グラリスさん、Bランクの魔物の部位も冒険者ギルドに売却して分配されたんじゃないのですか? 報酬なら昨日の内にもう貰っていますけど? かなりたくさんありますよ?」


 10万リムの詰まった革袋を掲げて見せて、聞いてみる。


「ソーヤはほんとになんも知らねーなー。いいか、よく聞けよ。もう一回説明してやる。

 一般的に集団で討伐依頼を受けた時は討伐部位と買い取り部位や魔核結晶、まぁ皆で剥ぎ取った素材なんかは冒険者ギルドに売却してその金額を分けるのが普通だ。

 ただな、Cランクの魔物でも希少な部位やBランク以上の部位や魔核結晶なんかは売って金に換えるよりも、武器や防具の素材にしたり、依頼を出して欲しがっている錬金術師なんかに足元を見て売りつけた方が得になるんだよ。

 だから一切合財なんでも冒険者ギルドに売って金にして分けることはまずない。しかもケネスが纏め役なら100%ないと断言してもいい。

 絶対に活躍した奴らで分配するはずだ。あいつ自身が欲しいはずだし、そうじゃなくても人様の報酬を勝手にかすめ取るようなちんけな男じゃないからな」


 まるで自分のことのようにケネスさんを褒めるグラリスさんは、どこか誇らしげな顔をしている。


「ただな、そうなると疑問が出てくる。どうしてケネスがソーヤに声をかけなかったのか、だ。

 ギルマスの爺に聞いた話だと、ソーヤがその場にいなかったら結構マズイことになっていたんだろ? なら今回の一番の功労者はソーヤになるはずだ。部位の分け前についても発言権は大きい。

 そのお前をのけものにして、自分達だけで勝手に部位の分配をして黙っているのだとしたら……俺はケネスにこう言わなきゃならねー。

『狼の誇り高さはどこに捨ててきたんだ』とな。でもまぁ普通に考えれば、あいつがそんなことをするはずはない。ってことは、だ。まだ分配を終えていないか、もしくはすでに終えていて、お前の分はギルドで預かられているかのどちらかだ。

 前者ならまだいい。これからお前が欲しい部位を主張すればいいだけだからな。ただ後者だとしたら、お前に残されている部位がなんなのかが問題となる。足爪や鋏角が残されていればいいが、もしそうじゃないなら異議申し立てをしなきゃならねぇ。

 それも誰かが素材として使ってしまったり、他人に売り払ったりする前に早急にだ。

 だからマリーに確認させる為に走らせた。今はここで待つしかないが……まぁ、お前は気にしなくていい。どんなことになっていても俺がなんとかしてやるさ。大船に乗ったつもりで待っていろよ」


 ふんっと鼻息を吐き、グラリスさんが作業台の上にどっかりと腰を下ろした。

 目の前にマリーがいさえしなければ、基本的にこの人は頼りになる渋いおじ様なのだ。

 僕も彼にならって、しばしマリーの帰りを待つとしよう。




お読みいただきありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ