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女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
12/321

12話.美容師~冒険者登録をする

 

「この辺りにはない職業なので、とりあえず無職にでもしておいてください。

 あとから変えることはできますか?」


「はい、大丈夫です。職業はいつでも変更可能ですので何かあれば相談してください」


「ありがとう。その時は宜しくね」


 自然と、自分の口調も柔らかくなる。


「出身地は?」


「空欄で」


「では、続けます。得意な武器や戦闘方法等はありますか?」


「空欄で」


「謎が多い方ですね」


「謎だらけですみません」


 苦笑混じりに答えると、


「大丈夫です。気にはなりますけど」


 彼女も幾分砕(いくぶんくだ)けたような態度で接してくれた。


「では、次にここに手を載せていただけますか?」


 カウンターの下から、A4サイズの青い金属でできた箱を取り出した。


「10秒程お願いします」


 茶色い小型のカードを取り出し、箱にセットする。

 掌の形が縁どられている場所に手を置くと、一瞬チクっとしたがそのまま我慢。

 

 これが噂のステータス表示機なのか……あまりのステータスの高さに驚かれて、ギルドマスターなんかに小部屋に呼ばれて……。

 

 よくある小説のテンプレを思い浮かべて、受付嬢の表情を観察した。

 けれど、


「はい、もういいですよ」


 茶色いカードを箱から引き抜き、確認するように一瞥し、手渡してくれる。


「どこかおかしな所はありますか?」


 僕もカードを確認した。


 ==


 名前 ソーヤ・オリガミ

 種族 人間 男 

 年齢 26歳

 職業:    

 レベル:1

 HP:20/20 

 MP:20/20

 筋力:16

 体力:16

 魔力:16

 器用:32

 俊敏:18


 スキル:


 称号:


 ==


 ノートに書かかれていたものよりも少ない。

 ユニークスキル欄や、称号欄にあった女神の加護も消えている。 

 装備も記載されていないな。


「何かおかしいですか?」


 不安そうに尋ねられたので、


「大丈夫です」


 笑顔で返した。


「それならいいのですが。何かあれば遠慮しないで言ってくださいね」


 念を押された。


「本当に何もないですよ。ただ初めてこんなカードを見たので驚いただけです」


「ああ、そういうことですか。ではカードの説明もしますね。上から、名前、種族、年齢、職業、レベルとなっています。HPはあなたの生命力、MPは魔力容量を表します。HPが0になると死んでしまうので気をつけてくださいね。MPは……魔法を使用するのに必要です。

 これも0になると気絶したりするので注意が必要と言われています。

 筋力は力の強さを体力は身体の強さを、魔力は魔法等を使用する際の強さを、器用は手先や身体の器用さを俊敏は身の軽さ等を表します。

 ここまで大丈夫ですか?」


「はい、なんとなくは」


「まぁ、少しずつ体感してくださいね。

 次にスキルですが、武器などの熟練度が上がると武器の適性等が得られることがあります。その人個人の才能によるものもありますが、使い続けることで得られるケースもあるそうです。武器に関するものだけではなく、魔法やその他にもたくさんあります。

 これもいろいろと試してみてください。

 称号というのは、たくさんの人に認められたり、国の偉い人から与えられたりすると付くみたいです。あまり詳しくは解明されていませんが、(おおむ)ね間違っていないと言われています。質問がなければ続けます」


「大丈夫」


「次に、ランクの説明ですね。冒険者にはギルドで認定したランクが与えられます。

 下からG、F、E、D、C、B、Aとなりそれぞれカードの色が変わります。

 下から茶、緑、青、紫、赤、銀、金の七色ですね。

 金の上にも特別なランクがありますが、ここでの説明は省きます。

 ソーヤ様のランクは一番下のGランクからとなりますので、茶色のカードとなっています。冒険者は自分のランクの上下一つまでを受注できますので、FランクであればG、F、Eの3つの依頼から選ぶことができます。

 ただし、ご自分のランク以上のものはあまり選ばないことを、ギルドとしてはオススメさせていただきます。実力以上の依頼には危険が伴いますので、こちらで判断して依頼を受注させないケースもあります。

 また、依頼の不達成が多いと、違約金の発生やランク等もありえますので、ご理解下さい」


「ずいぶんと優しいのですね。こんなに細かく、しっかりとした説明をしてくれるなんて」


「それは大怪我されたり、死なれでもしたら、私たちも寝覚めが悪いですし。

 高ランクの冒険者の方達も初めは皆さん新人からですので、ゆっくりとでも確実に育って、ギルドを支えていただきたいですから」


 僕がギルド運営の理念みたいなものに一人感心をしていると、それに、と彼女が続けた。


「ソーヤ様は冒険者のことにもあまり詳しくなさそうに思えたので、特別に細かいことまで話しています。他の人にはもう少し簡単な説明で終わりますね。

 決めつけてしまい失礼であれば謝ります」


 頭を下げようとするので、焦ってやめさせた。


「謝らないで下さい。おっしゃる通り、何も知らないので助かりました。

 ありがとうございます」


「そうですか、余計なお世話と思われなくて良かったです。

 それでですね、お節介ついでに、よければこちらで最初の依頼を選ばせていただいてもよろしいでしょうか? 通常、依頼はあそこのボードに貼られているのですが、その……」


 確かに……僕は依頼内容がわからない。


「では、お言葉に甘えさせてください。あなたが選んでくれるんですか? 

 できれば、今からでも何か依頼を受けたいのですが」


「わかりました。少々お待ち下さい」


 彼女は後ろの棚から紙の束を取り出して、何枚かめくり一枚を抜き取った。


「こちらなど、いかがでしょうか? 薬草採取の依頼になります。

 あまり報酬は高くありませんが、常時依頼がありますし、危険も少ないです。

 それに採取のスキルを取ることができれば、品質の良い薬草を手に入れることができ、微々たるものですが報酬も上がりますし……」


 何故か、こちらを伺うように前髪の隙間から青い目が僕を見る。


「わかりました。それを受注することにします」


 カードを渡し、依頼を受注した。

 彼女がほっとしたように息をつく。

 

 どうかしたのだろうか?

 疑問を抱いていると、彼女が苦笑混じりに教えてくれた。


「冒険者ギルドに登録に来る方達は、皆さんある種の憧れがあると言いますか、討伐系の依頼を受けたがる人が多いのです。

 だからこちらが採取の依頼なんかを進めたりすると、バカにしていると取られて、怒鳴られたりというか……結構怖いんですよ。まぁ、慣れましたけどね」


「そういうこともあるんですね。心配してもらってるのがわからないのでしょうか?」


「そう言ってもらえると、わたし達もありがたいです。ソーヤ様は優しいんですね」


 嬉しそうに口元が笑みを浮かべる。

 僕もつられて笑顔になり、改めて、採取依頼について尋ねた。

 

 彼女は実際の薬草を持ってきて見せてくれ、図鑑を取り出し、似ている毒草や見かけたらついでに採取した方がいい草木等を教えてくれた。

 そればかりか、採取に使用するスコップや布袋までギルドの物を貸し出してくれた。

 

 代わりに洋服とアンジェリーナの入っている袋を預かってもらった。

 中を見られてまた騒ぎになってもマズイと思い、


「決して中を覗かないように」


 と頼むと、


「そんなに危ないものが入っているのですか?」


 と怯えられたので、


「中を見てしまったら、空に飛んでいってしまう」


 と告げたが、不思議そうに首を傾げられた。

 鶴の恩返しのような伝承(でんしょう)はないようだ。


 なんとか準備は整ったので、


「では、行ってきます」


「はい、いってらっしゃい。お気をつけて」


 彼女が笑顔で手を振って見送ってくれた。




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