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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
165/321

165.美容師~回転スキルを検証する

ユニーク6万を越えました。

いつも読んでいただきありがとうございます。



 リリエンデール様に独りよがりな行動を謝罪し、仕切り直しをすることに。

 とりあえず通常時の『アクアカッター』を見せる。

 へろへろと進む低速の水の刃を見て、リリエンデール様は苦笑い。


 次にオリジナル魔法と呼ぶべきかどうかは別にして、『アクアブーメラン』を発動。

 宙に浮かぶくの字型の刃を《調色》スキルを使って視認しやすいように全体を緑色にし、持ち手部分を紫色に染めると、「刃が曲がっているわよ?」と突っ込まれるが、「これはこういうものです」と流す。


「そう、こういうものなのね」


 首を傾げているリリエンデール様を横目に、いつものように右手で持ち手部分を掴む。


「ちょっと待った!」


 ん? ちょっと待ったコールが来た。


「なんでしょう?」


「なんでしょうじゃないわよ! どうして手で掴むのよ!?」


「どうしてって……こういうものですから」


「こういうものって――」


「ダメですか?」


「ダメ……ではないわね、うん……こういうものなのよね?」


「はい、こういうものです」


「なら、いいわ。邪魔してごめんなさいね、続けてちょうだい」


 さて、リリエンデール様から続行のお許しが出たので次は的を用意する。

 僕にとっての的といえば、お馴染みのスライム君だ。

 魔言を紡いで水を生み出し、変化させて15メートルくらい離れた場所までぽよぽよと移動させる。


「あれは何かしら?」


「的です」


「……そう、的なのね」


「では、いきますよ? まずは通常時からです」


「通常時というかなんというか……もういいわ。やってちょうだい」


 腕を振り下ろす角度からその先描くであろう軌道を計算して、『アクアブーメラン』を飛ばす。


「……やっぱり投げるのね」


 リリエンデール様が小声で呟いているが、そんなことよりもちゃんと的を見ていてほしいので軽く注意をする。


 全長2メートル位のスライムを横に切断し、戻ってきた『アクアブーメラン』を無事に捕まえた。

 

 実験の為には同じ条件でないと意味がないので、1投目と大きさを揃える為、減った分の水を補充し2回目の準備をする。


「今のが通常時の『アクアブーメラン』です」


「あくまで『通常時』と言い続けるわけね。

 いいわ、なら《回転》スキルを使った時の検証を始めようじゃないの。たくさん疑問があるけれど、とりあえず今は聞かないでおくわ」


「では、いきます」


 投げると同時に指先を意識し《回転》スキルを発動。

 今回は全体的に色が付いているのでよくわかる。


 《観察》と《集中》を発動して見ていると、回転のスピードがゆっくりに見えてきた。

 これなら回転数を数えることもできそうだ。


 緑と紫の刃は修復したばかりのスライムを切断し、こちらに戻ってきた。

 軌道が少しズレているので、3歩程右に移動して手の平で掴み、水の刃は《調色》で透明に戻してから液体にして、近くにあった木の根元にあげた。


「これが《回転》を使った『アクアブーメラン』です。違いがわかりますか?」


「……」


 あれっ? 返事がない。

 振り返ると、片手で顔を覆って俯いた状態のリリエンデール様の姿が。


「どうかしたんですか?」


「どうかしたかって? 

 どうもしていないんだけどね……ちょっと自分自身と戦っているというか……少しの間、時間をくれないかしら? まずはわたしの中で纏めるわ。そうじゃないと――」


 そうじゃないと、なんなのだろう?

 後半は声が小さすぎて聴こえなかった。

 こういう時に役に立つ《聴覚拡張》も仕事をしてくれなかった。


 ふらふらと歩いてリリエンデール様が椅子に座ったので、僕も対面に腰をおろして待つこと数分。

 リリエンデール様がゆっくりと顔を上げてため息をついた。


 自分の中での整理はついたのだろうか?

 リリエンデール様が口を開くのを黙って待っていると、


「ソーヤ君、確かに《回転》スキルを使うことで、水の刃は回転を増しているようね。

 的のスライムみたいなモノを切断した時の水の飛沫も2回目の時の方が少なかったし、切断面のズレも小さかったわ。これには回転の鋭さが関係しているとわたしは見るわね。

 というわけで結論、ソーヤ君のオリジナル魔法である『アクアブーメラン』は《回転》スキルを使用した方が鋭さと威力が増すとわたしは判断します。

 通常版であれば中級魔法の扱いではあるけれど、《回転》を使うことで上級までとはいかないけれど、中級プラスという少し上のカテゴリーに属してもいいわね。良い魔法だと思うわよ、わたしは」


 うんうん、と頷くリリエンデール様にお褒めの言葉を頂き、僕も嬉しくなってしまう。


「ありがとうございました。今後も色々と検証を続けていきたいと思います」


「ええ、そうしてちょうだい。それでまた面白い発見があったら是非教えてね」


「わかりました。その際は忘れずにお伝えするようにします」


 これで魔法に関する話しは終わったと思っていたのだが、この先の方が話は長くなるのだった。

 それはリリエンデール様からの何気ない質問というか……彼女の好奇心を満たす為の質問攻めのせいだ。




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