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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
128/321

128.美容師~討伐数で賭けをする

いつも読んでいただきありがとうございます。


PV30万突破しました。


40万目指して頑張ります。



「ソーヤっち、1匹抜けられたっす。少しの間、持ちこたえて欲しいっす!」


 3匹を同時に相手しつつ、カシムさんが叫ぶ。

 一気に押し寄せてきた土蜘蛛全てを抑えきれなかったようだ。


 カサカサと足を動かし、土蜘蛛が僕の元へ迫ってくる。

 正直こっちは今の相手でいっぱいいっぱいなのだが。


 思わず引きつった顔の横を熱気が駆け抜けていった。

 その赤は3つ。

 目の前の土蜘蛛の顔に着弾し、一気に燃え上がった。


「ソーヤ君、大丈夫ですか? 援護をしますので無理はしないでください!」


 ケネスさんの魔法により戦っていた土蜘蛛は撃沈。

 僕は新たに近づいてきた土蜘蛛にターゲットを変更した。


 両手の短剣を握り直し指先で回転させる。

 こうしているとリラックス効果があるから不思議だ。


「ケネスさん、ありがとうございます!」


 伸びてきた足を弾きながら礼を告げたが、またもや赤色が後方から土蜘蛛に命中。

 目の付近を纏めて焼かれた土蜘蛛が大きく後ろに仰け反ったので、足の間を掻い潜り柔らかな腹部を短剣で切り裂いた。


 ケネスさんの援護があれば、僕でもなんとか戦えるな。

 シンダルさんもクミンさんとトイトットさんの援護射撃で危なげなく戦えているようだ。

 ならば僕はもう少し前に出よう。


 カシムさんとランカは横並びになり、2人で土蜘蛛5匹以上を常に引きつけて戦っている。

 絶えず槍を振りまわして動いているので、息があがって苦しそうだ。


 壊れた壁の向こうからは、途切れることなく土蜘蛛が湧き出している。

 この戦闘はまだまだ続きそうだし、少しでも負担を減らしてあげなければそのうち2人が潰れてしまう。


 そうなればケネスさんの言葉ではないが、僕達は殲滅されてしまうだろう。

 ペース配分には気を配らなくては。


 大きく2度深呼吸をし、魔言を唱えながら歩く。


『大気に宿るマナよ、我が呼び声に答え、壁となりて立ち塞がれ。アクアウォール』


 ランカ達と土蜘蛛に境界線を引くように水の壁を発生させ、長く伸ばして逆半円の形で土蜘蛛達を包み込むように意識する。

 少しでも休んでもらう為の時間稼ぎだ。


「一息ついて下さい!」


 突然出現した水の壁に驚いたのか2人は肩を震わせたが、呼びかけで僕の魔法だと気付いたのか後ろに飛び退り、腰から水袋を外して一気にあおって飲む。


「はぁー、生き返る。ソーヤ、水入れといてー」


 ランカから空になった水袋を投げ渡されたので、片手でキャッチして水を補充する。


「ソーヤっち、いいタイミングで助かったっす。さすがにちょっと疲れてきたところだったっすよ」


 額の汗を拭って苦笑いするカシムさんに対して、水袋を受け取ったランカはすでに水壁の前に戻り準備万端。


「さてと、俺っちももうひと頑張りするっすかね」


 腕を回しながらカシムさんも戻っていく。


「及ばずながら僕も手伝いますよ」


「お、それは助かるっす。でも無理はしないでほしいっすよ?」


「ええ、出来る範囲で頑張ります」


 軽口を叩いていると、水の壁が小さくなり消え去った。

 その向こうには邪魔な水の壁が消えるのを、今か今かと待たされていた土蜘蛛が大量に……。


 前に出たのは失敗だったかもしれない。

 思わず足が後ろに下がりそうになるが、逃がしはしないとランカがあおってくる。


「カシム、ソーヤ、誰が一番たくさん倒せるか勝負しよーよ! ソーヤはハンデでケネスの援護ありでいいからさ」


「いいっすね。なら負けた人は飲み代奢りでどうっすか?」


「ならたんまりタダ酒が飲めるのを楽しみに頑張るとしようか!」


 舌でぺろりと唇を一舐めして、ランカが楽しそうに槍を振るいだした。

 負けじとカシムさんも目の前の土蜘蛛を薙ぎ払い、すばやく突きを繰り出す。


「絶対僕が負けることになると思うんだけど……そもそも参加するって言ってないし」


 呟いてみるが、2人には聴こえていないみたい。

 いや、聴こえていても無視されるのだ、たぶん。

 振り返ってケネスさんを見ると、困ったように苦笑い。


「ソーヤ君、負けたら私からもカンパしてあげますから、とにかく今は生き残ることを優先しましょう。

 2人のやる気が出るのなら、飲み代くらい私が払ったっていいくらいです。

 その時、私のお腹にまだ水分が入る余地があるかは疑問ですがね」


 時間を置いてMP回復薬を飲み続けているケネスさんは、苦しそうにお腹を手でさすっている。

 いくら小さな小瓶に入っているといっても、何本も飲むのは辛いものがあるのだろう。


「はぁー、お腹がたぷたぷしてきました。今お腹に一発でも攻撃をもらったら盛大に噴水する自信がありますね」


 わけのわからない自嘲をしている。


「ケネスさん、仕方がないので僕も勝負に混ざります。援護、お願いしますね」


「わかりました。残りのMP回復薬の関係で盛大に魔法を使うことはできませんが、牽制くらいは任せてもらっていいですよ。

 負けても構わないので、無理せず怪我をしないように注意して下さい」




 

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