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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
154/321

154.閑話 マリー~ギルマスを嵌める


 さて、ソーヤさんはどこに行ったのかと、いくつか頭の中で候補を上げて追いかけるルートを考える。


 宿に帰った?

 それはないだろう。

 急な予定があると言っていたし。


 なら、グラリスさんの所?

 武器か防具が壊れてしまい、急いで直さなくてはいけないとか?


 うん、ありえる。

 候補1としよう。


 でも、あんなに焦る程のことかと聞かれればそうではない。

 別に今すぐ魔物と戦闘を行うわけではないし。

 ということは違うっぽい。


 なら……イリス様の所かな?

 今回の緊急依頼に関しての大事な報告とか?

 うーん、一番しっくりくる。


 とりあえずギルドでの仕事を終わらせて、イリス様の店に行ってみるとしよう。

 一緒に謝ってあげる約束もしたし。


 もしソーヤさんがいなくても、待っていれば来るのではないか?

 それにイリスさんに今回の件を言いつけて、お話合いに参加してもらうのも良いかもしれない。


 一度こってりと怒られた方がいいはずだ。

 じゃないと、あの人は何度でも同じことを繰り返す。


 我ながらいい考えだ。

 うん、そうしよう。



 冒険者ギルドから出てくる顔見知りの冒険者に場所を譲ってお時儀をし、入れ違いにドアを潜る。

 バックルームに向かい、着替えて荷物を取ろうと急ぎ足で進む。


 すると、何故か階段の前でうろうろとするギルマスを見つけた。

 何をしているのだろう?

 疑問に思い近づいてみると……わたしと目が合うなり物凄い勢いで視線を逸らした。


 何? あの態度……怪しい。

 明らかに挙動不審だ。


 そのまま歩みを進めると、わたしから逃げるようにその場を立ち去ろうとしたが、すぐに何かに気が付いたのか、走りその場に戻ってくる。

 まるで、わたしに階段を登らせたくないような挙動だ。


 2階に何かあるのかな?

 気になるなぁ。

 ちょっと探ってみよう。


「ギルマス、こんな所で何しているんですか?」


「おお、なんだマリーか。お前、今日はもう上がりだろ? さっさと帰れ」


 しっし、と邪魔者を扱うかのように手で追いやってくる。

 酷い対応だ。

 ますます怪しいし。


「ギルマス、2階に用事があるのでどいてください」


「用事なんて明日にすればいいじゃないか」


「わたし明日はお休みなので、今日の内に終わらせたいんです」


「ああ、明日は休みだったか……なら明後日やればいいじゃないか。そんなに急ぐ仕事でもないんだろ? 

 お前も疲れているだろうし、今日はもう家に帰ってゆっくり休んだらどうだ? な?」


 良い上司を演じるかのように、笑顔でわたしの肩を押してくる。

 普段ならそんな優しいことなんて言わない癖に。


 怪しい、怪しい、怪しすぎる。

 ので、


「じー」


 わたしはギルマスの目を真っ直ぐに見つめてみた。


「なんだなんだ? 俺の顔に何かついているのか?」


「じー……じー……」


「おい、やめろって。あと、口で『じーじー』言うなよ!」


 わたしの視線を遮るように、両手でわたしの目を塞ごうとしてくる。

 それをさっとサイドステップでかわして、


「じー! じー! じー!!」


「なんだんよ! 変だぞ、お前!」


 ギルマスはわたしからの圧力に耐えられず逃げようとしたが、またその場所に戻ってきた。

 まるで何かを守る為に仕方なくというように。


 やっぱり、2階に何かがあるんだ。

 わたしから守りたい何かか……。


「ソーヤさん、どこに行ったのかなー」


 鎌をかけるように呟いてみると、ギルマスが一瞬で目を逸らした。

 額からはツーと汗が流れ落ちる。


 決まりだ。

 たぶん間違いない。


 2階には、ソーヤさんが隠れているんだ。

 疑念が確信に変わったとたんに、わたしの中に黒い怒りが込み上げてくる。


 何が『急用』よ。

 こんなところに隠れていたなんて。


 許せない。

 許せないったら許せない。


 わたしの雰囲気が変わったのがわかったのか、ギルマスが無理やりにでもわたしをギルド内から追い出そうと手を伸ばしてくる。

 なので、わたしはその手を利用させてもらうとしよう。


 ただし本当に触らせるのは嫌なので、際どい所を攻める。

 すっと斜め横に移動してわざとギルマスにぶつかり、よろけた振りをして大声を張り上げた。


「やめて下さい! わたしの髪の毛に触らないで!! 

 ギルマスがわたしの髪の毛に無理やり触ったー! きゃー!」


 ざわっとして、たくさんの人の目がこちらに注目したのがわかった。


「おい、変なこと言うなよ。お前の髪の毛になんて触ってないだろ!」


「触った! 触ったー! きゃーー!!」


「やめろよ、騒ぐなって!」


 焦るギルマス。

 駆け寄ってくるシェミファさんとキンバリーさん。

 それを見て、もっと焦るギルマス。


 今だ!

 わたしはギルマスの横をすり抜けて階段を駆け上がり、ギルマスの部屋の前に着くなり扉を蹴り開けた。





お読みいただきありがとうございます。


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