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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
161/321

161.美容師~相談をする


「ふむ、そうね。このコ、シアンだったかしら? 

 シアンが言うにはあのコ、ソーヤ君が異常に愛情を注いでいるお人形の指示で経験値を溜めこんでいるそうよ? だから原因はあのコにあるみたい」


「アンジェリーナのことですか? 

 まさか!? 彼女が僕にとって不利なことをするはずがないですよ。だって、僕達は相思相愛の間柄なんですから。彼女が僕の邪魔をするはずはないんです!」


「えっと……うん、ソーヤ君のそういう気持ちが悪いところは今は置いておくとして、とにかくそういうことだから。あまりシアンのことも悪くは言わないであげて。

 シアンはあのコに命令されて仕方なくやっているだけみたいなのだから。

 ソーヤ君にとって、シアンだって大事な存在ではないの? 悲しんでいるわよ? ソーヤ君に疑われて」


 そうなのか……確かにシアンだって僕にとっては大事な存在ではある。

 ただそれよりも僕の愛情がアンジェリーナに傾き過ぎているだけだとしても。


「疑ってごめんな、シアン」


 声をかけて指先で青を撫でると、ピカッピカッとニ度点滅してきた。


「『わかってくれたなら嬉しい』ですって。健気よね、このコ」


 シアンの言葉を理解出来ない僕に、気を利かせたリリエンデール様が通訳してくれた。

 とはいえ、現状の原因がアンジェリーナだとすると、どうすればいいものか。


「リリエンデール様、アンジェリーナと話して、僕にも経験値を分配するようにしてもらえませんか?」


 シアンと話せるのだから、アンジェリーナとも話せるのではないか?

 そう思い、シザーケースの中に手を入れてアンジェリーナを取り出そうとする。


 するのだが……あれっ? いない?

 いつもならすぐに見つかるはずの柔らかな黒髪の手触りがないのだ。


 シザーケースの中を指でまさぐり、見つからないので体の前に引き寄せて中を覗きこんでみた。

 すると、発見。

 シザーケースの中の隅にいたようだ。


 しかもシザーの先端やコームの陰に隠れていて指が届かなかったのかもしれない。

 指先で摘まみだし、リリエンデール様と向かい合うようにテーブルの上に置いた。


「では、お願いします」


 リリエンデール様と対面させる。


「ソーヤ君がそう言うならやってみるけれど」


 何故かリリエンデール様は気乗りしない様子で椅子に座り、アンジェリーナに向けて指先をクルクルすると、アンジェリーナがくくくっと動き、右横を向いてしまう。


「リリエンデール様? アンジェリーナを動かしてどうしたんですか? 遊んでいるんですか?」


「いや、あのね……遊んでいるわけじゃないのだけど」


 首を傾げて指先とアンジェリーナを交互に見つめる。

 僕はアンジェリーナの位置を直してリリエンデール様の方に向け、


「ちゃんとお願いしますよ? 僕にとっては死活問題なんですから」


「そうね、それはわかっているのだけど」


 真剣な顔で指先に息を吹きかけ、再びクルクルー。

 アンジェリーナはくくくっと動いて、今度は左を向いてしまう。


「リリエンデール様?」


「ソーヤ君、そのコの位置を直してちょうだい」


「ああ、はい」


 僕は位置を直す。

 リリエンデール様、クルクルー。

 アンジェリーナ、くくくっと右を向く。


「……ソーヤ君、そのコの位置を直してちょうだい」


「はい」


 僕は位置を直す。

 リリエンデール様、クルクルー。

 アンジェリーナ、くくくっと右を向く。


「ソーヤ君……」


「……はい」


 僕は位置を直す。

 リリエンデール様、指先で大きく円を描きクルクルー。

 アンジェリーナ、くくくっと左を向く。


 無言の要望に従い僕は位置を直す。

 リリエンデール様、両手の人差し指を向け2本でクルクルクルクルー。

 アンジェリーナ、くくくっと左を向き、左を向き、僕に向かい合う。


 バンッ!

 リリエンデール様が両手でテーブルを叩いた。


「ああ、そう……そういう態度なわけね」


「あの、リリエンデール様?」


「いい態度だわ。仮にも女神であるこのリリエンデールに対して不遜どころではないわね。

 いい度胸じゃないの。そっちがその気ならこっちだって考えがあるわ。やるならやってやるわよ?」 


 不敵に微笑むその顔は完全に目が据わっていらっしゃる。

 ヤバい。


 何が何だか僕にはわからないが、マズイ状況に陥っていることだけはわかる。

 そしてその間に挟まれているのが僕だということも。


「リリエンデール様、あの、落ちついて下さい」


「落ちついているわよ。ええ、落ちついていますとも。全然取り乱したりなんてしていないわ」


 微笑みながらそう言いつつも、指先はコツコツと忙しなくテーブルを叩いている。

 絶対怒っているし。


 2人の間に何が起きているというのだろう。

 聞くのが怖いと思いつつも、聞かないわけにはいかないので、恐怖を抑えつつも口を開く。



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