表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神様の美容師  作者: 獅子花
美容師 異世界に行く
119/321

119.美容師~吸いかけの煙草を奪われる


 探索を再開するとまたもや2又のわかれ道に遭遇。

 今度も右に進むと、広い空間に出た。

 左側にも通路があるので、左側から来てもここに辿り着きそうだ。


 空間の先には4本の先があり、洞窟に入ってから3時間が経過し小腹が空いてきていたので、警戒しながら昼食をとることに。

 

 ランカは僕に絡みたくて仕方ない動きを見せているが、その度にシドさんが武力的な意味で止めてくれているようだ。


 もう一人の絡みたがり屋であるトイトットさんは、ケネスさんに連れられて壁の端でお話合い中。


 時折こちらに苦々しい視線を向けてくるので、お説教でもされているのだろうか。

 なるべく向こうは見ないようにしよう。


 ランドールさんは壁を背にして座り込み、カシムさんと僕とで昼食の準備をする。

 

 とは言っても凝った料理等作れる環境でもなく、また時間もない為、温めたスープの中に肉や野菜をぶち込んでいくという簡単料理。


 味噌や醤油でもあれば美味しくなるのだが、薄い出汁と塩や香辛料だけでは期待する以上のものはできるはずない。

 料理が完成して、パーティーごとに警戒役を設定しお腹の中にかっこんでいく。


 冒険者らしく食事の作法など誰もが無視なので、手づかみでないだけマシという状態だ。


 前衛で戦闘を行った者から優先的に食事を取り、全員が食べ終わると小休憩。

 シドさんとカシムさんがモクと呼ばれる煙草もどきを楽しんでいたので、残り少ない煙草を取り出し、僕も仲間に入れてもらう。


「ソーヤっち、変わったモクっすね。どこで売ってるんすか?」


 目ざとく見つけてきたカシムさんが興味深く聞いてくると、好奇心の塊のようなケネスさんが駆け寄ってきた。


「これは僕の故郷でモクのかわりに吸われているものなんですよ。探してはみましたが、この辺りでは手に入らないみたいです」


「そうっすか。なんだか美味そうな匂いがするっすね」


「よかったら一口吸いますか? あげられればいいのですが、生憎と残り1本なので」


「いやいや、一口貰えるだけでも十分っすよ」


 カシムさんが煙草を受け取って、ゆっくりと吸い込み細く煙を吐き出した。


「ふぁー、美味いっすね。是非手に入る伝手が見つかったら教えて欲しいっす」


 返してくれようとした煙草は、僕ではなくすばやく伸びてきたケネスさんの手に。


「ソーヤ君、私もいいですか?」


 そんなにキラキラした目で頼まれたら嫌と言えるはずはない。


「どうぞ。良かったら僕はもういいので皆さんで楽しんで下さい」


「悪いですね」


 断りを入れてケネスさんが一息吸い込んで、頬を緩める。

 次にシドさん、ランカ、最後にタイム。

 いつのまにか綺麗な列ができていた。


「む、繊細な味だな。後味が悪くない」


 これはシドさん。


「気にいった! ソーヤ、これと同じものを売ってくれ!」


 だからランカ、この辺りでは手に入らないって言ってるじゃん。


「ほのかに香りがあるな。モクよりも臭くないし、これならモクの嫌いな女性の前で吸っても嫌がられないか」


 タイムさんまで物欲しそうな目を向けてくる。

 トイトットさんも興味津津な目でこちらを見てくるが、プライドが邪魔しているのか足を踏み出せないようだ。

 彼を気にして、シンダルさんとクミンさんも動くに動けず、悔しそうにしている。


 あちらの世界から持ってきた煙草も残り1本か。

 未練を断ち切る為にもこの討伐依頼が終わったタイミングで、打ち上げがわりに皆で回し吸いでもするか。


 もしくはどこかで再現できる可能性もあるし、大事に保管しておくべきか。

 悩みどころだ。

 とりあえず今は、シザーケースの中にしまっておこう。


「さて、そろそろ動くか。それにしても、どの道から進む?」


 シドさんがケネスさんに相談し判断を仰ぐ。

 パーティーで分けるとしても、ここには3パーティーしかいない。


 それにこの先の作りもわからないし、危険性も未知だ。

 やはりケネスさんは皆で纏まって動くことに決めたようだ。

 あとはどの道を選ぶかだが……、


「左の道二つから魔物の気配が近づいて来るっす!」


 カシムさんが皆に警戒を促して、ランドールさんと二人でそれぞれの入口の前に陣取った。

 広い空間に魔物を出して囲まれるよりも、出てきた所を叩いた方が良いとの考えだろう。


 ランドールさんの後ろにはケネスさんと僕が付き、カシムさんの後ろには『炎の杯』が付こうとしたが、カシムさんの場所を奪う様にシドさんが横から乱入。


「カシム! 乱戦になる可能性もあるしパーティーごとで敵に当った方がいい。こっちは俺達に任せてランドールの方へ行け!」


「わかったす! ここは任せたっすよ」


「『炎の杯』は俺達の後ろから魔法と弓で援護してくれ。こっちには遠距離攻撃の手段がないからな」


「わかりました。クミン、準備を」


 トイトットさんがクミンさんと顔を見合わせてお互いの立ち位置を決める。


「シンダルとタイムは他の二つの道から魔物が出てこないか見張りながら、トイトットとクミンの護衛を頼む。ケネス! それでいいか?」

 

 シドさんが叫ぶと、


「上出来ですよ!」

 

 ケネスさんが叫び返した。


 

いつも読んでいただきありがとうございます。


ご意見ご感想、評価等頂けると更新の励みになるので嬉しいです。


今後とも宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ